3−5
こんにちは。
今回からデート?回が続きます。
恋愛未経験者なのでうまく描写できているかは不明ですが。
では、どうぞ。
不本意ながら志瑞とのお出かけが決定してしまった数日後。
飛鳥は市内のテーマパーク『セレーネランド』の入口の前に佇んでいた。
『セレーネランド』。舞月財閥が運営している遊園地であり、様々なアトラクション、イベントが盛り沢山。キャストも一流が勢揃いしていて、まさに『夢の国』そのもの。恐らく本国一人気、大盛況のテーマパークといっても過言ではない。
そのネームバリューもあって、人でごった返している。今日は『STELLA』ショーの開催日だからか、いつもより一層客が多く見受けられる。
家族、友人とのお出かけは勿論デートにもうってつけ。そんな場所に飛鳥が足を運んだ理由は他でもない、志瑞とのお出かけ先として指定されてしまったせいであった。
当初、飛鳥は公園やそのへんのゲームセンターなどでお茶を濁すつもりだった。
しかし、何故か乗り気の霧乃がいらぬお節介を焼いて、なんと舞月財閥に掛け合ったらしい。
せめて先方が断ってくれれば良かったのだが、財閥も『青春の応援をしたい』とかなんとか言って『セレーネランド』優待券を2人分くれやがったのであった。
無論、そんな特級呪物を渡された霧乃がする行動は一つ。
『飛鳥、空。これあげるから出かけてくると良い』という提案に見せかけた命令である。
「ああ、なんでよりによって此処なわけ……?」
ここは絶対に『恩人』と行きたかった場所なのに。
ため息を禁じ得なかった飛鳥だが、首をブン、ブンと大きく横に振る。
一応、志瑞もいつも護衛としてついてきてくれるし、そのおかげで『恩人』探しに着手できている。護衛の仕事を果たしてくれた場面だってある。
そう。一応、世話になっている人だ。彼も喜んでいた以上、ため息ばかりでは失礼だろう。
逆に考えるんだ。霧乃ちゃんも言っていた通り、『予行演習』だと思えば……。
「おまたせ、飛鳥ちゃん」
「うひゃい!?」
うんうん悩んでいた飛鳥だったが、突如後ろから肩を叩かれ、思わず飛び上がった。
そのまま振り返れば、志瑞はやはり長袖のパーカーを羽織った私服姿。普段は学ランのような服装なので、ジーンズ、スニーカーを履いているのが新鮮だが、ソレ以外は特に代わり映えしない恰好だ。
心做しか浮足立っているようにも感じられるが。
一方の飛鳥は、少しダボッとした白Tシャツをキャミソールの上から着た服装だ。そこにデニム生地のショートパンツを合わせ、ハイカットのスニーカーを履いている。
梅雨に入った今現在、遊園地に遊びに行くというTPOを踏まえて数時間ほど悩んで決めた服装だ。最終的には『志瑞とだし雑にこれでいいか。これでも恥ずかしくはないだろう』なんて妥協もあったが。
しかし、こうも志瑞がラフだと、一人だけ気合を入れてきたような感じがして少し恥ずかしいじゃないか。
飛鳥がぐるぐると服装チェックで思考回路をフル回転させて硬直している中、志瑞はきょとんとした様子で専ら待ち惚けしていた。
が、埒が明かないと判断したらしい。「飛鳥ちゃん、大丈夫?」と声をかけてきて、飛鳥は慌てて反応を返した。
「だ、大丈夫」
「本当?待たせすぎて怒ってるのかと思ったんだけど」
「ついさっき来たところだから大して待ってないし……今って待ち合わせの時間より五分早いでしょ。遅れてもないのに無意味に怒る訳ないでしょ」
飛鳥の言葉に「良かった」と安堵した様子の彼を見て、本当に珍しいと感じていた。
志瑞は不幸体質だ。本人にそのつもりがなくても、まるで吸い寄せているように不幸、不運、トラブルが降り掛かる。
出会った初日も勿論酷かったが、以降も誰かがついていないと十中八九待ち合わせに遅れるのだ。どんなに余裕を持って出かけてもそうなるらしい。
ある日は交通事故に遭っていたし、ある日は不良などに絡まれていたし、ある日は他人の犯罪に巻き込まれていたし、ある日は公共交通機関が悪天候で機能していない、なんてこともあった。
今日も多少は遅れてくるかと思っていたのに。そのせいで変な声をあげて反応してしまったし、さっきもまるでデートでの男女のやり取りみたいなものを再現してしまったじゃないか。
