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残念ながら、僕達は  作者: 桜油
一部二章『ロスト』
19/67

2−7

こんにちは。

毎年、夏休みってありがたい存在だったんだなあと感じます。

学生の頃は宿題を夏休み初日に終わらせて、以降は自習と部活に明け暮れていたものです。

夏休みなんか要らないから早く学校再開してくれと思ってました。


それはさておき、今日はーーーを境目に視点変更が入ります。

まあ、汐宮の昔話をするだけですけれど。

では、どうぞ。

『JoHN』。

今でこそ霧乃が全権代行を務める独立した魔術組織だが、元々は『軍』の全権代行直属の部隊であった。

当時の全権代行の意向により独立した際に、城月怜、真白唯笑以外の構成員は『協会』や舞月財閥に移籍した。

『JoHN』内部では創立に携わった者として記録に残っており、霧乃もその歴史を飛鳥や識名に何度も聞かせていた。

歴史の教科書には載らない。しかし、霧乃たち『JoHN』全権代行にとっては重要な偉人。

汐宮宥とは、そういう認識をされている『過去の人』だった。

なんせ、『JoHN』設立から一世紀。かの城月怜も老衰で亡くなるほどの年月が経っている。

ましてや、彼と同い年だった彼女が、飛鳥と同年代のような姿で御存命のはずがない。


「……うせやろ」

『ええ、たしかに嘘のような話でございます。しかし、現実は小説より奇なり、でしょう?』

「はあ……」


汐宮の言葉に、頭が痛そうに識名がため息をつく。

一方、飛鳥はといえば、こちらは素直に驚いていた。

霧乃からは『JoHN』の歴史は耳にタコができるほど聞かされた。否、聞き飽きた。

必然的に、それだけ汐宮宥という名前を耳にしているから、彼女がどういった経緯を以てこの場にいるのかが気になっていた。


そして、先日受けた、霧乃からの助言。


『『依頼』なんてな、どうせ彼が解決する。だから、『依頼』は傍観に徹して、そこでつながった人たちに手当り次第に聞いてしまおう』

『もしかしたら志瑞視点ではどうでも良くても、君にとっては重要な手掛かりがあるかもしれない』


この一世紀の歴史の生き証人のような彼女に話を聞けば、もしかして『恩人』のことも。


「あの」


そう思ってしまえば、飛鳥の行動は早かった。

汐宮に声をかけた飛鳥に今更気づいたのか、『あら、付き添いの方がいらっしゃりましたか』と目を少し見開いた。

しかし、すぐに気を取り直した様子で、『どういったご要件でございましょう』と微笑む。


「いや、気になることがあって」

『さようで。ええ、何でも、私の可能な範囲でお答えしましょう。お気軽にご質問なさいませ』

「え、」


こんなにあっさり承諾を貰えるなんて。

じゃあさっきの戦いは何だったんだ。


出鼻を挫かれたような、呆気にとられるような、そんな感情を抱きつつ、「じゃあお言葉に甘えて」と切り出す。

まず、本件依頼『ロスト』に関わることからだ。


「何で不老不死なんですか?」

『……ご生憎、その質問に関しましては回答いたしかねます』

「え、さっき何でも答えるって言ったじゃないですか!うそつき!」


またもむくれた飛鳥に汐宮は『うわあ』と漏らした後、識名へ憐憫に満ちた視線を向ける。

飛鳥には胸中が分からなかったが、識名は理解できているらしく、うん、うんと頷いていた。

益々不満が増した飛鳥は「なんですか、そんな示し合わせたように」と口を尖らせたが、汐宮は『あのですね』と話し始めた。


『私も、可能な限りお答えしたく存じますとも。ええ、意地悪をするつもりなど努々ございません』

「……」

『しかし、貴女のご質問には、私も正確にお答えできない。神のみぞ知る、そんな話なのです。だから、お答え致しかねると返しました。ご理解いただけましたか?』

「何でも答えるって」

『可能な範囲で、と私は申し上げたはずですが』

「……はい」


渋々そう返す飛鳥にご満悦そうに汐宮が『よろしい』と返す。

その端では識名がニヤニヤしていた。


「えらい面倒見がええやん。どないしたん?」

『昔を思い出しただけです。私の同僚や親友に似て感情豊か、純粋、素直でいらっしゃるから……もっとも、彼女たちはそれほど愚かではございませんでしたが』

「そう言う汐宮はんこそ素直やないなあ」

『ええい、話が進まないでしょう。一旦だまらっしゃい』

「だまらっしゃい」


識名が誂っていたが、今までの彼女らしからぬ言動が汐宮から飛び出し、少し硬直する。

識名から飛鳥に視線を逸らした汐宮は、少し顔が紅に染まっている様子で、軽く咳払いをしてから口を開いた。


『では、続けましょうか』

「あ、うん。えー。じゃあ、別の質問ですね」

『いえ、先程の質問への回答がまだ途中でございますから、続けますと申しました』

「……ほえ?」


先程の質問、というと、『どうして不老不死になったのか』。

たしかそれは、『神のみぞ知る』『自分にもわからない』と聞いたが。

首を傾げる飛鳥に、『たしかに、正確にお答えはできませんけれど、』と前置いた。


『私なりに考察を述べることなら出来ます。如何でしょう?』

「考察……?」

