名無し
題名 NOname
俺はいつも変な夢をみる。何もない大きな湖みたいな場所に青年と少女が二人いて、二人こんな会話をしていた。
「君は何のために何を願うんだ?、アハハッ…」
「そんなのお前に関係ないだろ…。お前はただ願いを叶えてくれればそれでいい…」
「そんな訳にはいかないね。名無し、君の願いには…その結末には…すごく、すごく興味をそそられる…ふははぁは…」
「気味の悪い人ね…、いいでしょう…。」
「私は…」
そこでいつも俺は夢から醒めて、現実の世界に引き戻される。
2012年12月1日 am.8:30~
俺はいつも通りにあの青年と少年の夢から覚めてかなり目覚めの悪い朝を迎える。あの夢はここ最近みるようになってしまったもので、かなり俺を悩ませている。
俺は面倒くさそうに頭を掻きながら部屋のすみにある目覚まし時計をみた。
そこには、8:30と示されており、それを見た俺は飛び上がって速攻で着替えて、部屋のドアを蹴破り
家を出た。
迂闊だった…、自分が朝に弱いことを嫌というほど自分でわかってるのに、何故起きられない!!
親元を離れて独り暮らしをしたこと忘れるはずがない。
なのに何故だ…、すごく自嘲していたのに!!
そんなのはさておき、時間とは残酷なものでもうすぐで最終登校時間に差し掛かっていた。
それを感じた俺は学校手前の曲がり角を勢いよく曲がった瞬間、見知らなぬ女とぶつかった。
ぶつかり際だったが彼女の容姿をこの目ではっきりととらえた。
利口そうな顔立ちに闇夜を思い浮かべるような長髪、
極めつけはまるで獲物を射って殺すよう鋭い目付き…。
美人だったがすごく近寄り難い顔立ちの女性と正面衝突してしまった。俺はぶつかったところをさすりながら、彼女の安否を確認するために声をかけようと彼女のほうに顔を向けるとそこには、誰もいなかった。
俺は疑問に思いながら学校に向かった。
12月1日 am.9:05~
現実とは小説よりも奇なりという言葉を俺は今まで信じていなかったがこの今朝のうちに奇妙なことに2つも出くわした。変な夢を見た後に変な美女にぶつかった。
その後、結局遅刻してしまい、先生にどやされて
自分の教室にむかった。
「郁夜、おはよ~元気~あれ~元気じゃないけどげんきぽっいね~」
今、話し掛けきた男は仙田 智希と言って昔からの厄介な友人の一人だ。
「何だよ、智希…今は調子がよくないないから話しかけないくれよ…」
「うん、わかった~。聞いてよ、郁夜~、今日はねこんな噂を聞いたんだ~。」
「おい、俺の話を聞いてたのかよ…」
「この学校にもね~、七不思議があったんだよ~。」
「おい話を…、はぁー。まあ…いいかな。続きを話せ。」
「うん、それでね~、この学校の七不思議で一番みんなに有名なのが午前2時の願い事っていってね。午前2時に学校の北校舎の2階の踊り場で願い事を言うとこの世ならざるものが現れて願いを叶えてくれるんだってよ~。ロマンチックだよね~」
「なんだ、そういう系統の七不思議かよ…聞いて損したよ」
キーン、コーンカーン、コーン…。鐘が鳴った。
まるで俺達の会話が終わったのを機にの鐘が鳴ったかのよう思えた。
12月1日 am.9:15
ホームルームの鐘が鳴ったのを機に担任教諭である小野 小町先生が教室に入り声を高らかにしてこう言った。
「おい、てめぇら!!今日は転校生を紹介してやるぞ!! 耳かぽっじってよーく聞きやがれ!!」
25歳にしては少し幼い女性らしい顔を歪ませながら声を張り上げて言って姿は確実に怒ってるようにしか見えないが、本人曰くかなり上機嫌らしい…。この口調のせいで確実に損してる人生を送ってるよねと思いつつも先生の話に耳を傾けていた。
「この度、てめぇらの新しいお友達としてきたのは、名梨 輪廻ちゃんだぞ!! ほら、野郎ども女の子転校生なんだからもっと喜べよ!! 叫んで紹介してる私が物凄く痛々しいだろうが!!」
元ヤン系の小野先生は見た目は確かに少し怖いが慣れると中々いじりがいのある先生なので男子諸君は先生を暫くいじっていたが転校生が入ってきた瞬間に空気が一変した。
絹のように艶やか髪に端正だが決して作り物じみていない利口そうな顔立ち、そしてこの世を見通したかのような物憂げな表情…。
不覚にも俺は彼女に見とれていた。その時私は世界は彼女のために存在しているのではないかというほどの錯覚に陥ってしまった。
だが、その蕩けた頭を切り替えて彼女をよく観察すると今朝、学校近くの曲がり角でぶつかった摩訶不思議な女と同一人物のような気がする…。
取り敢えず、ホームルーム後の休憩中に話し掛けみよう。
そうすれば真意が分かるはずだ。
12月1日am.9:30
転校生の彼女のもとにはわんさかと人がいてとてもじゃないけど質問できる状況ではなかったので少し間を置いて話し掛けることにした。
にしても…、角度で見え方がこうも変わるのだろうか。人相が明らかに違いすぎるような気がしてならない。
今の彼女には鷹のよう鋭い目付きはしておらずそれとは真逆で柔和な表情を浮かべている。
何故、あのような表情をしていたのだろう。謎は深まるばかりだか意を決して俺は彼女に声を掛けてみた。
「あの…、俺と付き合ってもらえませんか!!?」
「…?」
「あっ…ヤバいやっちまった…。え~と、そのあのこれはなんというか、うへへへ…。」
「どういうことですか?」
「あ、あ、あの、本当にひゅみまへん…。なんでもないっす…。」
「?」
俺はその場をダッシュでとおのいた。なんでだろうもう少し言葉を選ばなかった自分が本当に恨めしい…。
普通に今朝なんであんな凄んだ表情をしていたのって聞けば済むことなのに何故あそこでカッコつけるだ、俺!!
