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結論から言うと、奴等の中に件の屑野郎はいなかった。
下手糞ドライバー四人衆に因ると、どうやら被害者は中学へ入学以来、大分落ち目だったらしい。そのため最近は、どのランクのグループにも属していなかったそうだ。原因は小学校時代の仲間の心変わり、所謂「大人になった」と言う奴。ま、内申悪いと進学が危うくなるし(挙句それを盾にする極悪教師までいる)、賢明な判断だよね。
と言う訳ではるばるラブレ公立校、図書室までやってきた僕。司書は不在で、蔵書数は見える範囲に千冊程度。しかも書棚の分類に対し収納がバラバラで、背表紙も所々ボロい。開架だけで五万冊、しかも毎月潤沢に予算が振られている学園とは雲泥の差だ。と、いた。
「やあ」
「?刑事さん?」
窓際に座るガリ勉眼鏡は、もしかしなくてもジケイドの件ですか?即座に質問。ふむ、頭の回転は悪くないようだ。
「一体誰が喋ったんです、俺の事」
「ゲームセンターにいた、君のクラスメイトから」
「だと思った。けど俺等、最近は電話とメールでしか連絡取ってませんよ」
答えつつ、片手で化学の参考書をパラッ。高校受験用か、気の早い事で。
「あんな餓鬼と話してたら、俺まで不良認定されちまいますから」
同感。続いて被害者が直近で酷く怯えていた件に関し尋ねると、あぁ。あれは関係無いですよ。シャーペンのノック部分を顎に当て、K・G少年は断言した。
「週刊誌で見ましたけど、“翡翠蒐集家”って大人なんでしょ?だったら全然」
「それは我々警察が決める事だ」
「取り敢えず可能性は全部潰す、って奴ですね。お役所仕事も大変だ」
カリカリ。
「まぁいいか。来週塾の小テストだし、何度も来られても困りますから」
いちいち一言多い餓鬼め。にしても妙に腹立つなあ、何でだろ?
「あいつがビビってたの、実は学園の奴なんですよ。しかも俺達と同級生」
しかも勿体振りやがって。これだからマセ餓鬼は、
「小学校で一緒だったダチの又ダチの、ええと……何つったかな……ああ、思い出した。確か―――」