『考察、というよりは、昔話になりますけれど。でも、私が話してみれば、貴女がたで何かしらの解は導き出せるやもしれません。そうでございましょう?』


汐宮の言葉に、飛鳥は思考を巡らせた。

飛鳥が持っている『ロスト』に関わる情報は、まだ少ない。

このまま解決してしまえば、前回と同じく報告書の内容にほとほと困り果てる。

そんな想像は容易かった。

ならば、『ロスト』の結界の中での被害に密接に関わっているであろう彼女から話を聞けば、少しは全容が見えるのではなかろうか。

それだけではない。

もし、もしも。

彼女の口から、『恩人』の名前や容姿、動向が出たらー。

いろんな意味で、汐宮宥は重要参考人なのであった。


結果、飛鳥はこのありがたい提案を断る選択肢などあるわけもなく、是と返した。

汐宮は、『さて。あれは、どのくらい前のことでしょうか』と、思いを馳せるように遠くを見た。


ーーー


さて。あれは、どのくらい前のことでしょうか。

100年くらい前?いえ、もっと前でしょう。

彼と私が出会い、優しい大人たちに囲まれて、それまでの私の人生とは比較にならないほどたくさんの愛情と友情を注がれて。

また仲間が増えまして、更に輪が広がって。

おかげで、私に魔術の基礎をご教授いただいて、私のオリジンとも言えるほど思い入れの強い魔術を開発できた『恩人』との再会が果たせました。

親友との再会だって果たせて、失った平穏の時間を埋めることも叶いました。

仲間と力を合わせて人の悩みを解決したり、街の人々と触れ合ったり、刹那さん……失礼、『提督』のお手伝いを不肖ながらお手伝いさせて頂いたり。

充分、私は幸福でした。


ーーー


「じゃあ良かったじゃん。何が問題なの?」

「しッ。最後まで聞くんや。ええな?」


飛鳥の感想に識名がそう叱ると、「はーい」と言って口を噤む。

汐宮の語りは続いた。


ーーー


しかし、……人間って、欲深い生き物なのでございます。

私も、欲が出てしまいました。

私にも、仲間にも、彼や彼女……怜くんや唯笑ちゃんにも『夢』がありました。

それを叶えるには、怜くんたちの元を去らねばなりません。

ですが、『JoHN』は、『軍』は、あまりにも居心地が良かった。

私にとって初めての居場所でしたから、そこを離れるのは心が酷く痛むことだったのです。


されど、私達、『別れ』の覚悟はできております。

……否。私が、私だけが、弱かったのです。

心の何処かで願っておりました。『大人になどなりたくない』『ずっとこうであれたら良かったのに』と。


だからでしょうか。『不老不死』などという『悪戯』、お節介をされてしまいました。


最初は全く気づいておりませんでした。

精々、『童顔』『若く見える』程度のものでございまして。

私も、純粋に容姿を褒められていると感じておりましたが、思うにそれは平和ボケでございましょう。

しかし、30代後半、所謂『アラフォー』と呼ばれる年代になり、漸く、違和感を抱きました。


あまりにも若々しすぎる。疑問に思った『旧友』が、私を心配して色々調べてくださり、そこでようやっと『不老不死』なのだと判明しました。

私の前の職場は、舞月財閥の護衛でした。

舞月財閥は決して裏に関わりません。幼少期の私を探し出そうという努力はございましたが、そういった企業理念から深入りはできなかったように。

況して裏の陰謀に知らず巻き込まれている私を切り捨てない理由は無いはずでしたが、それでも、当代は私にポストを残してくださりました。

しかし、私は遠慮して退職しました。

また、『旧友』は必死に解決法を探ってくださりました。なんと、黒幕に心当たりがあったようなのです。

嬉しかったですが……彼も晩年には諦めており、ご家族に託そうとし始めました。

これ以上は関わってはならない。彼の幸福を壊させてしまう、壊してしまう。私はそう考えました。

ですから、彼の前から姿を消しました。もう、放っておいて良いのだと、そんな手紙を残して。


皮肉なものです。

『不変』を手にしたせいで、変わらないでほしかったものが変わってしまう。それほど滑稽な話がありましょうか?


『神様』は実在していたとしても、きっと、人の心など知らぬ存ぜぬでしょう。

不老不死はたしかに、遥か昔から欲深い人々が願ってやまなかったものでございます。

しかし、私の『神様、素敵なプレゼントをありがとうございます』なんて、到底的外れな冗談の裏に秘めた片思いなど、察せられなかったのですから。


……いえ、『神様』を馬鹿にするものでもありませんね。

私だって、同類です。

怜くんたちに憧れて、追いかけて、追い越して、道は分かたれて、戻れなくなって。

そして、彼がいつの間に亡くなって、幸せな灰になった後で、……私は、今更、彼が好きだったと気づいたのですから。

前作と矛盾しないように書くの結構神経使います。

ライブ感で書いてるからですけれど……なんなら、構想段階では汐宮ちゃんを出す予定すら無かったですし。

うん、今度からライブ感で書くのは無しにしよう。できるかどうかは置いといて。


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