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6,私達の関係

「結局、何も無かったぁ!?」

「は、はい」


 放課後の演劇部室。

 僕が先日のデートの結果報告をすると、友冷先輩は口をあんぐりと開けて驚いていた。


「お、おま……好きな人の自宅にまで行っといて、おま……」

「は、ははは……草食系でごめんなさい……」


 結局、星野先輩のお父さんの服を借りて、星野先輩の家族と一緒にお昼ご飯食べて、その後は予定通りにデートプランをなぞっただけ。

 特に進展とかは無かったけど、お互い苦では無い1日を過ごせた……と思う。

 少なくとも、僕はずっと楽しかった。


 恋人としてでは無いけど、以前よりずっと近い存在として、星野先輩とあんなにも長い時間、一緒に居られたんだから。

 本当、笛地さんには感謝してもしきれない。


 大袈裟かも知れないけど、彼女に会えたか会えなかったかで、僕の人生は大分変わってしまっていたと思う。

 ……良くも悪くもな気はするけど。


「ん? ところで、眼鏡っ子は?」

「あ、笛地さんは……何か、締切が近いからって、帰っちゃって……」

「ああ、そういや漫画家なんだっけ、あいつ」

「はい……」

「ん? 何か、腑に落ちないって感じの面だな?」

「……だって……」


 あの笛地さんが……


「僕の角と尻尾を舐めずに、帰ったんですよ…!?」


 絶対に、何かがおかしい。


 笛地さんの身に、何かとんでもない事が起きている気がする……!

 あの笛地さん、あの笛地さんだよ?

 あのちょっと不思議なモノを見ると我を見失ってしゃぶり付く笛地さんだよ?


 その笛地さんが、僕の角や尻尾を好きにできる1日15分限りのチャンスを無視して帰るなんて……!

