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残念ながら、僕達は  作者: 桜油
二部三章『リセット』
80/110

3-3

体調不良で死んでたら予約投稿を忘れてました……


本当に申し訳ありません。

舞月憩による世界史の授業風景です。どうぞ。

魔術が開発される前、実は『術式』なるものが存在した。

『術式』は血糖を代償に超常現象を引き起こす技術。

魔術よりも汎用性が高くて、バフデバフ、状態異常なんてものもあった。

ただ、ちょっと欠陥があってさ。

化学反応式で左辺と右辺が釣り合わない。だって、血糖すなわちグルコースって、炭素原子と水素原子と酸素原子が1:2:1の割合で構成されてる分子なわけ。炭素と水素と酸素しか使えないはずなのに、武器を作ったりとかできちゃったわけだ。

魔術もそれは同じ。ATPはあくまで窒素と原子とリンの集まりだからね。けれど、魔術は個人の『存在』する力で辻褄を合わせる術式だから問題なかった。いざとなったら自己責任だし、そもそもその『最悪』の前にATPがだいたい無くなるからね。

ところがどっこい、『術式』は違う。どっか別の場所から原子を借りてきちゃうんだ。原子を奪われた別の場所は辻褄を無理やり合わせるけど、限界が来ると一気に『歪む』。

歪むとどうなるかって?

『ここ』みたいになるんだよ。人は『人』じゃなくなるし、ご覧の通り空間は無茶苦茶。酷い有様だ。

まあ所詮人が開発した技術だから。仕方ないね。


☆☆☆


「はい!」

「はい、なんだね七世飛鳥クン」


私が挙手すると、舞月さんはノリよく私をあてた。


「所詮って……魔術も人が開発した技術ですよね?」

「たははー。歴史の教科書には確かに、『霧早快』って人が開発したとか書いてるよね。うん。私もここに来るまでそう思ってたけど、あれって嘘でもないけど本当でもないらしいよ?」

「えっ、」


そうなの?!

初耳な新事実に驚く私に、舞月さんは補足した。


「霧早快が発表したのは違いない。でも、入れ知恵をした『人外』がいる」

「入れ知恵……『人外』……」

「まあ、『存在』する力なんて人間はどうやって感知するの?って考えたら自明の理だよね。魔力とは何かって話がずっと学会で議論され続けて結論出ないし」


霧乃ちゃんが言ってた『神』とはその『人外』の事だろうか。


「納得したみたいだし、話戻すよ」


舞月さんが手を叩く音に、私は思考を中断した。


☆☆☆


『術式』のそんなとんでもデメリットに気づいた時には手遅れでね、世界はもう滅亡目前だったわけだ。

早くない?って思うでしょ。いやぁ、なかなかタチが悪くて、術式の使用頻度が高かったみたいだ。人一人を核として周りを歪ませる。核を殺さないと歪みに巻き込まれた人は皆戻らなくなるけど、核を殺したら、核が死ぬ以外は元通り。核を殺すには術式がいるから、術式を使って核を殺して世界を救う。その綺麗事の上で世界がまた歪んでまた核が生まれて……の繰り返し。やんなっちゃいそうだね?


