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どこからか聞こえる

作者: アンドー
掲載日:2026/07/02

超短いショートショートです。

引っ越し先の、鉄筋コンクリート造のアパートで、どこからか声が聞こえる。男が何かを喋っている音だ。アパートにありがちな反響で、どこから聞こえているのかわからない。

寝ていると余計に響く。

『おのれ、ーーーーーーー、ーー、ーーーーーるぞ』

なんと言っているのかわからないが、何かを言っている。


今日は、疲れたからか余計に耳にうるさい。

『などーーーーー』

うるさい。

「っあぁ、うるせぇ」

手を探って、リモコンで電気をつける。

眠ろうにも気になる。

引っ越したばかりで疲れている上に、隣人の音で寝不足とか最悪だ。

電気をつけても音が消えることはないが、視覚情報が入るからか、気が紛れる。ついでにトイレに行っておこう。

トイレに入り、用をたし、水を流す。

『ーーーーーるぞ』

ガコッーーーザアアアアァアアアアァアア

水の流れる音がする。

台所に行き、蛇口をひねる。

『ーーー、などー』

ツドドドドドドジョーーーキュ

シンクに水が叩き落ち、グラスに水を入れ、蛇口を閉める。

水を一気に飲み干す。

『ーーー、などいきーーー』

なんとなく頭を振るが、ぼんやりしてスッキリしない。

「ニャア」

「あ、ハルさん」

『おーー、ーーいーー』

愛猫のハルさんがひょっこり顔を出した。

俺を見て、一瞬硬直する。まん丸の目がかわいい

「フシャァアァァアァァアアアア」

ガシャン

野生全開で俺に向かって飛び、頭の上を通過して、飛び越えていくハルさん。驚いてコップを割る俺。

『ーーー、っぐぅ』

『ごぉぉらぁぁぁあ』

いきなり声が変わる。聞こえていた声とは違う、どこか懐かしい声。

その瞬間に鳥肌が立った。

ずっとどこからか聞こえていた声。本当に他の家からだったのか。なぜ、寝室でも、トイレでも、台所でも。同じ聞こえ方をしていた?

「ハル、さん?」

「ニャア、ニアァァアニャア」

なんとなく、叱られた気がした。


後日、不動産屋に連絡を入れる。

「うちって、事故物件じゃないですよね?」

「少々お待ちください。・・・うーん、ないですね。もともと、築年数が浅いので。前の入居者が最初ですが、特に報告無いですね」

「そうですか」

「なにかありましたか?」

「いや、人の声が聞こえて」

「集合住宅なので、反響したんですかね?一緒に内見をした同居者も音を聞いていますか?」

「同居者」

「一緒に内見に来た、角刈りにスカジャンを着ていた男性ですよ。入居に反対していた。ほら、書類にも同居人に、・・・あっ、ペットですね・・・勘違いしていたみたいです、すみません。

 とりあえず、人の声に関してはこちらではなんともいえないです。ご報告があったことは記録はしておきますね」

「・・・そうですか。ご回答ありがとうございました」


とりあえず、その日のうちに神社で購入した御札を部屋に貼った。


その日、夢を見た。

祖父と猫のハルさんに説教される夢だ。

「ハルさんに迷惑かけるなよ」

「ニァァアニンァアア、ニァアァニァアニャ」

「怖い目にあわないと準備しねぇんだからな、ちゃんと引っ越してすぐに御札を貼れよ。というか、引っ越せ。霊道だぞ、この部屋」

「ニャァ!」

「じいちゃん。ハルさん、ありがとう」

「おう、気をつけろよ」

夢の中の祖父は、生前に指定した遺影の写真と同じ、若い姿に角刈りの頭、竜が刺繍されたスカジャンを着ていた。

『おのれ、などいきたるぞ』

おまえは、どうして生きているのか。という意味で使いました。

どこからか聞こえる声。

本当に、家の外からなのでしょうか。

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― 新着の感想 ―
どの部屋へ移っても同じように聞こえる声と、愛猫ハルさんの突然の威嚇が、不気味さを一気に現実へ引き寄せていました。角刈りにスカジャン姿の人物が亡き祖父だったと分かり、猫と一緒に主人公を守ってくれていたこ…
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