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残念ながら、僕達は  作者: 桜油
二部一章『ドッペルゲンガー』
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1-5

こんにちは。

まえがきに書くようなネタ何も無いなぁ。

本編どうぞ。

宗任さんの『お出かけ』は本当にあてどなく、ただブラブラと御仲市を散策するだけだった。


「まずここ、御仲市立大学!ボクの出身大学だね。いっつも定員割れしてるのに高偏差値しか入れないとかいう酔狂なところさ。もはや笑えるくらい赤字なのに、まだ潰れてないらしい。多分成金が運営してるって勝手に推測してみる。自称ガリ勉の学歴コンプが多くて、つまんないとこだったよ」


この通り、生まれ育った故郷の紹介にしては、とんでもない毒舌だけど。

というか周りに学生さんもいるのに大声でそんなこと言ったら、なんてヒヤヒヤと周囲を確認してみる。……ああ、やっぱりすっごい睨まれてる!


「いつか刺されますよ?」

「え、ボクに危害を加えられるの?だれが?どうやって?ないない、絶対ありえないから。中々面白いこと言ってくれるじゃん。笑わせてもらうね?」

「ええ……?」


周りの視線が痛くて抗議しても、鼻で笑うばかりで全然聞く耳を持つ様子のない宗任さんは、背後を警戒する様子もなく大学を後にする。

いや、まあ、最悪、宗任さんが背後から刺されても、今宗任さんに倒れられるのは困るから、私たちが助けるけどさ。それにしたって無頓着が過ぎると思う。


宗任さんの煽り?は続いた。

たとえば高校。


「新央高校だよ。新しい中央とか言ってるけど、桜坂市の方が十分『中央』らしいよね。うん、こんな辺鄙な片田舎の分際で都心部ぶってみるとか、痛いよね?香ばしいよね?ボクにとっては生き地獄だったなー」

「じゃあなんで選んだんですか。最初から桜坂市の高校に行けばいいのに」

「え?新しい中央とやらの顔を拝んでやりたかっただけどけど?」

「はぁ……」


たとえばショッピングモール。


「ここ『ルーン』っていうとこなんだけど、なかなか寂れてる上になんか臭いでしょ?国道沿い、しかも歩行者は疎か対向車線の車すら入れないとか舐めた立地してるから、あっという間にテナントが潰れてやんの。スーパーとたこ焼き屋さんが生き残ってんのマジで意味不だよね」

「なんでこんな辺鄙な所に……」

「さあ?ボクも知らないよ。この街は舞月財閥とか桜坂市に変に対抗意識持ってるから、財閥に頼らず町興しをしようとしたけど金が足りなくて、いい感じの場所を取れなかったんじゃない?ボクはプライドでご飯なんか食べられないんだし、その辺の見栄は犬に食わせとけばいいと思う派だね。その辺の価値観は街の運営してる人とボクとじゃ合わなそうだ」

