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キラーハート The Killer In Smiling MAN S  作者: 曇天紫苑
The Killer In Smiling MAN S 一笑編
6/77

2.5話

 窓から覗く青い海を楽しそうに見つめながら、エドワースは個室のベッドで倒れ込んでいた。勿論、死んでいる訳ではない。

 静かに寝転がっている姿は死人同然だが、それでも死んでいる訳ではないのだ。


「……はぁ」


 雲一つ無い空から覗く太陽が海を眩しく光らせている。それを眺めながらも、エドワースは疲れている様にも、大変な事を終わらせた後の安堵にも聞こえる溜息を吐いていた。

 彼が転がるベッドの側には幾つかの荷物が置かれている。ルービックキューブを持った船員が運んだ物だ。

 エドワースはそれの中身を見られたり、盗まれたりする事が無いように見張りを勤め、それをやり遂げた後はこうしてただ寝転がっている。

 彼の顔は細められ、今にも眠ってしまいそうだ。


「……ボス、今は飯でも食ってるのかな」


 寝言の様だが、妙に部屋に響く声だ。エドワースは言いながら上体を起こし、軽く欠伸を吐く。頭の中には共に来た二人の、特に彼がボスと慕う男の姿があった。

 エドワースは食堂と映画が放映している場所の位置を思い出しつつ、一度立ち上がって窓の外を見る。

 船から見えるのは海だけではない。遠くには島があり、もう少し近くを見れば飛び跳ねる魚が姿を見せる事もあった。

 だが、エドワースは景色を見ようと思っていた訳ではなく、窓に殺人鬼でも居ると思っていたのか、警戒心をむき出しにしながら窓の外を見て、安堵する姿を晒している。

 彼の仲間が見れば、普段通りの警戒心と臆病さだとエドワースを笑い飛ばしていただろう。だが、本人は自分の行動が『行きすぎている』などと思いもせず、またベッドの上に寝転がった。


「……なーんで、俺。ここに来たんだろうな」


 ベッドに体を預けながら、エドワースは小さく呟いた。

 恐らく、それは彼が船に乗ると言い出した時、他の仲間達も思っていた事だろう。臆病で通っているエドワースが自ら船という閉鎖された環境に入る事など、誰も予想しなかったに違いない。

 そしてそれは本人も同じだ。エドワース自身、どうしてこの船に乗り込む事を決めたのかは今でもわかっていない。だが、そうするべきなのだと考えた事には理由を付ける事が出来た。

 彼が船に乗る事を考えた理由は簡単だ。


「こんな、勘で決めるんじゃなかったなぁ……いや、どの道、行かなきゃ駄目かぁ」


 そう、『とある理由を除けば』何となくなのだ。

 もしもこれを聞かせれば、他の仲間や共に来たボスやリドリーが聞けば唖然とするか、呆れた顔を見せてくれるだろう。そう考えて、エドワースは楽しそうに笑みを浮かべる。

 そんな時だった。扉から軽く叩く様な音が聞こえてきたのは。


「……誰だ?」


 扉をノックしているのだと理解したエドワースは警戒心をむき出しにして、拳銃を手に取る。

 荷物の中に紛れさせていた物だ。他の二人はどうやったのか軽々と銃を持ち込んでいたが、エドワースだけは荷物の中に入れてあった。

 彼が銃を取り出しても、ノックはまだ続いている。返事は、ない。

----リドリーか? まだ上映時間は終わってないんじゃ……

 頭の中で一番にその様な事をする可能性が高い人物を思い浮かべたが、上映中に外へ出る事は絶対に無い人物だと知っていた為に、頭の中で即座に除外される。

 この部屋に顔を出す者など、後は一人しかいない。だがその男、ケビンと名乗った男は部下の部屋であるこの個室に入るのに、ノックはしないだろう。

 エドワースの頭の中で、警戒が急激に膨れ上がる。無意識の内に銃の安全装置は外れていて、銃口は扉の方へ向けられていた。

 しかし同時に、『もしも、ただの船員だったなら』とエドワースは数秒だけ考える。もしもそうであれば、実弾入りの拳銃を持った男は不審者兼危険人物以外の何者でもない。


「……もう一度聞くけどな、誰なんだ?」


 そう思ったエドワースが、とりあえず確認を取ろうと口を開く。それなりに大きめの声だが、相手はまるで聞こえなかったかのように、無言で扉をノックし続けている。

 忍耐の限界を感じたエドワースが銃を構え、引き金に力を込めようとする。

 そうしている時にも、ノックは続けられ----


----最後には、扉が蹴破られる事になった。


 頑丈な扉があっさりと崩れ落ち、奥から一人の人間が姿を現した。

 相手の行動は明らかに派手で、敵意があるとしか思えない。それを認識したエドワースは相手を即座に敵と判断し、銃口を相手の頭に向ける。

 が、それを見てしまえば、次の行動に出る事は出来なかった。


「お、お前は……!」


 その顔と、手に持った物を見たエドワースは驚愕の余り目を見開き、思わず引き金の指の力が緩んで----


 小さな銃声が、鳴り響いた。

補足みたいな話です。

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