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残念ながら、僕達は  作者: 桜油
二部二章『歪み』
76/110

2-9

こんにちは。

識名視点回想

☆☆☆

識名視点現在

みたいな感じです。

『オレは、このクソみたいな世界を少しでもマシにしたい。世界中噂になるくらいとびっきり弾けてるお前らとなら、変えられるかもしれないな』


まだ調、霧乃と楽しくやってた時、放課後の夕焼け差し込む教室で、現海はそんなことを言ってた。


『はは。別に世界変えるとか噂になるとかどうでもいいよ。最適な温度だから一緒にいるだけ』


傍で調はそう言った。

それを聞いて、うちは誇らしかったんや。諦めなくてよかった。仲間になれた。霧乃や調と同じ土俵に立てたんや。熱しにくく冷めやすい調も仲間と思ってくれとるって。

なのに。


『なんとか確保できたこの依頼なら、『混沌』の手がかりを必ず得られる……』

『じゃあ行くしかないね。今んとこ、やばいなんて預言降ってきてないからきっと大丈夫』

『明日、10時に桜坂駅集合でええか?』

『うん。よろしく』


交わした約束は果たされなかった。


『調は、なんで、……っ、なんで!うちらのこと、見捨てたんや!?』

『仕方ない。最適な温度で生きていくのに、私たちは要らなかった。そういうことだろう』

『霧乃はなんで割り切れんの?うちは無理やで、だってうちらの末路知っとったはずやん。ちょっとでも情があるなら、教えてくれたってええやんか!』

『切り捨てる必要があった。それだけだ』

『はぁ……?うちらの関係って、そんなあっさりとした、呆気ないものやったんか……?』


それを認めたくなくて、ただ現実から、過去から目を逸らして、背を向けて、自分の不都合を一切信じないようにして、ずっと調を恨み続けてしまった。


『佳糸。私は、志瑞空と七世飛鳥こそ、私の夢を叶えてくれると確信したよ』


気づけば霧乃は、調だって、うちの知らん何かを見とった。


『だからさ、親友。お願いだ。2人を、どうか未来まで繋げて、その結末を見届けてくれ。佳糸ならきっとできる』


そうして、うちはまた『独り』になった。


なんでやろなぁ。ずっと一緒やったはずなのに、いつから置いてけぼりになってしもたんやろか。

調がドタキャンした時?

調が『預言』のことを打ち明けてくれた時?

どっちにしたって、うちが『混沌』とかなんとかとは本来無縁な立場やったから、最初から詰んどったんかもしれへんな。


というか、ホンマに霧乃たちには志瑞たちが何に見えとんねん。

確かにちょっと個性的かもしれんけど、凡そごく普通の、両片思いしよる少年少女ってだけやんか。そんな輩に何を無責任に託そうとしとんねん。アホやなぁ。自己中ばっかや。


霧乃も霧乃でズルいわ。『親友』なんて縋られたら、ちゃんと叶えてあげたくなるやんか。うちの本当の心……『3人で一緒にバカやりたい』なんて知りもせんし叶える気もあらへんくせに。酷いやっちゃで。


そんで調。『最適な温度で生きる』とか言うてたのに、うちらを裏切ってからのあんさんは、なんや寒そうやで。素直になったら、きっと『最適な温度』に戻るで?そっちの方が楽でええやん、なぁ?


憩さんも勝手に消えては勝手に裏に入って、そんでまた勝手に消えたし。ほんま、うちの周りはどないなっとんねん。死にたがりばっかりなんか?生きて見届けようって覚悟のほうが大事やろ。困るわ、死ぬ覚悟ガンギマリでホンマに死ぬバカは。


そんなんなら、うちにも考えがあんで。

とりま、あんさんらの覚悟は無駄にはしいひん。この世界の結末を見届けたるわ。

そんで、『最適な温度』……普通にいい人見つけて、普通に結婚して、普通に子宝に恵まれて、普通に幸せな老後を過ごしたる。現海が頑張っとんのを眺めながら、たまには手伝うねんけど。

それを天国とか地獄とかから、『きーッ!』て悔しがって見とればええわ。うちが死んだら、『本当は一緒が良かったんやけどなー』って恨み言言ってから、マウント取るように色々話すんや。

『ほれみたことか!』ってな。

面白そうやろ?


……だから、もうちょい気合い入れて頑張るわ。

年始くらいに七世から聞いたことあんねん。『覚悟』とやらで魔力を補えるとかなんとか。

何言うてんねんこいつとか思っとったけど……今がその使い時やんな。

『超加速・裏』……もっと先の未来、見るのに使うで。


え、うちも十分馬鹿?

