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Moon  作者: 佐藤梨緒
1/1

突然の別れ話

俊作「もう終わりにしようか。おれたち。。。」


類「理由は聞かせてくれる?」


俊作「もうつづけられない」


類「ちゃんと声で聞かせて。こんな文字で終わらせないで」




クリスマスも終わり、世間は年末の慌しさがこみ上げてくる12月の終盤。


私は彼氏にラインで別れの言葉を叩きつけられた。


生まれて初めてフラれた・・・


0時も回ったその時間帯。突然のその話にただ慌て、彼からの電話にも

どう対応したのか覚えていない。


確かにここ何日かはお互い忙しく、あまり連絡を取り合っていなかったけれど

だからって突然のこんな話、簡単に受け入れられる訳がない。

それよりなにより・・・思い当たる節が無い。


俊作「もしもし・・・」

類「どうして、、、なんでこんなに突然なの?」

俊作「ごめん・・・」


いつも笑顔だと分かるニコニコした声しか知らない私が、初めて耳にする辛そうな俊作の声に、本当に終わりなのかと手が少し震える。


類「私のこと・・・嫌いになった?」

俊作「類のこと、、嫌いに、、なんか、、なれないよ」

類「意味がわかんない!嫌いじゃないならなんで?どうして?」


いつも冷静な自分がここにはいない。

慌てすぎて息が苦しい。涙がポロポロ零れて声が出ない。


俊作「最近、、あんまり連絡取れてなかっただろ。なんていうか、、もう前みたく類!類!って類のことばかり考えてあげることができなくなったんだ」


類「そんなの、、、落ち着いてきたら当たり前のことじゃない!」

俊作「春まで待とうと思ったんだ。けど、、、待った所でじゃあ次は秋・・・・

   そんなことに意味があるのかなって」


類「・・・・・・」


私達は世間でいう遠距離恋愛だった。それもちょっとやそっとじゃなく。

半端無いくらい遠くて。だから、、そう言われて何も返すことが出来なかった。


俊作「他に好きな人が出来たとか、、嫌いになったとかじゃないんだ。ただ、、俺のワガママなんだよ。逢いたいのに、ちょっとやそっとじゃ逢えない。それが辛いんだよ」

類「そんなの、、、最初から承知のことだったじゃない、、、」

俊作「そうだけど。。。類はあんまり逢いたいって思って無いみたいだけど、俺はいつもそう思ってて、、、」


類「思って無い訳無いじゃない!言えば、、俊作を困らせるだけだって思って我慢してたに決まってるじゃない!私だって、、逢いたくて逢いたくて、、、仕方無いのに、、でも時間だってお金だって、、そんなに自由になる訳じゃないから、、」

俊作「・・・・・」


私達の距離はどれくらいなんだろう。正確に調べたことは無いけれど

北海道と九州。日本の端と端でこんな展開になるなんて、一番予想をしていなかったのは私本人だ。


俊作「前みたいに、いつも時間ができたら連絡とかって俺、最近できてなかっただろ?たぶんこれからも、もっとそうなる。そうなった時に類が寂しい想いをするのが嫌なんだ。それでさよならってなるのが嫌なんだよ」

類「それが俊作の別れたい本当の理由なの?」


俊作「好きな人が出来たって言ったほうが類はきっと納得してくれると思ったんだけど、、、」

類「・・・・・。うん、、そのほうがまだマシ。これで本当に終わりって言うなら、優しい言葉なんかかけて欲しくなかった」


シーンとするお互いの空気に気持ちだけが焦る。

本当にこれで終わりなの?話し合いで解決とかできないの?

すぐには逢いに行けないけど、、、でも、、どうにもできないの?

息が苦しい。胸の鼓動が激しすぎて痛いくらいだ。頭の中が真っ白になるってこんなことを言うんだな・・・


こんな時なのに、私はそんなことを思いながら俊作の次の言葉を待っていた。


俊作「本当は好きな人ができた」

類「本当?」

俊作「うん・・・」


私が彼のことを好きになったのは・・嘘をつけないからだった。

自分と感覚が似ていて、考えることも本当に一緒で、いつも「また同じだ」って笑ってしまうくらい似ているから好きになったんだ。


(そんなの、、、絶対嘘だ!)