天然は自重はあれほど大事だと肝に命じてたのに…先生のことを言えたもんじゃないな…。
後悔の念にうちひしがれる俺のもとに彼女がやって来てこう言った。
「今日は用事がないから付き合ってあげてもいいよ。」
「えっ、なんで!?いいの!?」
「その…何というかそんなに驚くほどのことなの?付き合ってくれって言ったのは貴方でしょう。」
周りにいた男子たちが一斉にどよめきだし、女子はそろってこそこそ話をしはじめた。
何故だろう、こんなにことがうまく運んでいいのだろうか…。
確かに彼女言った付き合うのニュアンスは俺の想像していた通りのものだろうし、決して恋愛的なものではない。できればそうなりたいが冴えない俺にとっては彼女は高嶺の花だ…。
だが、これを機にデュフフフフ…。
と爛れた妄想を頭のなかで繰り広げると彼女が
「いつ、どこで、誰と一緒に待ち合わせるの?」
と少し強い口調で彼女が問いただすと
「今日の午前2時の北校舎の2階の踊り場でオナシャス!!」
「えっと、随分と変な時間に集合するんだね…。」
「あっ…。」
自分の顔から血の気が引くのを感じた…。
不意に学校の七不思議のことが頭をよぎりポロリと口にだしてしまったのである。
まじで自重してくれよ…。天然すぎるだろ、俺…。
男子諸君が飢えた獅子のような目付きで俺を睨み、女子は侮蔑の目で俺を見ている…。
このクラスでの評判は堕ちたことは間違いないのだろう。ただでさえ友達と呼べる人物が少ないのに自らボッチになろうとしてどうするよ俺…。
そんなことを悶々と考えていると彼女から
「約束の時間はそれでいいよ。じゃあ、後でね。」
そう言いながら笑顔を振りまいていた。この時、俺は神はまだ俺を見捨てなかったと心底思った。
その瞬間に一時間目の開始の合図となる鐘が鳴り響いた。
12月1日 am.12:45
案の定、俺はクラスの男子の数名に呼び出しをくらった。一人はクラスでも指折りの優しいそうなお兄さん系イケメンとして有名な長門 優希、運動神経抜群のスポーツマンである武井 壮太とその他の取り巻きの方々という面々だった。
「おい、襟島…転校生を先に声を掛けてるとはどう了見だ~。弁解するならしてみぃ…。」
長門君、君の顔は鍍金かなにかできているのかな?
じゃないと普段の優しい顔付きからは想像できないほど怖い顔してるよまじで…。
「おう、惑男?てめえは今まで通りにパッとしないポジションでこそこそやっておればええじゃきにのう!!」
惑男って俺のことか?なんの略だよそれ…。てか、なんで皆、土佐弁みたいな口調なんだよ…。
「そーだ、そーだこいつをボコボコにしてやろうぜ!!」
「賛成だ…。ふひひ、ふひ、ひひひ君の●▼※◆◇*@●を◇*◆◇●※してあげるからね…」
「俺達の麗しの転校生を。グスっ、ズビビビィィ、うわあぁぁん畜生おぉぉ!!」
一人だけ明らかに俺狙いのやつがいたがそれはさておきあの娘、転校初日からこんな大人気って結構すごいな…。
「なぁ君達、ここは名梨さんの美しさに免じて許してくれよ。」
「そういう訳にはいかないだろ…このド腐れ変態野郎が…」
「…ですよねー。」
そのあと、俺は男子の数名にこってりと絞られた。
12月2日 am.1:55
今日の下校の足取りはすごく軽く気分も爽快だったが昼間の暴行の痛みほまだ残していた。あいつら…、手加減しろよ…。
まぁよしとしよう。今日は彼女との約束がある!!
素晴らしい、今日のために俺は生きてきてのだろう。フフフフ…。くだらないことを考えていたら彼女、名梨 輪廻がやってきた…。二人きりなのだここからは輪廻と呼ばせてもらおうと思う。
「あの、輪廻…、そのなんで今日は来てくれたんだ?」
「なんでって貴方が誘ったのでしょう。それに私も七不思議のことには少しだけ興味があるからかな」
「なるほど、それじゃ早速、行こうか」
二人とも高校の制服をきて少し薄暗いけど俺にとっては希望のような道を少しずつ歩んでいった。
そして鏡の前にきて手を合わせてお願い事をしようとした。
輪廻がどんな願いを思っているのか少し気になったけど俺は自分の願いを唱えることに集中することにした。
(この娘と付き合えますように…、相思相愛の中になれますように…、最後に夢に出てくるあの娘の願いが叶いますように…)
最後の願いは何故、唱えたかというと実のところ意味はない。ただ、夢に見る少女のことが自然と頭をよぎったのだ。あの娘の願いはなんだったんだろうか?
現実には存在しないのでわからないがもし、過去にでも未来にでも存在するならば願いを叶えてほしいと自然におもったのだ…。
それ以上でもそれ以下でもない。
そして鏡のほうに顔を向けた瞬間…
「逃げて!!」
「え…?」
輪廻が俺を付き飛ばした…。そして、
ドスッドスドスッ
何かが突き刺さるようなとても鈍くだが重々しい音がした…。
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4/29 誤字脱字の修正と改稿をしました。