1-8
こんにちは。
もう1月が終わっちゃいましたね。あっという間です。
2月、3月もすぐ終わるんだろうなぁ。
本編どうぞ。
「は、拒否権あると思ってんの?」
私の態度の変化に、宗任さんの視線はより一層冷たくなった。
「やれやれ。馬鹿もここまで極まると、滑稽を通り越して不快だね。大人しくボクの言うことに従えよ」
「生憎、私はそこまで献身的になれそうにないからね」
「というか面白い冗談を言うんだね、宗任ちゃん。自分だって、自分を犠牲に世界を救うとか死んでもごめんだろうに」
私と空くんがそう言うと、宗任さんは心底呆れたような顔でため息をついた。
「あっそ。……その馬鹿さ加減を、精々あの世で悔いてなよ」
宗任さんはそう吐き捨てると、足をとん、とんと二回鳴らす。
すると、私達の周りで風が通ったように感じる。
特に影響はなかった。
けど……多分、これは『魔力撃』。
魔術式が見えなかったけど、脳内で略式を展開、起動したのか。
どんな研鑽を重ねて、そんなことできるようになったのやら。識名さん然り、宗任さん然り、周りの『才能ない』って言ってる人は全員、自己肯定感が低すぎやしないかな?
あーあ。本当、いろんな意味で厄介すぎる!
辟易する私をよそに、空くんが宗任さんへ一気に距離を詰め、そのままブローチめがけて釘を振りかざす。
しかし、がギン!という鈍い音を立てて、その釘は宗任さんから弾かれた。
「うん?」
「っ、『障壁』魔術!」
まさかそんなものまで同時に展開してるなんて!
というか、『異常性』のほうが優先度上のはずなのに、どうして……いや、それこそ現海さんが言っていた『覚悟』で魔術の優先度を上げている……?
『教会』の禁書を呼んだなら、宗任さんが知っていてもおかしくない。それに『生きたい』覚悟が人一倍だから、効果覿面なのか。
……でも、それなら。
攻撃を弾かれた空くんは、動揺することなく、「ああ、」と頷いた。
「なるほど。これは確かに、そんじょそこらのポンコツ魔術師には傷の一つも負わせられないだろうね」
「……」
「だけど、」
空くんはそこで言葉を止める。
宗任さんが首を傾げる中、私は『身体強化』を起動、展開し、彼へ蹴りを繰り出した。
そうーーーそれなら、その『障壁』を壊せばいいだけの話!
「ありゃ。君も加わるんだーーー良いけど」
しかし、その蹴りは弾かれる。
振り向きざまに懐に隠し持っていたナイフを咄嗟に構え横に薙ぐけど、服に傷の一つも入ることなく逸らされる。
「壁、結構しぶといね!」
「いいよ飛鳥ちゃん。この調子で壁を割ろう」
「うん!」
「その前に君たちがくたばると思う、な」
宗任さんが今度は指を鳴らしたのと同時に、また空気が揺れ、風がさわ、と動くのを感じる。
ほぼ反射で『障壁』を展開すると、予想通り『魔力撃』が『障壁』にぶつかって消えた。
空くんもなんとか無事に躱したらしく「おいおい、ちゃんと狙わないとダメじゃないか」と煽りながら釘を振り回す。私もその隙間を縫うように蹴りや殴りを繰り出していく。
宗任さんはそれを器用に、顔を傾けたり、一歩横にズレたり、体を逸らしたりして避ける。
「そういう割には君たちも攻撃透かしてるじゃん」
「くっ、」
「大丈夫だよ。攻撃し続けるんだ」
「めんどくさいなー。そろそろ終わりにしようか」
瞬間、今まで全く魔術式を見える形で展開しなかった宗任さんの周りに急遽、尋常じゃない数の魔術式が展開される。
ーーー大規模魔術だ!
「危ないっ!」
『障壁』を瞬時に空くんと私の分で展開すると同時に、禍々しい色をした『魔力撃』のビームがその『障壁』に直撃する。こんなの当たったら絶対跡形もなくなってる……!背筋が凍る。冷や汗が流れる。
「ありがと」
空くんがそう言いながら、再び宗任さんへ釘を刺そうと振りかざす。変わらず弾かれたり、避けられたりする。宗任さんの位置が全然動かない。
……うん?
よく見てみると、空くんの攻撃を躱そうとして反応しきれてない。もちろんそれは弾かれてるんだけど、若干焦ってるように見える。
もっと注視してみると、罅がちらほらと。
……なるほど。つまり、捌ききれないくらい素早く、威力高めのをぶつければ割れそう、かな?
『身体強化』を複数起動しながら突撃する。
宗任さんは空くんの釘を避けるのに手一杯で、私のことは意識してなさそうだ。これなら当たる!