また恥ずかしくなってきた。飛鳥は話題を切り替えることにした。
「そ、それより。本当に夏でも、プライベートでも長袖じゃん。そっちこそ暑くない?」
「そっか。てっきり心配ないよ。行こっか」
思いっきりはぐらかされた。
が、先を促してくれてよかったかもしれない。
飛鳥は「あっそう。ならさっさと行こ」と志瑞の手をとって入場していく。
『ITレンズ』にデータとして保存されている優待券がゲートで読み取られ、自動で入口が開くのを後目にぐいぐいと先へ、先へと進む飛鳥だが、辺り一面に広がる景色に、彼女の気分は一転して上がり始める。
真っ先に目に入るのはジェットコースター。隼のイメージらしく、翼のようなデザインがあしらわれている。なかなか速そうだ。
次にメリーゴーランド。クラシック音楽をポップ風にリミックスしたような音楽が流れて、ゆったりと馬たちが周っている。シンデレラが乗っていそうなデザインだと思った。
『ITレンズ』が自動で曲を検索していた結果を見たところ、『STELLA』初代座長の志瑞司が編曲したものらしい。電子パンフレットの記載によれば、昔はクラシック音楽をそのまま流していたが、志瑞司が舞月財閥に婿入りしたときに記念で贈られたものだとか。
なかなかロマンチックだなあ。
遠目に小さく見えるのは観覧車だろうか。
他にはウォータースライダー、空中ブランコ、お化け屋敷、フリーフォール、コーヒーカップ、バイキングがあるらしい。
所々にパステルカラーの衣装を纏ったキャストが風船を持って歩いているし、キッチンカーで何か料理しているのか香ばしい匂いが微かに風に乗ってきた。
大勢の人で賑わっていて、楽しそうな笑い声が絶えない空間。
きょろきょろと辺りを見回して、さてどこから行こうかしらと飛鳥がそわそわしていると、またもや背後から「飛鳥ちゃん」と呼ばれた。
「何?」
「好きなように周ってきたらどうかな?」
「それは勿論。……志瑞はどこがおすすめとかある?」
志瑞は飛鳥からの質問に、指で頬を掻いて気まずそうに「いや、僕もこういった場所に来た経験はないんだけど」と返す。
「そうなの?」
「小さい時から『評議会』にいたからね」
「ふーん……」
「一般論、ジェットコースターを最初に選ぶ人は多いみたいだよ?」
「へえ、なるほどね?」
改めてジェットコースターを見る。乗っている全員の叫び声が聞こえる。
たしかに、元気がある今のうちに乗っておくほうが良いかもしれない。
「わかった。そこにするね」
「うん。いってらっしゃい」
「?」
飛鳥が頷いてジェットコースターへと歩を進めようとした時、志瑞からの言葉に首を傾げて振り返った。
彼の表情はどこか切ない。寂しそうだ。
「何で『いってらっしゃい』なの?」
「飛鳥ちゃん一人で乗ってくるんでしょ?」
「え?何で?本当に何で?」
志瑞の思わぬ返答にまたもや首を傾げた飛鳥。
しかし、そこで飛鳥に電流が走る。
ジェットコースターが苦手なのでは、と。
遊園地に行ったことがないのも嘘。遊園地でジェットコースターに乗って、それがトラウマだから飛鳥に同じ気持ちを味合わせようとしているのでは?
迷推理を経て、飛鳥は満面の笑みを浮かべて志瑞の腕を強く引いた。
「え、飛鳥ちゃん?」
戸惑う志瑞に、飛鳥は「何いってんの。志瑞もせっかく順番パスできる優待券あるんだから、使わなきゃもったいないじゃんね」とジェットコースターに引っ張っていく。
「いや、本当にちょっとまって。僕は乗らないほうが」
志瑞も慌てた様子でなんとか抵抗すべく踏みとどまろうとするが、ただでさえ彼は非力な方だ。飛鳥の人外並、ゴリラといって差し支えないレベルの筋力には敵うはずもなく、そのままジェットコースターに搭乗させられてしまった。
ここまで来ると抵抗も無駄だと観念した志瑞が項垂れている。
「勝った」と飛鳥がニヤつきを抑えられないまま、ジェットコースターは動き始めた。
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