確信は無いけれど、きっと彼なら本当に好きな人ができたのなら、最初から素直にそう言うだろう。そして簡単に人を好きにならないことも知っている。

最初にそれを否定したのに、いまさらそれならって都合が良すぎる。


類「それが本当ならどんな人?」

俊作「それ聞いてどうするの?」


冷たい言い方に、やっぱり嘘だと思った。きっと本当ならば彼なら申し訳無さそうに、その人のことを教えてくれるだろう。職場で知り合ったとか、友達の紹介とか、、、

あからさまに濁すその態度に、なんだかそれ以上は何も言えなかった。


(そんな嘘をついてまで、私と別れたいんだ・・・)


そっちのほうがショックだった。


俊作の仕事はショップの店員。私も同じような仕事。接客業の辛い所はお互い分かる。みんなが連休だと浮かれている時に、私達は一番忙しくお休みは平日。

なかなか休みが合うことも無いし、仮に合っても住む場所は遠い。


四六時中、電話をするタイプじゃない私達がもっとも使っていた連絡手段はライン。

今どきと言えば今どきだけど、お互い時間ができたら小さいことでも送りあい、そこでお互いを感じ、存在は離れていても気持ちが通じていると感じていた。


近いからといって良いことばかりじゃないって彼と知り合って本当に思った。

こんな風に色々話し合うような付き合い方をしたことが無かった私には、この付き合いが新鮮で、そして楽しくて、、、


人は誰かを好きになる時、相手を見てから好きだと感じる。

私もいままでそうだった。それ以外は無いと思っていた。

内面なんかそれほど重視していなくて、見た目がタイプなら好きになれる!って

いつも軽い恋愛をしていた。

だから、、、いつもと違う俊作のことは、、何よりも大事にしていたのに、、、



私はどちらかと言えば、普段はあまり焦ることも無くシラーとした雰囲気に思われる。

だからといって愛想が無い訳では無い。そこは大人として理解しているつもりだから、それなりに場をやりすごす知識も経験もある。


けど、いつも恋愛には絶対的臆病で傷つくことを恐れていた。


自分から告白をしたことは無いけれど、相手をソノ気にさせるスキルくらいは知らないうちに身についていた。別にこれといって可愛い子ぶる訳じゃないけれど、いわゆる駆け引きとかは出来ないタイプ。あからさまに興味があるのがバレバレだけど、でも肝心な最後のラインは自分からは言わない。


というか・・・言えない。拒絶されたら心が痛いから。


相手に脈が無いと感じる繊細な部分は人より長けている自信がある。

だからフラれたことは無いし、引き際もアッサリしている。

でも、いままで好きかも?って思ってダメだったこともあまり無い。


人並みに恋愛をしてきたつもりだけど、でもどこかで思っていた。


(これも本気じゃないな・・・)


確かに好きと思えば相手のことで頭がいっぱいになるし、相手と繋がっていたいと普通の人のように思う。けど、どこかで冷めている自分も感じている。


(きっとこの恋愛もそう長くは無いだろうな・・・)


相手が本気になればなるほど自分の気持ちが冷めていくのが分かる。

甘い言葉なんか言われると、ニコッとはするけれど内心は


(うわぁ・・・そんなこと言っちゃう人って本当にいるんだ?)


なんて、コッソリとひいている自分もいたりする。


私の恋愛のスタートは100%見た目からだ。それも自分から好きになった人じゃないと心が動かない。相手から告白されても、ビクともしない自分はなんて女らしく無いんだろうと思ったこともある。


あまり結婚願望も無く。そして恋愛なんてどうせ最初だけだって思っている私はいつも本気で誰かを好きになることなんて無かった。

相手を知れば知るほど、、、最初はもっと気を使ってくれていたのに、もっと優しかったのにって不満が募る。

どうしてみんな彼氏、彼女の関係になると相手に気を使わなくなるんだろうっていつも思う。


どんどん図々しくなって気分を害することを平気でする過去の彼氏達を見て、私はどんどん恋愛がバカらしくなってくる。

私なら、、、本当に好きな人が出来たらずっと大事にするのに。

どれだけ一緒にいても常に一番に考えてあげるのに。


同じ考えの人がいたらいいのにな。。。。

いつもそんなことを思っていた。自分と違う考え方を見る度に加速していた気持ちがそこで減速する。


そして、、、嫌になる。その繰り返し。




ゆかり「類~。木村君のこと振ったって本当?」

類「振ったっていうか、、、別に好きじゃないし」


ゆかり「いやいやいや!だって彼、結構モテるでしょ。見た目だって悪く無いし性格だって凄く良い人じゃない!なんで?」

類「別に・・・。好きじゃないから」


ゆかり「類ってさ。変わってるよね」

類「なんでそうなる!好きじゃない人に告られて、付き合わないのが変なの?」

ゆかり「そうじゃなくて。好きって言ってくれるのって人生そうそう無いと思わない?それが変な人じゃなくて、それなりの人なら少しは考えてみようかなとか思わないの?」


(え・・・みんなそれ普通なの?)


