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残念ながら、僕達は  作者: 桜油
二部四章『預言者と選択者』
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4-1

こんにちは。

今日はちょっと短めです。

未留山。

桜坂市郊外に位置するこの山は、かつて『志瑞寺』『志瑞神社』という由緒正しい寺、神社があった。

数世代前までは志瑞一族が代々管理していたけれど、『教会』の襲撃で倒壊したり、長らく封印されていたものを城月怜が撃破した為に志瑞一族の役割が失われたり。

終いにはそれでも残った正当な後継者の志瑞司が『劇団STELLA』を設立するなど、宮司ではなく芸能関係の進路を選んだり。

そんな紆余曲折を経て完全に廃れて風化してしまった今は、標高は低いのにいつも雪に閉ざされ、外から来る者を拒み続けているとか、いないとか。


……以上、霧乃ちゃんの受け売り。


空くんが未留山に行くと言ったし、空くんの様子が普段と違って見えたので無理やり一緒について行くと決めた。

決めたし、実際にこうしてついて行ってるし、なんならはぐれないように空くんの手を握ってるんだけど……。


空くんはやっぱり、色々考え込んでる。


霧乃ちゃんから聞いた話とは違って、雪がちらほら見えるけど猛吹雪というほどではなく。いつもとは違って真顔のまま俯いている空くん。元々は神社や寺があったからか、どこか神秘的な空気。


異様な雰囲気に私まで呑まれそうになる。


けれど、私まで『日常』からズレてしまったらもう戻れない気がする。

かと言って今の空くんに話しかけても、『血まみれ事件』を解決して間もない頃の私みたいにマトモに人の話を聞けないだろうし。

空くんはそういう時、静かに私に寄り添ってくれていたはずだから、私もそういうふうにしてみる。


でも、ただ歩き続けるというのも退屈で。


……というか。

御厨さんがやっと見つかるって話だから喜ばしいのに、何でこんなに空くんの様子が変なの?変じゃない?

空くんが御厨さんや智見さんのことを嫌いなのは重々承知なんだけど、『嫌いな相手に会うから憂鬱』な態度とも思えない。

空くんって、嫌いな相手なら容赦なく釘をぶっ刺しにいくタイプじゃん。現に御厨さんや智見さんと前会った時は容赦なく釘を刺そうとしてたじゃん。まあ私を助ける目的があったけど。今日もそれと同じように立ち回ればいいだけなんじゃないの?


うーん。

……改めて考えると、御厨さんって何者なんだろう。

何考えて行方をくらませてたんだろう。態々智見さんに依頼を出させてまで私と空くんに自分自身を探させるし。


道中は暇だし、そもそも御厨さんのことを知らないことには空くんがここまで思い悩んでる原因が分からない。

御厨さんについて今まで見聞きした情報を纏めてみる。


『陰成室』の全権代行。

『預言者』なんて二つ名がついている。その所以は『ありとあらゆる全てに対して答えを得られる』こと。未来だって言い当てられる。

高校の頃は識名さんや霧乃ちゃんと同級生で学年首席。その頃から智見さんとは仲が良かった。……多分。

識名さんと霧乃ちゃん、現海さんと友人関係にあった。けれど、『歪み』の探索依頼でドタキャンした事がきっかけで決別。


……うーん。これだけだとやっぱり分からない。

今度は色んな人の色んな発言を振り返ってみる。


『調から、頼まれたのさ。『賽子で七を出したい。その器に私たちはなれないけれど、それが出来る存在を見出して導くことならできるはず。命懸けで、協力して欲しい』』


『賽子を一つ振り、七を出すんだ。それが出来なければ、神に、運命に挑む資格はない』


霧乃ちゃんに御厨さんが頼んだこと、そして御厨さんから空くんへの伝言。……そういや、まだ空くんにコレを言えてないなぁ。御厨さんに怒られちゃいそう。

それはともかく、『賽子で七を出す』ことに拘りがあるみたいだ。それが何を意味するかはまだ分からないけど。


『最適な温度で生きていく』


識名さん曰く、御厨さんはそれを金科玉条に生きているらしい。たしかに、識名さんや霧乃ちゃんを見殺しにするような真似をするなら、そうなんだろう。

……けど、なんか腑に落ちない。


駄目だ。識名さんからしか御厨さんのことを詳しく聞けていないから、識名さんの発言を中心に遡るしかない。でもこれじゃ判断材料が足りないし、何より『距離』が遠すぎて上っ面しか分からない。

もっと、もっと根本だ。


識名さんの昔話を始めから思い出してみる。


たしか、識名さんと御厨さんの出会いは高校進学の時。

現海さん、識名さん、霧乃ちゃん、御厨さんは同じクラス、近くの席だった。


ーーー違和感がした。


「……あれ?」


もっかい、もっかいリピートしよう。

現海さん、識名さん、霧乃ちゃん……つまり城月霧乃と、御厨さんが近くの席。

そして、あまり目立とうと思っていなかった識名さんは自分の苗字を恨んだ。


……おかしい。

苗字を恨むなら、出席番号は五十音順になっていたと考えるのが自然。

現海さんは分かる。『げ』から名前が始まるから。

識名さんと霧乃ちゃんが席が近いのもわかる。『しきな』と『じょうげつ』じゃたしかにそこまで遠くない。


けれど、『しきな』と『みくりや』が近いのはどうして?


しかも識名さんと霧乃ちゃん……『しきな』と『じょうげつ』の間に『みくりや』が入る形。


つまり。

御厨さんって、もしかして昔は『別の苗字』だった?


『御厨調、と名乗っている』


御厨さんが自己紹介の時に言っていたフレーズが脳裏を過ぎった。


そうだ。よくよく考えたら本当に変なんだ。

舞月さんも、識名さん以外は基本的に苗字で呼んでたはずなのに何故か『調』って呼んでたし。

空くんに至っては名前ですらない。『司書』ちゃんって役職名で呼んでる。智見さんも『智見くん』って呼んでたはずだから、好き嫌いじゃなくて、御厨さんだけ意図してそう呼んでることになる。


……うん?また違和感。


舞月さんは『繰り返し』をしてたらしいから、苗字が変わってることを知っててもおかしくない。


だけど。

どうして、空くんは御厨さんが『御厨』じゃないって知ってるの?


それに、識名さんだって。

『歪み』についてきて欲しいってお願いを私たちにした時、霧乃ちゃんの代わりが私だって言った。

それは分かる。霧乃ちゃんの後任が私だったから。

けど、御厨さんの代わりが空くんってどうしてだろう。

似ても似つかなくない?


いや。

心当たりが一個だけある。

私が御厨さんと初めて会って、契約で騙されかけて、空くんが助けに来てくれた時のこと。


御厨さんと空くんは嫌味の応酬に夢中だったけど。


私には何故か、姉弟喧嘩……いや、それすら通り越して最早弟を揶揄う姉という構図に見えてしまった。


……、……。

……!?


「ねえ、空くん」

「着いた」


居てもたってもいられず、その真偽を尋ねようと口を開いた私を遮るように空くんが呟いた。

ハッと辺りを見渡すと、正面に二人の男女。


……御厨さんと、智見さんが、敵意を瞳に宿して、私たち二人を見据えていた。

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