2-6
こんにちは。
ダイパプラチナ世代、それ以上でも以下でもない(空集合)作者です。
飛鳥ちゃん視点に戻ります。
本編どうぞ。
「ーーー以上やな」
「ええっ!?」
霧乃ちゃんと識名さんが仲良くなっただけなんだけど、もう終わり!?
識名さんの宣言に私は思わず不満を漏らした。
識名さんは苦笑いして、「でもなぁ、あと話す内容ってそんな中身ないからしょーもないで?」なんて頭を掻いた。
「しょーもなくなんかないでしょ!御厨さんとか、現海さんとか、まだ未回収なとこ多すぎだし!」
「調は『ふふふ、面白そうなことしてるね』とか言って近寄ってきたし、現海は『なんか雰囲気ちげーけど。なんか良いことあったか?』って聞いてきて、霧乃から話を一通り聞いた後にうちに『加速』の魔術の論文くれたやで。うちは『加速』の魔術式スクロールはあっても、直系の子孫やあらへんからな。ほんま助かったわ」
「それだけ!?」
「せやな。霧乃みたいに決定的な何かがあった訳じゃあらへん。なんや自然とうちに話しかけてくるようなってたな。まあ、でも、普通はそんなもんやろ」
「は、はぁ……」
学校に行ったことないからよく分からないけど、そういうものなのかな?
頭に疑問符を浮かべる私に、「まあ、二人ともそんなん知らんやろけど」と識名さんが苦笑いを浮かべた。
「主に調がいかれとったなぁ。智見は当時生徒会長やってんけど、パシリにしとったで。あいつもヘコヘコして調についていきよったあたり、昔からそういう関係だったんやろうけど」
「ああ、昔からなんですね」
「時々未来予知とか占いみたいなことして当てとったからカンニング疑惑が出て、疑ってきた全員グラウンドに埋めた事件もあったなぁ」
「えぇ……」
「その時にうちと霧乃、現海はそういうのしょーもない思うて、特になんも言わんかったんよ。……まあそれでもその洗礼を受けてたんやが」
「しかもとばっちりじゃないですか」
「さすがに埋まるのは勘弁やし、改良済みの、低倍率の『超加速』の略式で避けたら目ぇつけられたわ」
ここから識名さんと御厨さんがどうして仲良くなれたのか、やっぱり分からないんだけど。
識名さんはさらに続ける。
「正直仲良くする気は更々無かったんやけど。魔術を更に改良していった結果なんか知らんうちに万年学年3位になってたり、真夏の学校の帰り道に熱中症対策しよう思って毎日ファミレス寄って水だけ飲んでたら出禁食らったり、『紅蓮』を改良してみたから運用実験しようって霧乃に誘われて行ったらただの小麦粉使った粉塵爆発で、よりによって校舎内でやらかしたから怒られて逃げたり、論文コンペで調の論文手伝ったはいいものの本番で一番先頭の人の顔がおもろいからって爆笑しとったせいで大失敗したり、まあ色々あったで」
「待って待って、濃すぎる!エピソード一つ一つが濃すぎて何も頭に入ってこない!」
「なんでや。もっと語れ言うたのは七世やんか」
「確かにそうだけど!」
「ちなみにうちのコネ入学はファミレス出禁の時に憩さんが呼び出されたことでバレたわ。もうやいのやいのと言われへんようなってたけど、『もっと上手く立ち回ろうよ』って言われたんは納得できひんわ。何でや、そこは怒るとこちゃうやろ」
「えぇ……」
反応するのも疲れた。
ちなみにこの話を一緒に聞いてるはずの空くんはいつも通りのニコニコ顔のままだ。『まあそういうこともあるよね』って今にも言い出しそう。
「まあ魔術師なんてそういうもんだよね」
言った。
……嘘だと言って欲しい。それとも裏ならこのくらいイカれてて当たり前ってこと?
