お守り
「先輩。喜んでくれるかな」
私は早歩き気味で、先輩の居る三年生の教室に向かった。
「せんぱ~い居ますか?」
「お前。先輩だけじゃわからないだろ」
先輩は、笑いながら私の方に歩み寄ってくる。
「それよりほら、先輩って受験生だから、学校でしか捕まらないかなーって思いまして」
「そうだな。お気遣いありがとう」
「いえいえ、それでなんですけど…」
私が急に下を見て言葉に詰まったからか、先輩は顔を覗き込んでくる。
「どうした?」
急だったので私は顔をあげて気合を入れて声を振り絞る。
「…ふぅ。先輩!これ合格祈願のお守りです」
そう言って私は手作りのお守りを先輩に差し出す。
「お、おう。その、ありがとう」
手作りなんて重いって思われるかな。そんな事を考えて目を閉じる。
「ってこれ手作りか!すげーな!」
先輩の声を聞いて恐る恐る目を開けると、先輩が笑顔でこっちを見ていてくれた。
「ありがとう。本当にうれしいよ、俺、絶対合格するからな!」
「よ、良かったです」
私がうれしさのあまり顔をそらしていると、先輩がお守りの中に興味を示す。
「あれ?これ中に何か…」
「…せんぱい?」
「え、あ、はい」
「お守りの中身は見ちゃダメなんですよ?」
「ご、ごめんなさい」
私が冷たい声で言うと、先輩は縮こまってしまった。
「はぁ仕方ないですね。合格したら開けていいですよ」
私がいつも通りの声で言うと、先輩が私の顔色を窺う。
「怒ってませんって」
私が笑いながら言うと、安心したのか胸を撫で下ろす。
「それじゃ、先輩頑張ってくださいね」
「おう、ありがとう」
挨拶をすると、私は自分の教室の方に向かって歩いていく。
角を曲がった所で深呼吸をすると、私は座り込んだ。
(あ~も~なんで私、お守りにハート満載の手紙なんて書いたんだよ~)
顔を真っ赤にしながらため息をつくと、後ろから先輩の声がする。
「おぉ!ハンカチ落としていったみたいだけど、って大丈夫か?」
座り込んでいる私を心配してか、先輩が駆け寄って来てくれる。
「何でもないです!大丈夫です!」
そう言うとハンカチを受け取って、速足で教室に帰っていった。
お守りブーム来れば言いなーと思うねー