 槍どころか核弾頭が降り注いだっておかしくない事態だ。


「大袈裟だな……締切前って事で、趣味に走る余裕が無くなってただけなんじゃねぇの?」

「ありえない! 笛地さんが趣味に走る余裕を失う程の事態なんて……はっ、まさか…ふ、笛地さん、もしかして不治の病にかかっちゃって、そんな元気も無いとか……!?」

「生命に関わらない限りありえない事なのか……」

「先輩は笛地さんの謎の趣味を甘く見過ぎです!」

「お前が大袈裟に見過ぎてると思うのは俺だけか?」

「先輩だけです!」

「そこまで力強く断言されるとは……」


 だってあの笛地さんだもん。


 何かある。何かあるよこれは。


「……よし……!」


 笛地さんには大きな恩があるんだ。

 できればこれは、体で払う以外の方法で返したい。体で返すとなると、流石に身が持たなそうだから。


 と言う訳で、僕は笛地さんの身に何が起こっているのかを調べ、その問題の解決に協力すると決めた。




 翌日。放課後、教室。


「笛地さん、今日は……」

「……ごめん、サーガくん。締切、今日だから、切羽詰まってる」

「あのさ…」

「じゃあね。また明日」

「え、えーと、あぅ……また明日……」



 演劇部室。


「やっぱりおかしいよ! 今の笛地さんは何かが狂ってる!」

「以前の方が狂ってた様に感じるんだけど……」

「もうそれくらいのおかしさが笛地さんの標準装備なんです! 笛地さんがおかしくないなんて、絶対におかしい!」

「お前、結構酷い認識してたんだな……」



 更に翌日。放課後、教室。


「笛地さん! 締切は昨日だったんだよね! じゃあ今日はゆっくり話を……」

「ごめん、次号更新で連載とは別で読み切り書く事になったから、忙しい」

「え、えぇっ……」

「じゃあ、また明日」

「あぅ……うん、また明日……」



 演劇部室。


「笛地さん、本当に死期が近いんじゃ……」

「いきなり酷いなおい」

「だって、だって……いくら何でもおかしいと思いませんか!?」

「最近だと、むしろお前の方がおかしくなってる気がすんぞ」

「先輩! もっと後輩の事をちゃんと見てくださいよう!」

「いや、ちゃんと見てるから、妙な方向に行きかけてるお前に心配してるんだけど……」

「うぅ……こうなったら最終手段……!」

「もう最終手段なのか……」



 更に更に翌日。


「笛地さん! 僕の体を好きにしても良いから話を聞かせて!」

「ごめん、サーガくん。単行本用の直しとか、表紙ネタも考えなきゃいけないから」




「笛地さんが死んじゃう!」

「……ちょっと否定できねぇな」


 ようやく友冷先輩も事の重大さを理解してくれたらしい。


 自殺にも近い僕の発言が、あんなにも華麗に流されるなんて……

 もう日常生活に支障をきたすレベルで快楽漬けにされるのを覚悟して、僕はあの発言に至ったのに……


「……あ、もしかして……」

「え、先輩、何か思い当たる節が!?」

「まぁな」


 おお、流石は先輩だ! こういう時に本当に頼りになる!


「教えてください、先輩!」

「まぁ、推測の域でしか無いんだが……」

「それでも構いません!」

「……あいつ、もしかして、飽きちまったんじゃないのか?」

「……へ?」


 飽き……た……?


「倦怠期って奴だよ。毎日毎日お前の角や尻尾をペロペロしてた訳だろ? そろそろ飽きが来たって別に不思議じゃないんじゃね?」

「け、倦怠期……」


 そう、なんだろうか……


「……っていうか、お前、そんなにあいつに舐められたいの?」

「い、いやいやいや! そんな訳無いじゃないですか!」


 先輩は知らないんだ。

 毎日毎日、15分間、僕は軽くトリップ状態に陥るまで快楽責めにされているんだ。

 本当にもう、女の子の前であんな恥ずかしい声や顔を晒してもう……

 先日、もうちょっと…って所で焦らされた時なんて、僕は自分からあんな恥ずかしいお願いを……!


 ああ、ダメだ、思い出しただけで(もうお嫁に)イケない気分になってきた……


「……あんな痴態……自ら進んで晒したい訳、無いじゃないですか……」

「痴態って……つぅか、じゃあ今日の発言はかなりの覚悟の上だったんだな」


 当たり前だ。

 あの笛地さんに際限無く僕の体を自由にさせるなんて……人生観が捻じ曲げられるくらいの覚悟が無ければ、口にもできない。


「でもよ、だったら別に現状困らなくね? お前の身の安全が確保された、って訳だろ?」


 うん、確かに、そうなんだ。

 そうなんだけど……


「……認めたくないけど……僕の意思に反して、体が、物足りなさを感じている気がする……!?」

「あいつは麻薬か何かか……」

「だって、毎日毎日すごいんですよ本当に! 笛地さんテクニシャン過ぎて……! 毎日が未知の領域って言うか……それにその……恥ずかしいけど……き、気持ち良く無い訳では無い訳でして……その……」