類「私は、、、自分から好きになった人じゃないとヤダ」

ゆかり「頑固だよねぇ~アンタ」

類「だから!じゃあアンタはまったくそんな風に思って無かった人から突然告白されたらホイホイ付き合うの?」

ゆかり「ホイホイって!てかさ、まったくってアンタだけがそう思ってたんじゃない?周りはみんな知ってたよ?あからさまにアンタに超優しかったじゃん」


類「・・・・?」

ゆかり「頑固な上にバカか!」

類「ちょ!そんな言い方しなくてもいいじゃん!」

ゆかり「つーか。アンタ趣味悪いからね」

類「なにそれ!誰のこと!」

ゆかり「いままで全部」


類「嘘っ!どうして?」

ゆかり「アンタは曲者ばかり狙いすぎ。ちょっと癖がありすぎだよ・・・」

類「意味がわからん」

ゆかり「そのままだよ!」


小学生からの付き合いの彼女からすると、私の歴代の彼氏達は曲者ばかりだと言う。自分ではそんなつもりはまったく無いけれど、言われてみればみんな個性があったかもしれない。


ゆかり「けど・・・・。いつも突然振るからね・・・アンタ」

類「そう見えるだけで、私なりに苦労した上での決断なんだから」

ゆかり「そうは見えないけどねぇ・・・」

類「いやいやいや。結構苦労してんのよ?これでも」


私は基本、付き合った人とは喧嘩はしない。相手に不満があっても言わない。

が、裏を返せば言えないとも言う。

喧嘩をするあの空間がとても嫌だし、相手の怒るツボによってその人の器の小ささが浮き彫りになるような気がして、どんどん冷めてしまうからだ。


良く言えば平和主義。

悪く言えば・・・偽善者。


なんでも優しい笑顔で心の広い女を演じているようで、実は内心結構イラついていたりする。けど、、、きっと私は寂しがり屋なのだろうと思う。

誰かに寄りかかりたいけれど、どうすれば上手く甘えられるのかが分からない。

優しい顔をしていれば一人になることが無い。だから相手に文句を言わない。


一人になるくらいなら、少しくらいのイライラは仕方が無い。


けどそれがドンドン積もってくると、、、また違う人に目が行く。

男の人は最初、みんな優しいから。

だからそっちが良くなってしまう。ある日突然、彼氏を振る。

そしてそれと同時に新しい彼氏が出来る。私の典型的パターンだ。


ゆかり「結局さ。みんな最後には私に「突然フラれた」って文句言いに来るんだけど」

類「でも、ゆかりはそれなりに理由言ってくれるでしょ?」

ゆかり「まぁ・・・そりゃ聞いてることはね。けどさ。恋愛ってそうじゃないんじゃない?」

類「別にいいじゃん。ちゃんと本気でその時は好きだったんだから。嫌いにさせるようなことするのが悪いんだもん」


ゆかり「そうかもしれないけど・・・。でも嫌なことは嫌って言わないと相手も分からないじゃない」

類「分からないなら、それまでの男なんだよ。初心忘れるべからずってコトワザあるでしょ?」

ゆかり「はぁ・・・何を言ってもダメか。優しいのか嫌な奴なんだか」


類「結局。私の理想の人なんか早々いないってことなのよ」

ゆかり「いないだろうね。自分大好きだもんね」

類「そりゃね。てゆうか、ゆかりってさ。もし自分が異性だったら今の自分と付き合いたいって思う?」

ゆかり「何その飛びぬけた発想!」

類「私は断然付き合う!これ以上のイイ女いないもん」

ゆかり「どこが!!!」


類「どこかに居ないかな~。私みたいな男」

ゆかり「てか。私なら絶対自分とは付き合わないかな」

類「どうして?」

ゆかり「えー。なんか面倒くさいし。自分だからこそ分かる性格ってあるじゃない。それも全部ひっくるめて、、やっぱヤダ」


類「全部ひっくるめて自分が良いのよ。もし私みたいな男を見つけたら絶対大事にするもん!もう他の人なんかに余所見なんかする訳無い」

ゆかり「で、突然振られるんでしょ?」

類「私は初心を忘れないもん。そんなこと有り得ません!」

ゆかり「いつか同じ目に合わないと分からないのかもね~」


別れ話の最中に、私は昔友人とした会話を思い出した。


そして・・・それが本当になった。






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