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「―――じゃあジョシュア。行ってくるわね」「あんま無茶するなよ」「分かってるって。行ってらっしゃい、二人共」
バタン。エレベーターのドアが閉まると同時に手振りを止め、残り半分だったホットサンド(ハム&エッグ)を口内に押し込む。コーヒーも一息で飲み、急いで食器を洗う。その後神速の機敏さでエレベーターを呼び、二階の自室へと舞い戻った。
急いでリビングのソファに正座。正面に据えられたテレビを点け、登録したチャンネルを押す。
映し出されたのは、早朝のアパート・デ・ソラ。その二〇一号室前は当然ながら無人だ。え?どうして監視カメラを置いてるかって?監視のために決まってるでしょ、馬鹿なの?死ぬの?
(とまぁ、一人問答はこれ位にして……先立って必要なのはやっぱり、これまでの捜査情報だな……)
僕の抱えた大問題とは“翡翠蒐集家”、特定の少年ばかり狙う卑劣な目潰し殺人鬼だ。何としてでも聖族政府や警察より先に奴を捜し出し、正当な罰を受けさせなければならない。
(九件も殺しを行ったんだ。無能連中には見つけられなかったかもしれないけど、必ず共通項はある筈)
思案しつつ席を離れ、外出の支度を始めた。そうして準備が完了した頃、画面に動きがあった。
ドアを開けて現れたのは、肩までの黒髪に五分程度茶色の混じった緑目の少年だ。年齢不相応に知的な面差しで下宿先を出た彼は、施錠してからこちらを振り返る。相変わらず凛々しいその姿に、僕は胸のドキドキを堪えつつ画面越しに手を振った。
「―――行ってらっしゃい。外は危ないから気を付けるんだよ、ハイネお兄ちゃん」