平凡な中学校生活
あまりに非現実的すぎるところがありますので、ありえない事が起こる物語が苦手な方はご遠慮ください。それでも尚、面白さを追求しようと考える方は是非、読んでみてください。
新学年にも慣れてきた5月。暖かい風が私の頬をなでる。
中学二年生の生活にも慣れた野々宮ゆいなは軽い足取りで通学路を歩いていた。今日は全校朝会があるため、あまりゆっくりしていることはできない。少しでも遅れると学年主任の鈴木先生がうるさく説教をする。あの狭い学習相談室で教師と一対一で会話するなんてごめんだ。
早く行かないと。
ゆいなは包み込まれるような暖かい光のなかを、学校に向かって走り出した。
* * *
「遅い。なにやってるのよ、ゆいな」
教室の窓から校門を睨みつけていた黒田萌仲は、つい声に出していた。
今日はゆいなと一緒に登校する予定だったのだが、案の定ゆいなは約束を忘れていた。萌仲はそれくらいのことは予想していた。でも、先に行って、と苦笑しながら言っていたゆいなは全校朝会が始まる五分前になっても校門を通過していない。
「学年主任に怒られても知らないんだから」
口ではそう言ってしまうが、説教されているゆいなの姿を想像すると可愛そうになってくる。だから萌仲はこうして何分もの間、校門を睨みつけているのだった。
その時、校門にゆいなの姿が見えた。萌仲は内心ホッとしながらゆいなが教室に入って来るのを待った。
* * *
ゆいなは階段を駆け上がると勢いよく教室に滑り込んだ。すぐに窓辺にいる少女に視線を向けると、そのまま近づく。
「萌仲、ごめん。約束忘れちゃって……」
思い切り頭を下げたゆいなに萌仲は少し目を見開いていたが、すぐにいつもの優しい姉のような表情に戻った。
「いいのよ、別に。そんなこと予想してたわ」
萌仲の大人っぽい微笑みに、ゆいなは思わず見とれてしまった。萌仲は背が高く、姉のような雰囲気がある。背が低く、童顔のゆいなと比べると天と地ほどの差があるのだ。萌仲はショートカットの髪に柄のないヘアピンをつけている。それに対してゆいなは肩くらいまである髪をツインテールにしているため、余計に幼く見られてしまう。
「さ、早く行かないと遅れちゃうわ」
ゆいなは萌仲に手を引かれて、体育館へと向かった。