「何だかんだ、体の方はしっかり調教されてんのな……」

「……それに、飽きられた、ってだけなら良いんですけど……」

「?」

「……何だか、薄ら、避けられてる気がするんです……」


 最近、目も合わせてくれない気がする。


「……僕、自分で気付いて無いだけで……笛地さんに何かしちゃったのかなぁ……」

「……あー……うだうだと……結局アレだ。お前はあの眼鏡っ子の事情が知れれば、それで良いんだな?」

「は、はい。せめて話だけでも……」

「だったら……多少趣味は悪いが……」


 友冷先輩は呆れた様に溜息を吐き、


「可愛い後輩のために、ひと肌脱ごうじゃねぇの」




 放課後、体育館裏。


「よう、眼鏡っ子」

「……あの、友冷先輩。もうちょっとマシな呼び出し方ってできないんですか」


 私が、昼休みにトイレに行った時の事だ。


 手を洗っていると、突然目の前の鏡が曇り、不気味な書体で「放課後、体育館裏ニテ待ツ」と浮かび上がったのだ。

 すぐに「あ、もしかして幽霊先輩か?」と気付いたからパニックには陥らなかったが……最初の数秒はマジで血の気が引いた。


「お前の事だから、怪奇現象っぽい方が喜ぶかなと、少しばかり気をてらってみた」

「あれは演出がホラー過ぎて引きます。……っていうか、何普通に女子トイレに侵入してるんですか」

「手洗い場までならセーフだろ?」


 そうだろうか……


「で、何の御用ですか」

「最近、部室に来ないからちょっくら心配でな」

「……別に、ちょっと忙しいだけです」

「純愛ボーイをやたら適当にあしらってんのも、忙しいからか?」

「……サーガくんから、話、聞いてるんじゃないですか」

「らしくねぇじゃあねぇか。……ぶっちゃけ、何かあったのか? この頼りになる先輩が相談に乗ってやるぜ?」

「地に足も着いて無い分際で……」

「幽霊なんだから仕方無いだろ!? あと、透けてるだけで一応足はあるからな!?」


 ……全く……本当、この先輩は余計な所で気が回る。


「……別に、本当に何も無いですよ。忙しいだけ、ただそれだけなんです」

「そうは思えないけどな」

「…………」


 何だ、今日はやたら食いついてくるな。

 この人、いつもはもっとサバサバしてて、余計な事には踏み込まない印象だったが……


「……そんなに、気になるんですか」

「まぁな」


 ……あんまり、こういう事、人に言いたく無いんだけどな。

 仕方無い、怨霊ばりに付き纏われても、面倒だ。


「……私は、変態ですから」

「自覚あったのか……!?」

「そんなに驚く事ですか?」

「いや……まぁ」

「……私、最近、ちょっと『らしく』なかったので……適切な距離を取り直してるだけ、です」

「適切な距離?」

「サーガくんは、見た目は確かに変わってるけど、普通の高校生です」


 でも、私は変態だ。異常者だ。

 昔から、周りの人達に何度も言われてきた。


 小学生の時、皆が好きなモノについて話している時、私も混ざって、普通に話をしていたはずだった。

 中学生の時、皆が恋バナに花を咲かせる中、不意に好みのタイプを聞かれたから、軽く答えただけのはずだった。


 いつだって、私は普通に過ごし、普通に会話に参加してるつもりだった。


 でも、皆、2言目には「おかしい」「変」「ありえない」。酷い時には「気色悪い」とか言われたっけ。

 そこからは変態だの、異常者だの呼ばわり。クラス内でサイコパスみたいな扱いを受ける時期もあった。


 ……私は、理解していたはずだったんだ。

 自分はおかしいって。普通の人とは反りが合わない。

 自分の領分の外に出るべきでは無い。

 領分の外では自分を出してはいけない。

 わかってたはずだった。


 でも、サーガくんや幽霊先輩や星野先輩と、こう、もう雪崩の様に皆が皆、私のフェチズムを刺激して、興奮させるから……!

