1-3
こんにちは。
自宅でチワワを2匹飼ってますが、寝てる最中にペロペロされて睡眠妨害を受けるなどチワワハラスメントが酷いのでしんどいです。
そんなことは置いといて、本編です。どうぞ。
『協会』本部は、厳かだ。
ゴシック建築の大聖堂にパイプオルガンのクラシック調な音楽がBGMに流れ、ステンドグラスや高い天井、そして『協会』も古くから続く魔術組織としての歴史的背景がその雰囲気を高める。
一世紀ほど前に当時の全権代行、有栖大登が改革を進めるまで『教会』と名乗っていたらしいし、その名残でこんな様相なんだと思う。
空くんも少し感心した様子で周囲を確認すると肩を竦めた。
「うーん、圧巻。教会って教徒じゃない人には敷居が高いイメージあるよね」
「それはそうだけど、匂坂さんのこと調べるには色々見て回るしかないじゃん」
「もちろん最終的にはそうするけど、聞き取り調査もやってみる価値はあるぜ?」
「あー」
シスターや神官のような服装をラフにしたような制服を身に纏う魔術師が頻繁に出入りしているし、たしかに色んな人から話が聞けそう。
「ついでに御厨さんの件もなにか分かったりしないかな?」
御厨さん率いる『陰成室』は『協会』とも関係が深いし、少しくらい情勢は知ってそうだと思ってそんな提案をしてみたら、空くんは「えー」と少し不機嫌そう。
「『司書』ちゃんとか探さなくてもいいでしょ」
「ダメだよ?!智見さんからの依頼なんだし、あの人は一応お偉いさんだし。断ったとしてどんな因縁つけられるか分かったもんじゃないから、機嫌を損ねないに限るでしょ」
「その時は僕が釘を刺したら解決」
「しーまーせーんー」
「えー。アイツ、本当に困ってるわけじゃないと思うけどなぁ」
「困ってなきゃ私たちに相談しないでしょ?」
「そうだけどそうじゃなくて、あくまで僕たちに探させようとしてるっていうかさあ」
「ふーん?」
私は別におかしいところはないと思うけど、空くんは違う意見らしい。
……まあ、いっか。御厨さんの情報もついでとは思ったけど、最初からそんなに期待してないし。空くんに嫌な気持ちをさせてまで強行することでもないかな。
「仕方ないなぁ。じゃあ、ここでは匂坂さんのことしか聞かないことにする。でも、ちゃんと情報とれそうなところに行ったらしっかり調べるからね?仕事だし」
「えー」
まだ空くんが不満げだけど、その辺の方針は後で話し合うしかないかな。
「さて、始めるよ。そうね、誰から聞」
「じゃあボクからとかはどう?」
視線を空くんから逸らした私の視界の下側からニュイっと姿を現した人影に、私は思わず「ぴゃい!?」と仰け反った。
若葉色のショートボブ、翡翠色の猫みたいにぱっちりとした瞳の中性的な童顔のその人は、「そんなに大袈裟に驚くかなぁ」と首を傾げた。
「誰だってそんな急に出てきたらビックリするでしょ!」
「えー?さっきから君たちのやり取りぜーんぶ聞いてたよ?ほら、そこの志瑞空くんは全然驚いてないもん」
「えっ……、空くん、気づいてたなら教えてよ」
「ごめんね飛鳥ちゃん。びっくりする顔が見たくて黙ってたんだ。」
「むー」
「まだ夫婦喧嘩続くの?ボクを蚊帳の外にしないでほしいな」
「まだ夫婦じゃないから!?」
「結婚する気はあるんだ。へー、いい事聞いたなあ。ね、そう思うでしょ?志瑞空くん」
「飛鳥ちゃん……!」
「え、あ、違……わないけど……も~~~っ!」
恥ずかしい!穴があったら入りたい!
恥ずかしさに悶絶してる私と、少し照れながらも喜色満面の空くんに、この人は「というか、志瑞空くんは分かったけど、もしかして君って七世飛鳥ちゃんかな?!」と今更の質問をした。
「だったら何よ」
「へえ、君が七世飛鳥ちゃんかあ……ずっと会ってみたかったから、すっごい感激……!」
「はあ、何でまた私なんかに?」
そんなキラキラした尊敬の眼差しを向けられるほど、私は大したことしてないと思うんだけど。
あまりに不可解な視線にさっきまでの羞恥心はどっかいって、ジッとその人を見る。前に会ったことあるかなーって思って記憶を掘り返してみるけど、全然だめだった。
私の質問に、彼?彼女?はニヨニヨと歯茎を浮かせるような笑い方をした。
「ふふ、憧れに理由がいると思うかね?かね?」
「えっウザ」
「ぐふぅ!」
はっ、しまった。せっかくの貴重な聴取協力者になんてことを。
あまりにも苛立つその態度に思わず感想が。
……いや、それ以前に。
「そもそも誰?なんで最近私、初手で名乗らない人ばかり絡まれるの?本当になんで?」
智見さん然り、会長然り、そして目の前のこいつ。
私って不審者を誘き寄せるフェロモンでも出してるのかな……。
周りは『関わらんどこ……』とでも思ってそうなくらい煙たげにこっち見てるし、只者じゃないんだろうけど。
こいつは私の声に反応して、「ごめん、名乗ってなかったね」と会釈した。
「ボク、宗任礼っていうんだ。よろしくね、インタビュアーさん!」
やっぱ名前聞いたこと無かったし、なんか勝手に話が進められるし。
誰も宗任さんに聞き取り調査するとか言ってないんだけど。本当に魔術師界隈ってどうなってるの?