そうかもしれへんな。あんさんたちのせいやで?

でも、うちは死ぬ気さらさらあらへんから。悪しからず、やで。


☆☆☆


ぼーっとしてた。

意識が飛んでたんかも知らん。

そりゃそうや。今まで一秒間だけの情報で済ませとったのに、急に五秒先の未来まで見ようとしたら脳がショートするに決まっとるやんな。血糖不足やから尚更。アホやな、うち。


……『超加速・裏』を多用し始めて、果たしてどのくらいの時間が経ったやろか。

いや。ここの時間の流れは特殊やから、もしかしたら現海が心配しよるかもな。神隠しが何とかって、必死にうちら三人を探しとるかもしれへん。

せやったら……現海になんも言わずに出かけたんは、悪いことしたなぁ。一言くらい伝えとくべきやったか。でも国を背負っとるのに更に重荷持たすのも嫌やから、これでええのかも。


そんな話は置いといて。

そんな無茶したせいで、せっかく見た未来まで吹っ飛んだわ。欲張るもんやないね、反省反省。

一応理由はある。今まではなんだかんだ『魔力撃』っぽい攻撃のワンパターンだったのに、『御厨』が複雑な魔法陣を、これでもかと時間をかけて展開し始めた。

志瑞が色々仕掛けてもなんも変わらんし、何を企んでんねんって一秒先だけ見て、まだ分からんかったからもっと先を、と思った結果が今。

うちが意識飛ばしてたのは一瞬。今なら三秒くらいでなんとか先は見れそうやな。


改めて『超加速・裏』を展開すると、あっさり視えた。


既にヒビだらけだけど憎たらしいほどに澄んだ翡翠の視界に、……核爆発が起きて、この辺が更地になる未来。


「は……?」


核爆発?それ、もう魔術の規模やないやん。

いや、魔法陣の中でも魔術と比べたらアホらしくなる効果は沢山あった。猛毒に侵されたり、心が組み替えられてしまって理性を喪ったり、神経がイカれて微塵も動けなくなったり。

それを見る度、何がなんでも回避させてきたけど……こればっかりは回避じゃどうにもならない。


「アカン。これが起動したらなんもかんも終わりや!何がなんでも起動させたらアカン!完成をなんとしてでも阻止せな!」


うちの言葉に、志瑞が釘で魔法陣を刺そうとする。

『御厨』は志瑞のやろうとしていることを読んでいるらしい。器用に魔法陣を守りながら応戦している。

ええわ。そうやって気を逸らしてもらえるなら、こっちで何とかするしかあらへん。


残り三秒。

『超加速』を三倍指定で展開。うちの感覚を三分間に引き延ばす。『身体強化』で直ぐに魔法陣のすぐそこまで駆けつけ、魔法陣に介入をしようと指先を向ける。


残り二秒。

魔法陣はとことんうちの知ってる魔術のシステムの規格外らしい。全然こっちの干渉を受け付けん。魔法陣をぐちゃぐちゃにすることは出来ひんようや。早々と見切りを付けて、なんとか壊す方向にシフト。『魔装』でナイフを生成し、只管に切りつける。


残り一秒。


「消えろ、消えろ、消えろ……っ!」


何回直接切りつけても、なんも乱れてくれやしない。

ただ、そこに魔法陣が展開され続けるだけ。

嫌や。諦めたくない。うちは生きるんや。こいつらも生きて返すんや。誰も置いていきたくない……!

だから、


「こんな理不尽、消えろやあああああああああああああああああ!!!」


残り、ゼロ。

『超加速』、解除。

それと同時に、無慈悲に、魔法陣が完成する。

激しい熱風が、轟々とした炎が、放射線が。


……『御厨』のみを包み込んだ。


「……え、あ?」


……うちが視た未来と、違う?

全く違う結果に口をあんぐり開けて、思わず固まること数秒。何とか状況を呑み込むことができた。


『障壁』魔術を『結界』のように展開して、『御厨』だけを包囲したんだ。

うちにそんな余裕はない。うちが展開したとしても簡単に割れていたはず。

志瑞は魔術に関する知識はあるけど、魔術を使えない体質だから有り得ない。

……自ずと、答えは出た。


「七世……?」


七世のいた方向を見ると。

産まれたての子鹿のように足を震わせながら、涙をボロボロと零しながら。

それでも、戦意を喪失していたはずの七世は、『御厨』をしっかり敵意を込めて睨みつけていた。

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