2日前
聡美と啓輔と拓実と真理
全部短いものになってしまったので
一つにまとめました
2日前 聡美
今日は一日啓輔と目も合わせられなかった。
昨日の光景が頭から離れない。
知美が気落ちしているのは知っている。だから泣いていたとしても不思議はない。
でもなんで啓輔の目の前で泣いていたのか、それだけが引っ掛かる。
啓輔を信じたい。
でも疑ってしまう。
中央分離帯の向こうを歩く啓輔の隣にいるのは、ホントは知美なんじゃないか。
こっち側を歩くあたしのことなんか、気付いてもいないんじゃないか。
考えまいとすればするほど考えてしまって、仕事中も、帰って来てからも、頭の中はそのことでいっぱいだ。
考えすぎで頭が重くなってもまだ考えてる。自分が嫌いになりそうだった。
誕生日まであと2日。
気が重い。
2日前 啓輔
今日は一日聡美さんは目も合わせてくれなかった。
どうして急にそうなったのか俺には解らなかった。
あの時の事を怒っているにしては、態度の変化が遅い気がする。
なにか別の事で目を合わせたくない理由があるはずだ。
なんか急に二人の間に壁が出来てしまったようで、寂しかった。
でもその壁を作らせてしまったのはきっと、俺のせいだ。
理由が解らないのは俺が悪い。きっと考えれば理由が解るはずだ。
聡美さんの誕生日まであと2日。
なんだか気が重い。
聡美と啓輔の様子がおかしい。
今日は一日、話もしないどころか目も合わせないほどだ。
トモちゃんは朝から目を腫らしているし、とにかく室内の空気がこれでもかってくらい悪い。空気が悪いと気分も悪くなる。
聡美も啓輔もトモちゃんも、悪気がないのは解ってる。解ってはいるが、悪気がないでは済まないこともある。職場の雰囲気を悪くするのは、よろしくない。
帰りがけ、ロビーで林に呼びとめられた。林もやはり気になっているらしい。林がどうしてそんなに聡美の事を気にするのかは解らないが。
「聡美、おかしかったよね」
「山田もな」
俺は不機嫌を隠すことなく、言ってしまえば、忌々しげに言った。それはこないだ吉田に事件の真相を聞いたにも関わらず何もできない自分にも向けられた怒りだった。
「昨日はそんなこと無かったんだけどなぁ」
「昨日? 昨日も似たようなもんだっただろ」
「違うんだよ。昨日は話をした時、聡美そんなに機嫌悪くなかったもん」
「じゃあなにか? 昨日仕事が終わってから、今日来るまでの間に何かあったのか?」
「そんなこと、あたしは知らないよ」
林は俺の苛立ちをぶつけられて、不機嫌をあらわにした。不機嫌は人にうつる。だから職場の雰囲気が悪くなるのは嫌いなんだ。
俺は一つ深呼吸して、怒りを腹の底に沈める。大人になって気分を落ち着ける方法は、だいぶうまくなった。
「悪い、ちょっとイライラしてた」
「別に、岩崎くんだけじゃないよ。きっとみんな何かしらの不満を抱えてる。口には出さないけどね」
「……だよな」
なんとかしてやりたいのは山々だけど、俺に何ができる?
「もうすぐ誕生日だって言うのにね」
「誕生日? 誰の」
「ええ? 岩崎くん知らなかったの? 明後日聡美の誕生日だよ」
忘れてた。
「そうか、それだ」
「何が?」
「それしかねぇじゃん。誕生日」
「だから何が?」
「作戦名『誕生日』だ」
「だから、一体何が?」