悲しい哉、私のそんな疑問に誰も答える人はいないのだった。
☆☆☆
宗任さんに導かれるまま連れてこられるは『協会』資料室。
「血塗れ事件はボクも調べてる案件なんだ。あの『JoHN』トラブルシューターの君たちも調べてるとは、ボクはなんてラッキーなんだ!ぜひ、ぜひ、雑だ……じゃなくて、井戸端会……でもなくて、情報共有させてほしい。良いとこ知ってるから、ほら、こっちこっち!」
「は、はあ」
余程私たちに会えたことが嬉しいのか、時々興奮気味に身悶えながらもズカズカと本部の奥へ突き進んでいく宗任さん。
入室権限とかの問題も全く気にすることなく足早に駆けていく宗任さんを追いながらも、このままついて行っていいのか不安になる。
鼻息荒いし距離感バグってるから傍目から見れば変態だし、すれ違う人みんな視線逸らすし。明らかにやばい人に目をつけられちゃったっぽい。
でも大丈夫。私は一人じゃない。
「ちょっと、空くん。とにかくあの人に釘でもぶっ刺して止めてよ、ずっとあいつのペースなんだけど」
「それは良いけど……うーん」
その頼りの相棒、空くんに小声でそう訴えかけたけど、空くんはいつものにこにこ顔のまま、どこか躊躇ってる様子だ。
「何、歯切れ悪いじゃん。どうしたの?」
「釘で刺しても意味ないような気がするんだよね」
「そうなの?」
「敵意も悪意もない、ただ倫理観ぶっ壊れてる研究者気質だから厄介な人、かな?『評議会』で見かけたことはあるから警戒するに超したことはないけど」
「ふーん……え、この人『評議会』?ほんと?」
「うん、脱走兵だったかな?この人の代わりに僕が『研究室』配属になったはずなんだよね」
「ええ?そうだったっけ……?」
なんとか昔を思い出してみる。
……あれ、たしかに、『一人研究員が減ったから補充する』とは聞いたけど、死んだとは聞かされてないし、死んだところも見てない。
あまりにもあまりな環境すぎて、勝手に死んだことにしてたっぽい。
「うーん、じゃあ、ある意味恩人さんか……不本意だけど」
この人が脱走しなかったら、私は今もあの狭い独房でただ無意味に生かされてたはずだから。
……ダメだ、発想の転換しても全然ありがたく思えない。
とりあえず『今は釘で刺せない』ことだけ念頭に置いて宗任さんに視線を戻すと、『資料室』には着いたようでそこの司書?担当の人と何やら話している。
司書さんは見たことがある。『陰成室』で空くんが買ったプリンを泥棒して着ぐるみ剥がされそうになってた人だ。
えーと、確か名前は。
頑張って名前を思い出そうとしている中、宗任さんと司書さんの会話が耳に入ってくる。
「やあやあ問題児ちゃん。仕事はサボらずちゃんとやってるかな?」
「モチロンです、はい……」
「よろしい。よりによって『司書』さんの客人に無礼があったから前職はいられなくなったもんねー?それをボクが拾ってあげたもんねー?それで、またやらかすなんてことしちゃったら……今度は、物理的に首、とんじゃうかもしれないなー?」
「め、滅相もないです……ちゃんとしますですよ、ははは……」
……プリン泥棒だけど、なんか可哀想に見えてきた。
「うんうん。そーゆーわけで、ボクは客人と話すためにここ貸切にするから。絶対、ここで聞いた内容は他言しないっていうのと、何がなんでも、何人たりとも『ネズミ』を入れないでね。君ならできるよね?よね?」
「い、イエッサー!」
そう答えるプリン泥棒さんは、歯がガチガチと言っていた。
本当に可哀想。なるほど、これがパワハラか。
るんるんと鼻歌をしてスキップで資料室の奥へ進む宗任さんを見失わないようにしつつ、その受付のところへ声をかけた。
「えーっと、大丈夫?」
「大丈夫じゃないけど大丈夫です……どうぞ、うちのトップ2とごゆるりと……」
「あ、はい。ありがとうございます……えっと、」
「二条ちゃんだよ」
「空くん、そうなの?じゃあ、二条さん」
「一足すなこのガキャー!」
「うわ、怒った!」
「逃げろ逃げろ!」
私と空くんは、笑いながら宗任さんの後を追った。
最後の受付の人の名前は、一部四章後半くらいまで遡ると確認できるぞ!(あまり関係はない)
よろしかったら、ブクマ、感想、評価など頂けますととても嬉しいです。
何かありましたら、こちらまで。
X垢 @IjiGamerR