これでもかというほどふんだんに『身体強化』を重ねがけし、助走の後に大きく跳ねた。
いち早く気づいた空くんが、軌道を読んで開けてくれた上に釘を振り回して私の姿を見えにくくしてくれる。
「隙ありィ!」
「な、『障へ』、がごばっ!?」
私の不意打ち飛び蹴りが見事に鳩尾にクリーンヒットし、『障壁』の割れる音が辺りに大きく響く。そして宗任さんが大きく吹っ飛び、壁に強く叩きつけられる。
「かは、は、は、血、が、『回ふ』、ごぽっ、」
ただ、まだ意識があるらしい。宗任さんはギギギとぎこちなく立ち上がり、喀血していた。喀血が酷すぎて、魔術を展開できないみたいだ。
そのまま『魔力撃』を起動しようとしたのか指を鳴らしていたけど、魔力が乱れているのか何も攻撃が飛んでこない。
「やった!あともうちょっと!」
「宗任ちゃん、」
喜ぶ私の後ろから、空くんが釘を構えて走り出す。
「そんな生き汚い生き方をしたって無駄だぜ?この世に『ようさん』がいる限り、人は無価値で、無意味な生き方しかできないんだから」
なんとか体勢を立て直した宗任さんがまた指を鳴らす。
空くんは釘で『魔力撃』を弾いた。さっきまで素早かった攻撃が、今はとんでもなく鈍く見える。
再度指を鳴らす。見当違いな方向に飛んで行った。
また指を鳴らす。一応私にまで攻撃は飛んだけど、ちょっと虫に刺されたくらいで全然傷ができないから、対処するまでもなかった。
そしてまた指を鳴らそうとして、魔力が尽きたのか、さらに吐血した。
失敗を重ねる毎に、宗任さんの顔色は段々と青白くなっていく。
空くんは、宗任さんのところまで辿り着いて、釘を構えた。
「大丈夫。君が消えたとしても、君がいたという事実は永遠のものだから」
「や、やめ、」
「僕は悪くない。君が悪くて、いい気味だ」
そう言って空くんが釘を深く宗任さんの身体に突き刺すと、宗任さんは声にならない絶叫の後に、がくり、と力なく倒れた。
少しして、ピクリとも動かないことを確認した私は、空くんへと歩み寄った。
「……空くん、お疲れ様」
「飛鳥ちゃんもお疲れ」
空くんは宗任さんから視線を逸らすことなく返事した。
やがて、私は空くんの隣に並んだ。
「あんなに驚かさなくたっていいのに」
「何のこと?」
私の言葉に空くんが惚ける。
けど、「だって、とどめを刺す気はないんでしょ?」と続けると、あちゃー、という顔になった。
「バレてたかー」
「まあ、トドメを刺さないでくれたほうが、情報は抜けるから良いけど。何で?ああいうのって、空くんは容赦しないタイプだと思ったんだけど」
「それこそ、釘を刺しても意味が無いからだよ」
「……?」
よく分かんないこというなぁ。
思わず疑問符を浮かべた私に、
「まあ、だから、トドメを刺さないと言うよりトドメを刺せない、が正しいね」
なんて言って、空くんは宗任さんの影に釘を刺す。『影縫い』で起きても身動きが取れないようにして、尋問するつもりだと思う。
私は首を傾げつつ、とりあえずブローチを回収しようと手を伸ばす。
あれだけギラギラ光って嫌な超音波を発していたブローチは、今はうんともすんとも言わない。宗任さんも全然動く気配がないし、今なら簡単に取れそうだ。
そして、そのブローチに指が触れた。
不思議な感触だなぁ。宝石のはずなのに、人肌ほどに温かくて柔らかいーーー、
ーーー瞬間、悍ましい程の悪寒。
「っ!」
思わず反射と生存本能に任せて、空くんの手を引いて『身体強化』で後ろへ飛び退く。
「飛鳥ちゃん?!」
「ごめん、空くん……急に引っ張っちゃって、」
未だに心臓がバクバクいってる……。
恐る恐る、ついさっきまでいた、宗任さんのすぐ近くを確認すれば、ブローチから、人を2、3人は余裕で覆えそうなくらい巨大な肉塊が展開されていた。
拳を象っていたそれは、誰もいない空間を握り潰している。
……でも、『ダークマター』製だとするなら、人がそこにいたらきっと……ミンチに成り果てていたはず。
つまり、避けてなかったら今頃……ああ、すごくゾッとする。
空くんを見ると、特に気にしてなさそう?
あまりにも落ち着いてるから、私まで落ち着いてくる。ビクビクしてる私が馬鹿らしくなって、安心できる。
そっか、そうだよね。結果オーライだよね。
深呼吸で、吸って、吐いて……よし、落ち着いた。
ふと、思いついたことを口にしてみる。
「空くん。『釘を刺しても意味が無い』って、もしかしてアレのこと?」
「結果的にはそうなるのかな。いや、ただ、僕もコレは予想外だ」
「そうなの?」
「うん。宗任ちゃんの発言から、もう既に擬似的な不老不死になってる可能性は高いと思ってたんだ」
「へー」
宗任さんの台詞だけでそこまで分かったんだ。
やっぱり空くんって凄いなぁ。
やっと肉塊がブローチに仕舞われたのを確認してから宗任さんの傍まで戻り、今度は直接触れないように縄で縛る。そして、宗任さんを尋問すべく、起きるまで待ち始めた。
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X垢 @IjiGamerR