 つい、現実に対して、甘い夢を見てしまっていたんだ。

 現実と幻想の境目が、曖昧になってしまっていたんだ。


 私も、この人達とわいわいがやがや、楽しい高校生活を送っても良いんじゃないかって。

 友達の恋愛相談とかに乗っちゃったりしても、良いんじゃないかって、思い上がってしまったんだ。


 アホか。

 私には、私の領分がある。

 私は変態として、異常者として、同類と一緒に楽しく過ごしていればそれで良いんだ。

 だから漫画家の道を進んだんだ。世界中にいる、同類と繋がりを持つために。


 領分の中で留まっていれば……そうしていれば、誰も損はしないんだ。


 そういう風に、きちんと自分の立ち位置を把握しておけば、余計なダメージを負わなくて済む。


 理解者がどこにでもいる、なんて思うから、傷ついてしまうんだ。

「家族や親しい友人なら理解してくれるはず」だとかタカをくくってるから、あんな思いをする事になるんだ。


「私には私の、サーガくんにはサーガくんの領分があります。私はここの所、それを見誤っていた」


 サーガくんだって、優しいから、今は私を強く拒絶できないだけだろう。

 そして、私には恋愛相談役としての利用価値があるから、私の異常行為にも目を瞑っていただけのはずだ。


 なのに私は、その利用価値すら、満足に発揮できなかった。


 余計な事をして、サーガくんのペースを乱してしまった。

 余計な気を回した結果、サーガくんの服のチョイスをおかしくさせてしまった。

 そして、ドラゴンへの興奮の余り暴走して、またサーガくんに迷惑をかけてしまった。


 私は、やっぱりおかしいんだ。

 おかしい奴が普通の人に関わると、普通の人は酷い目に会う。不愉快な思いをさせてしまう。

 その人が優しければ優しい程、嫌な事を嫌と言えない程、私もその人も、最終的に酷く傷ついてしまうんだ。

 普通に考えれば、わかる事だった。


「私はもう、これ以上サーガくんに迷惑をかけるつもりはありません」


 少しの間だったが、私に淡い幻想と至福の癒しを提供してくれた彼の恋を、ブチ壊したくはない。

 そこまでしてしまったら、流石の私も自分が許せない。


 私はもう、サーガくんの恋愛相談には、乗らない。

 サーガくんの恋に一切干渉しない。

 だから、報酬も受け取らない。……すごく口惜しいけど。


 恋愛相談に乗らないなら、サーガくんが私と仲良くする義理なんて、無いはずだ。

 だって私は、変態で、異常者で、おかしい人なんだから。

 サーガくんは優しいから、それでも私と関わろうとしちゃうだろう。


 ……そういう所、直さないと、将来苦労すると思う。


「迷惑って、お前な……」

「……事実です。もう、私はサーガくんに余計なちょっかいは出しません」

「迷惑だなんて、思ってないよ!」


 っ……!?


「サーガくん……!?」


 突然、幽霊先輩の後方の木の陰から、サーガくんが飛び出して来た。


 ……しまった……そういう事か……

 サバサバ系である先輩がやたら食いついて来た理由……サーガくんのために、私の思惑を探っていた、って訳か。


「……騙しましたね、先輩…!」

「2人っきりで話すたぁ言ってねぇな」

「笛地さん!」

「私は単行本関係の作業があるのでこれで!」

「逃がさない!」


 ぐおっふ!?

 サーガくんの手から何かスライムみたいなのが……!

 ぐぅ……このスライムみたいなの、弾力があるくせにキッツキツに私を縛り上げてくる。

 厄介な魔法を……!


「……酷いよ、笛地さん……」

「女の子をスライムで雁字搦がんじがらめにする方が酷いと思う……」

「えと……ごめん。でも、こうしないと逃げるし……」


 いや、逃がしてよ。


「笛地さん、僕、迷惑だなんて全然思ってないよ?」

「……でも、私の入れ知恵であんなアホみたいなタキシード着たり、水被ったり……」

「アホみたいな……じ、自信はあったのに……うぅ、いや、問題はそこじゃないよ」

「……?」

「僕、笛地さんには感謝してるし、笛地さんといると、楽しいよ?」

「……それは、サーガくんが優しいだけ」

「僕は笛地さんに優しくしちゃ、ダメなの?」

「……!」

「笛地さんは、確かに変わってると思うよ。変だとも思うし、たまに……ううん、結構な頻度でおかしいとも思う」


 おふ、結構はっきり言うね、サーガくん……


「でも、僕はそういう笛地さんの事、好きだと思ってるよ?」

「気は、使わなくて良い」

「……何で、僕の事を決めつけようとするの?」

「え……」

「笛地さんがおかしかったら、僕は笛地さんを嫌いにならなきゃいけないの?」

「いや……だって……ペロペロしてる時、いつも恥ずかしくて死にそうな顔してるし……」

「う、うん。それはその……」

「でも、最近じゃ満更でも無いって…」

「友冷先輩は少し黙ってて! 確かに、あんまり恥ずかしい事をされるのは困るけど! それでも僕が笛地さんを嫌いになる程の要因じゃないよ!」

「……無理してない?」

「……はぁ……あのね、笛地さん。僕の心は僕のモノだ。笛地さんに、僕の心を否定する権利なんて無いよ」


 それは……確かに、そうかも知れないけど……


「僕は、笛地さんに感謝してる。恋愛相談に乗ってくれるって言ってくれた時から、ずっとずっと、感謝しっぱなしだよ」

「…………」

「星野先輩と仲良くなりたいってずっと思ってたのに、誰に相談すれば良いのか、自分だけでどうすれば良いのか……全然わかんなくて、どうしようも無かった。だから、あの時、すごく有難かったし、嬉しかった」

