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13


 

 各部屋へ散った大人達を見送った後。隣に残った少年の不安げな背中へ手を伸ばし、ポンポン。

「大丈夫だよ、お兄ちゃん。必ず見つかるって」

「……そうだね。じゃ、僕等はキッチンを調べようか」

「りょーかい!さ、早く行こ」

「見つけたわ!皆、来て!!」

「意外と早かったね。木咲先生、今行きます!」

 僕等は手を繋ぎ、一番乗りで寝室へ到着。姿を認めた桜がキングサイズベッド(枕は二つ。どうやら親子はここで寝起きしているようだ)のヘッドボード、その真上を指差す。

「絵を外してみたら、後ろにあれが」

 枕同士の間に立て掛けた風景画。そして壁に埋め込まれた、縦横五十センチ程の黒金の隠し扉を交互に示す。

 背後の三組の足音に押されるように、僕等はベッドへ跳び乗った。住民が僕に靴を脱げとかぬかしているが、緊急事態故当然無視。

 どうやら金庫のようだ。扉の左側にはテンキー式の入力パネル、右側には鍵穴。二段構えとは中々厳重だ。鍵、呟いたパートナーの緑目が、出入口から一番近い担任を捕らえた。

「ベーレンス先生。書斎のデスクに、貸金庫のキーボックスがあるんです。その右端に一つだけ、名札の付いていない鍵が!急いで取って来て下さい!!」

「おい!?」

「早く行け、アダム!事は急を要する!」

「チッ!おいレヴィアタ、今度の内申は覚悟しとけよ!!」

 物騒な脅し文句を吐きつつも、ダッシュで寝室を後にする元野球部。勿論、レフトを任された僕も黙っていられない。

「ミト、お前の誕生日は!?」

「へ?」

 ピッピッ。試しにランダムで数字を入れながら続ける。

「この入力装置は七桁。って事は、パスコードは誕生日の確率が非常に高い。しかもこう言うのは大抵、自分か家族の物と相場が決まっている。以上、解説終了!さっさと言え!!」

「お、俺は六百五十四年の、三月七日だ。父さんは十月二十日の、ええと宇宙歴は……」

 情けない返答をバックに、僕は神速の指先で入力。最後にエンターを押すと、パネル上のランプが緑に点灯した。やった!一足早くガッツポーズ。

「ええっ!?ちょ、必死で思い出そうとした俺の努力は!!?」

「んなモン知るか!ほらよっ!!」

 上手投げで放られた鍵がバシッ!吸い込まれるように生徒の掌へ。

「ありがとうございます!多分、これで」

 鍵を挿し入れ、右方向へ力を籠める。ガチャンッ!良し、当たりだ!!


「行くよ、お兄ちゃん!」「うん」


 僕等は左側の取っ手を掴み、同時に手前へと引っ張る。


 キィィィ……案外軽やかな音を立て、扉が解放。暗闇の中を覗き込んだ僕等の目にキラッ、蒼い光が映った。「え?」


 金庫内に収められていたのは、全体が青の金で作られた小刀だ。そして艶やかな表面に描かれているのは縁取られた、刺青と瓜二つの龍だった―――。




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