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君がいたからーー

君がいたからーー保月瀞の場合2ーー

作者: 智遊

ーーふむ、どうしたらいいものかーー


 私は口許に人差し指をやりながら考える。


「なにを考えてるの?瀞」


 澄みきった空に凍えるような声がかかる。つまりは恐い。

なにをそんなに怒ってらっしゃるのか、口元は微笑んでいるのに目が笑ってないですよ、恭弥様。うん、まあ答えはわかりきってますが。


「見苦しいものをお見せしました、恭弥様。身なりを整えて参りますので御用がございましたらーー」

「うん。で、その格好はだれがみたの?」


 口上を遮られてしまった。

 この格好、ね。この格好ってのは上から下までびっしょり濡れてカッターシャツがちょっとシースルーぎみになってるこのみっともない格好のことですかね。

ていうか、こんな格好になった理由よりも先に、体裁を気にしちゃうんですね、恭弥様。

 ちょっとだけでいいので心配してください。


「水戸様と二年の上月先輩、篠川先輩、春先先輩ーーあ、麻人様がいらっしゃいました。理由はお聞きにならないのですか?」

「見てた」


ああ、そうですか。失礼しました。

 今回の件は水戸様への嫌がらせの一環がエスカレートしたものでしょう、中庭を通ろうとしていた水戸様めがけて降ってきた水。

 間一髪で水戸様を突き飛ばして難は逃れました、が。私がかかってしまうというドジをふんでしまいました。まあいいでしょう、水戸様、今日顔が異様に赤かったので具合が悪いのではないかと気になっていましたし。


 というか、原作の流れでしたら、彼女熱ありますし。


「瀞、お前、家で謹慎してて。一週間ほど。僕、今から水戸さんに謝ってくるから」

「え?突き飛ばしたことでしたら、自分で謝りますよ。恭弥様がお出になることはありません」

「うん、いいから謹慎してろ。ふふふ。反省文なんて緩い……退学においこんでやる」

「恭弥様、何を考えてらっしゃるんです?」


 恭弥様がふふふふ。って笑ってらっしゃる!恐い!

 退学ってだれを?そりゃ、手を回して水戸様に危害だけはないように仕向けてらっしゃった恭弥様ですから今回こんなことになったのは悔しかったかもしれませんけど、いいじゃないですか、結果、水戸様ご無事ですよー。

 諫めようと口を開きかけたが、まあ、自業自得かと思い直し部屋に帰ろうと一礼して恭弥様を見送ろうとする。

 と、ふわりと肩になにかがかかる。恭弥様が学校で膝掛けに使っているストールだった。

 男だろ、と思うことなかれ。いや、寒いんですようちの学校!ダレ得?ってくらい寒いんです。なので、恭弥様の机横にいつでも使えるように常備しています。

 そのストールを!ずぶ濡れの私のために……っ、恭弥様……っ

 恭弥様は、感動にうち震えている私に背を向けて去っていきました。



 水ばしゃ事件は表沙汰になることはなく、恭弥様が水戸様に謝罪したことで一段落した。

 水戸様はやはり具合が悪かったらしく、次の日は寮でゆっくりしてからあくる日登校したそうだ。私は、言いつけ通り一週間謹慎した。


 出席してから気付いたのだが、例の実行犯の女子生徒3人は退学していた。


 ……恭弥様、なにをしたんですか。





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