「……サーガくん……」

「星野先輩の事、色々調べて来てくれたり……デートの約束を取り付けてくれて、僕のために参考になりそうなゲームまで探して来てくれて……本当に嬉しかったんだよ?」

「……でも、水を被った件は、フォローの使用が無いよね」

「う……うん。まぁ、そこは反省してね」


 言われなくても反省してる。……改善できるかは、難しい所だけど、善処はするつもり。


「とにかく、笛地さんがどう思ってるかは知らないし、結果の良し悪しもどうでも良いよ」


 そう言って、サーガくんは、優しく微笑みかけてくれた。

 打算とか、そういうのが感じられない、本当に子供みたいな笑顔。


「僕は、僕のために誰かが頑張ってくれた事を、迷惑だなんて思った事は1度も無い。だって僕のために誰かが頑張ってくれる義理なんて、本当は無いんだから」


 それなのに頑張ってくれる人には、感謝の言葉しか出ない、とでも言うの?

 私は、あんなに迷惑かけたのに、……「気にしてない」って、そんな笑顔で、君は言うのか?


 ……っていうか、私、報酬もらってるから頑張るは義理あるんだけど……

 打算が一切無い言葉であるが故に、ちょっと思慮が足りてない気がする。

 でもサーガくん、「言うべき事は言ったぜ」感を出してるし、空気を読むならば、そこは触れてあげない方が良いかも知れない。


 ……まぁ、何だ。

 そこは一旦抜きにして、だ。


「おかしいよ、サーガくんの考え方」


 人が好すぎる。


「うーん……まぁ、無理に『普通の考え』ってのにこだわる事も無いし……僕はこの考え、曲げるつもりは無いよ」

「…………信じていいの……?」

「え?」


 ……「家族や親しい友人なら理解してくれるはず」だとか勝手に信じてると、辛い思いをする事になる。

 今まで、実際に何度も経験して、この骨身に刻んだ『現実』だ。


 でも、こんな普通じゃない、おかしな考え方をするサーガくんなら……


「さっきの、私と一緒にいて楽しいっていう言葉……信じていいの……?」

「……むしろ、それは疑われる方が心外だよ、笛地さん」

「お人好し」

「うん。よく言われる。お父さん譲りかな」


 照れた様に頬をかきながら、サーガくんは軽く指を鳴らした。

 すると、私を捕縛していたスライムが崩れ落ち、地面に染み込む様に消えて行った。


「これからも、よろしくね。笛地さん。……あ、ここは将軍って呼んだ方が良い?」

「……なつかしいネタを……」

「やれやれ、一件落着か、後輩共」

「友冷先輩、ありがとうございます」

「良いって事よ。お気に入りの可愛い後輩達のためだからな」

「……ところで」

「何? 笛地さん」


 一件落着、うん、その通りだ。

 そして、サーガくんは私の変態性を受け入れてくれる、確かにそういう旨の約束を、今交わした。

 間違いないはずだ。


「サーガくん、昨日、面白い事言ってたよね」

「へ?」

「『笛地さん! 僕の体を好きにしても良いから話を聞かせて!』」


 あ、見るからにサーガくんの顔から血の気が引いた。

 あー怯えてるサーガくんもやっぱり可愛いなぁ。


「さ、どんな話でも聞かせてあげるから、とりあえず、上着を脱いで」

「何か新たな境地を切り開かれる悪寒!? ちょっと待って笛地さん! それは昨日の話で……」

「……冗談」


 ぷっ……ガチ焦りのサーガくんマジ萌える。


「そういうご褒美は、ちゃんと、成功報酬として受け取る」


 それまでは、毎日15分のペロペロで勘弁してあげるとしよう。



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