「そんなこんなしてる間に、霧乃や調が隣いて、現海もうちを囲んできて、時々智見もひょいっと顔出す感じの、平凡ちゃうけどなんや充実した毎日が、当たり前になっとったわ」
「……そうして、霧乃ちゃんが『依頼』一緒にやろうって誘ったんですか?」
「せやで」
識名さんは頷き、「さて、」と懐かしそうな表情が神妙なそれへと一変した。
「着いたで。ここや」
「ここ?」
識名さんが指す方向を見て、私は言葉を失った。
ドーム型の、見るからに悍ましい様相の結界。
一年前にこの三人で挑んだ依頼『ロスト』でも見た光景がそこにある。
ただ、全く同じというわけじゃなくて、『ロスト』の時は高校を覆える程度の規模だったけど、どこが境目かさっぱり予想もつかないほど、遥か彼方まで広がっている。
「な?『歪み』としか言いようあらへんやろ」
「そうだね。識名ちゃんが『ロスト』に着いてきたのも、『コレ』が理由かい?」
「その通りや。『ロスト』について調べたら少しは『コイツ』もわかるか思ったけど、結果は同じでも原理がちゃう感じがしたから参考にならんかったわ。『混沌』の一部ではあるやろうし、無駄足とは言われへんけど」
「まあ、そうだろうね」
「そもそも、七世がこれ系統の『依頼』に自分で対処する為に保留しとったことに驚いたで?七世は何も知らんはずとちゃうの?」
「その筈なんだけど……飛鳥ちゃんの勘って凄いんだよ。ところで識名ちゃん。今回も同じように『釘で刺し』てみる?」
「……それは最終手段やな。ほな、行こうか」
開いた口が塞がらない。
呆然とそれを眺める間に、識名さんと空くんとで話が進んでいた。
識名さんは散歩をするノリで、空くんもそれに続いていってしまう。
「えっ、あ、入るの!?この中に!?」
「入らなしゃーないやろ。なんや、ビビったんか?こっから先は死地やから、覚悟ないなら引き返した方がええで」
「飛鳥ちゃん。そういう訳だから、君はここまでの旅費をパチンコで稼いできたらいいよ。もしくはここの攻略法をパチンコしながら探ってくるか」
「えっ、その話今するの!?行きます!行きますから置いていかないでぇ!」
空くんと組んだ当初は独断で行動したりパチンコで情報収集しようとしたりで確かに散々な出来だったけど、黒歴史だからつつかないでほしい。
当時のアレは、未だに、ふとした瞬間に思い出しては羞恥心で叫びたくなるくらいなのに……!
慌ててあとをついていくと、中はもっと奇妙だった。
地面は只管白い。
見渡す先は地平線の彼方まで真っ黒。
見上げるとついさっきまでいた地上が鏡移しのように見える。
潮彩郡御城町はかなりの過疎地域だったはずで、たしかに田舎らしく田んぼや畑、川、森らしい所もあれば、何故か大都市でしか見ないような高層ビル群が立ち並ぶ区域も混ざっている。
上下感覚が分からなくなりそうなほど、あれは右向き、これは左向き、それは逆さになっているなど、あまりにもしっちゃかめっちゃかな構造だった。
うーん。たしかにこれは酔い止めが欲しい。素直にひとつ舐めた。レモン味で美味しい。
「相も変わらずカオスやなぁ。とっ散らかりすぎやろ」
「まるで色んな町が収束されてぐちゃぐちゃに合成されたって感じだね?忘れ去られた……というか、『無に帰した』場所を無理やり再現しようとした寄せ集めに見える」
「なんや詳しい感じやな。やっぱ何か知っとるんか?」
「さあ?」
「……」
識名さんがうげぇと顔を顰めていて、その横で空くんが色々感想を喋っている。
『さあ?』って、なんか誤魔化してるような気がするなぁ。私が『恩人』を探して空くんに色々聞いてた時と同じ感じがする。
空くんって隠し事はするけど嘘はつかないんだよね。
識名さんも空くんがはぐらかしたと思ったのか、彼にジト目を向けた後、気を取り直して、勝手知ったる街のようにタタタッと先を歩いていく。
「魔物がうようよいるんじゃなかったっけ?」
「せやけど、霧乃と一緒に突入した時点である程度倒したんや。そんな居ないはずやし、いてもそんなに強ないんとちゃうか?」
「はぁ」
たしかにほぼ人気がない。
若干戸惑いつつも、識名さんの動きを手本にして進んでいく。
そうして奥へ、奥へ。
時々壁を歩いたり、滝を上って下に潜ったり、森が消えたり現れたりするせいで迷子になりかけたり、まあそういったことがありながら順調に歩みを進めて。
そして、あっという間に。
最奥まで、辿り着いた。