で、あっけなく世界は滅んじゃいました。あちゃー。


……というわけでもなくて。

なんと、涙無しには語れぬ展開……話せば長くなるからそこは割愛するとして、とにかくそういうのがあって。

ある人……というかぶっちゃければ御厨愛知なんだけど。たった一人生きている『人間』の彼女が開発した、とある『術式』で世界は再創造されましたとさ。

……最後の最後、もう何も消えるものがない状態で使われた『術式』。

その代償はどこから支払われたのかは未だ謎。

けれど、確実に言えるのは、その成れの果てこそが『畢竟無』だってことだね。


御厨愛知は『術式』がない世界を願った。

だけれど、そこに横槍を入れた、何が目的かは分からないけど兎に角悪趣味な『人外』がいたから、魔術は生まれた。更に奇跡を……『過負荷』を植え付けようとした。

お陰で『実現の魔女』なんてろくでもないもんが生まれた。

『実現の魔女』を封印するだけでも人類は滅茶苦茶だった。国会が潰れて『軍』なんてものが爆誕するくらいには滅茶苦茶になった。

『過負荷』に抗う内に、特殊な力を持つが現れた。

それが『異常性』。『異常性』で、人は『実現の魔女』の封印に成功した。

けど、その封印も解けて、今度は世界丸ごとしっちゃかめっちゃかになった。

私欲……『愛する人の生存する未来』とかの為に『実現の魔女』を利用しようとした馬鹿のせいで世界が滅んで、その結果に満足できなかった『決意』所有者が記憶の限り再現したり、ちょっと歴史を組み替えたり、やり直しすぎて世界が収束してきたり。

最終的にこのループ地獄を終わらせたのは城月怜。君たちもよく知る『英雄』だね。

彼は『決意』所有者の『スワンプマン』で、


☆☆☆


「えええっ!?ちょっと待って!?」

「えー。こっからいいとこなのに」


舞月さんがぶすくれるけど、私はあまりにも衝撃的な事実でそれどころじゃなかった。


「え、城月怜……つまり霧乃ちゃんのひいじいちゃんが?『スワンプマン』?マジですか!?」

「そう。七世飛鳥とは主成分が『全く同じ』だよ」

「そうなんですか……」

「ちなみに城月怜がそうするに至った動機は至極単純。『大切な人と同じ空の下で笑いたかった』から。うーん、イケメン。これには御厨愛知も昔馴染みにそっくりでご満悦だったらしい」

「へぇ……!」


それは本当にかっこいい。

『決して嫌われない正義』はそこから始まったんだ。

……?

どっちかというと、その考え方なら『明白に嫌われた正義』のほうがピンとくるような。

うーん。私の解釈の問題かな?


まあいいや。『英雄』の考え方なんてもう知りようもないから置いとこうっと。


それよりも、霧乃ちゃんはコレを知ってて、私の事を『普通の女の子』って言ってくれてたのかな。

やっぱ霧乃ちゃんは素敵な親友だね。


「おーい。勝手に感動してるとこ悪いけど、授業再開するよ?」

「あっ、すみません。続けてください」

「それじゃあーーー」


舞月さんが切り出した瞬間、なんとなく、といった様子で舞月さんが一歩横にずれる。


うん?なんでズレたの?

そう思った途端、元々舞月さんが立っていたところの地面から、一本のあまりに大きい釘が突き出した。


「空くん!?」


そんなことできるのは空くんだけ。

彼の方を振り向けば、空くんはどこか殺気を纏っている。


「おいおい。あまりにも喋るから、ついつい手が滑って釘刺しにしちゃうところだったぜ」

「ふーん。私は良かれと思っただけなんだけど。秘密主義も大概にした方がいいんじゃない?」

「秘密主義とかじゃない。知るべき情報と知らないでおくべき情報があったとして、君のつまらない講義の内容は後者にあたるってだけだよ」

「本当にそう?こんなに正史からズレてるなら、私はとことんズレた方がいいと思うね。中途半端は良くないぜ?『敗北の少年』くん」

「えっ、えっと」


どうやらこの続きは空くんが私に話してくれてないことに抵触するらしい。

私はなんとかこのヒリヒリした空気を変えようと口を開く。


「舞月さん、ここまででいいです……ありがとうございました」

「いいの?」

「良いです。続きはいつか、空くんから聞けますから」

「だってよ。やっぱ教えた方が良くない?」

「もっかい、今度は最悪な方向に手が滑っていいならね」

「……」


空くんの返答に舞月さんはヤレヤレと言いたそうに肩を竦めて、空くんは全然目が笑ってない。

うーん、気まずい。


一触即発の空気。


そんな中、識名さんが身動ぎしたのでその空気が緩くなった。

ナイスタイミング。これは識名さんが起きるかな?


「ん、」


そして、私の予想は当たり、識名さんは瞳を薄らと開ける。


「ここは……?」


ぼんやりと焦点が合わない目で宙を眺める識名さんを覗き込むように、舞月さんがずいっと顔を近づけた。


「やっほー、佳糸。調子はどう?」

「って憩さん!?」


あ、飛び起きた。

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