「は、はあ」

「飛鳥ちゃん、そろそろお腹減ったし適当にたこ焼きでも買っとく?」

「そうね。そろそろお昼ご飯くらいだし、美味しそうな香りだし、そこのでいっか。……あのー、たこ焼き、二人前ください」

「待った。……ボクの分もついでに買っといてよ」

「はあ?アレだけ扱き下ろしといて食べるんですか」

「だって安くて美味いし。食べ物に罪は無いし」

「……たしかに。店主さん、やっぱ三人前で」

「あいよ」


たとえば無人駅。


「じゃじゃーん。一応、こんなナリだけど駅だよ。各駅停車しか止まらないけど」

「無人駅とは聞いたし、さっきこの駅使ったんだけど……改めて見ると、随分と寂れてますね」

「そりゃそうだよ。券売機兼チャージ機を撤去しちゃったもん。乗り過ごし精算もできないから、終電で残高が足りない人はここで一晩過ごす羽目になるね」

「うわー。ブーイングの嵐だったんだろうなぁ……」

「でも、駅はそれに応えてくれたよ。なんと、泊まりやすいように寝袋と非常用の食料、飲料を完備してくれるようになったんだ!」

「的外れ過ぎません?」

「そう。もちろん炎上したよ」

「でしょうね」


そんなこんなで、あっという間に夕暮れ時になった。

影が東に長く伸びて、茜色の西日がきつく、辺りが少し薄暗くなってきたのが、人気の無い通りと合わさって物悲しい雰囲気になる。


「まだ終わらないんです?」

「えーっと……うん、ここでいっか」


私の質問はスルーしながら、宗任さんがそう言って立ち止まる。

立ち入り禁止のテープが貼ってあること以外、何の変哲もない公園だった。


「ここはなんで立ち入り禁止なんですか?」

「元々は御仲市って住宅街みたいなとこだから、この公園には色んな人が集まっててさ」

「……?」


批判からじゃなく、普通の思い出話が始まった……?


「勿論、遊具は沢山あったし、ボール遊びとか色々遊んでる子どもばっかりだったよ。ベンチとか、桜の木とかもあるから、お年寄りとか親御さんとかもそこに腰掛けてその様子を見守って、みたいな。結構長閑なところだったね。懐かしい」

「……」

「何も考えず、人が乗ってるブランコに背中を向けて座り込んで、頭を強打して生死の境を彷徨うガキがいなかったら、きっと、憩いの場であり続けたんじゃない?」

「……だから、立ち入り禁止に?」

「うん。勿体ないことしたよね」


たはは、なんて笑う宗任さんは、今までの様子とは違って寂しそうに感じた。

けど、それも一瞬のこと。


「まあ、そんなボクのノスタルジーはどうでも良くって。一つ、問題です」


そうおどけてみせた宗任さんは、今まで私と空くんに背を向けていたのを振り返って、私たちと向き合った。


「都会を目指そうとして寂れた街、御仲市。なんだかんだ人はいたでしょ?」

「うん」


『ルーン』の店主さんとか、なんだかんだそこに買い物に来てるお客さんとか、学生さんとか、無人駅を使ってた乗客とか。

色んな人を見かけたから、私は素直に頷いた。

空くんは神妙な顔を浮かべていた。


「じゃあさ、」


宗任さんは私の回答に笑みを浮かべた。


「どのくらいの人が、『ちゃんと』人間だと思う?」

「……それは、どういう?」


私の問いに、「質問を言い変えようか?」と笑みを崩さないまま宗任さんは続けた。


「どのくらいの人が、『ヒトモドキ』かな?」

「……」


『ヒトモドキ』。

つまり、人間じゃない。

……どっからどう見ても人間しかいなかった。


「そんなことあるわけ、」

「あらやだ七世飛鳥ちゃん!他でもないキミがそれを言っちゃうの?そんなのボクは認めないぜ?」


私の回答に宗任さんはケタケタと笑う。


いや。

たしかに私は、『人間にしか見えない化け物』を知っている。

他でもない『私自身』こそが『そういうもの』だと知ってるけど、それを知ってるのは空くんと私だけのはずで。


否、否。

空くんは確かに言っていた。

空くんの前任者にあたる人こそ、宗任さん……!

だから、宗任さんなら私の『ルーツ』を知っていたって可笑しくない、むしろ『知らないとおかしい』!


「やっと分かったかな?」


宗任さんはくつくつと笑う。


「さてさて、今から語りますは朝にした『禁書』に記された、一人の男の『野望』。そして、最近巷を騒がす『血塗れ事件』の事のあらまし。……ボクに最後までついてきてくれたお礼に教えてあげるから、是非、ゆっくり聞いていってね」


そんな宗任さんの顔は、夕日の逆行のせいでよく見えなかった。

よろしかったら、ブクマ、感想、評価などいただけるととても嬉しいです。

何かありましたら、こちらまで。

X垢 @IjiGamerR

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