第4話「ショウタの実力」
ショウタ達は、長い道のりを経てエースヴィレッジへとたどり着いた。
「うわぁー、ひろーい」
ショウタは、周りを見渡す。
「実際の広さは、キングスタウンの方が広いけど、エースヴィレッジの方が構造物が少ない分、広く見えるのかもね」
「確かに、建物よりテントの方が多いですね」
サキとルナもショウタの後ろを歩きながら周りを見渡す。
「さて、俺とサキはギルドに向かいます。ルナさんとショウタくんは、村を見て回っててください、きっとショウタくんは喜んでくれると思うんで」
「わかりました。ぼっちゃま、村を見て回りましょうか」
「うん、わかった!」
サバト達とショウタ達は、別行動をすることにした。
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ルナとショウタが手を繋いで村を散策していると、魔導具を製造している工房のような場所を見つけた。カンカンと魔導具の形を作っていたり、魔力を込めて仕上げをしていたり、様々な工程が公の場で行われていた。恐らく、魔導具制作の工程を一つのパフォーマンスとして見せているのだろう。
「よう、ボウズ!魔導具制作に興味あるか?」
ショウタが魔導具を作っている様子を興味深々に見ていると、そこの店主が声をかけてきた。
「うちは、魔導具制作の体験もやってるから、よかったらやってみるか?」
「やりたい!ねぇねぇ、ルナ、やってもいい?」
「はい、もちろんいいですよ」
「よし!んじゃ、まずこいつを握ってくれ」
店主は、短めの棒のような物を差し出した。
「こいつは、エレメントサーチっていう魔導具でな、こいつに魔力を流すと、その魔力の性質によって色が変わるんだ、火の性質なら赤色に水の性質なら青色みたいな感じでな、魔導具制作には制作者の魔力性質の影響が大きいからな」
ショウタは頷き、エレメントサーチを握りこみ魔力を流す、するとエレメントサーチの先端が白色に変化した。
「お、白色ってことは無属性か!いいじゃねぇか!さっきも言ったように魔導具制作には、魔力性質の影響が大きい、無属性はどんな属性にも平等に耐性があるから、好きな魔導具が作れる!ボウズ、魔導具制作に向いてるぜ!」
「ふふん!」
ショウタは、どうだと言わんばかりにドヤ顔でルナを見る。
「よかったですね、ぼっちゃま、やはりぼっちゃまには、魔導具制作が向いているようですね」
「よし!さっそく作ってみるか」
「うん!」
ショウタは、店主に連れられて店の鍛冶台の前に立ち、店主の指示をしっかりと聞きながら魔導具制作に取り掛かる。
「お!すげぇな、工具も使い慣れてる感じだし、もしかして魔導具作ったことあんのか?」
店主は、ショウタの手際の良さに驚きと疑問を抱いていた。
「うん、つくったことあるよ!魔導具!」
「へぇ~、その年でこの腕前、かなり腕の立つ奴に教わったんだなぁ」
店主の言葉を聞いて、ショウタは、カツラギグループのことを秘密にすることを思い出した。
「うん、そうなんだ、えっと、|きんじょのおじさんが魔導具つくるしごとしてて、それで、たまたま、おしえてもらったんだぁ、へへへ」
ショウタは、自分がカツラギグループと関係があると気付かれないよう慎重になりながら、魔導具を作っていく。店主の指示に従いながら作っていくと魔導具の全貌が見えてきた。
「よし!あとはこいつだな」
店主は、水晶のような透明の石をショウタに渡した。
「これしってる!じょうかせきだよね」
「お!よく知ってるなボウズ!こいつは浄化石、魔力に反応して周囲の物をキレイにする石だ」
「これを使うってことは、やっぱりこの魔導具は魔水筒だね」
「すごいな!そこまでわかるのか!近所のおじさんからいろいろ教わったんだな」
「う、うん!」
店主は、ショウタの頭を豪快になでながら褒める。
「この浄化石を組み込めば、後は仕上げの工程だけだ!」
ショウタは改めて気合を入れて、魔水筒の制作に取り掛かる。
魔水筒の仕組みは、浄化石を囲むように水を貯めておくタンクを作ることで、浄化石はタンクの水のみを浄化して、キレイな飲料水に変換する。しかし、浄化石は物を浄化するたびに黒く濁っていき、浄化することができなくなる、その為魔水筒は定期的に買い換える必要がある。
「あれ?」
「ん?どうした?ボウズ」
「じょうかせきって、1こしか使わないの?」
「え?」
ショウタは、魔水筒をより良くする方法を知っていた。
「浄化石はまだあるが、2個使う方法なんて俺は知らねぇぞ」
「だいじょうぶ、おれにまかせて!」
店主は、驚きながらショウタに浄化石を渡した。
ショウタは、浄化石を受け取ると2つの浄化石を魔水筒の中心に収まるよう小さく削り、浄化石に魔力を伝える為の通り道を切り替え式に作り変える。
「こうすれば、1つめのじょうかせきが使えなくなったあと、もう1つのじょうかせきに魔力がつたわるようになって、使えなくなったじょうかせきと水をいっしょにきれいにする、それをくりかえすことでこの魔水筒をずっと使えるようにするんだ」
「すげぇな、そんな発想は俺にはなかった」
店主は、ショウタの制作方法を見て驚く。
「でも、このやり方でもいつかは2つのじょうかせきがどうじにつかえなくなるときがくる、けっきょく今までよりもながく使えるようになるだけ」
ショウタは、少し不満そうに説明する。それを聞いた店主は、ショウタが魔導具を使う人のことをよく考えて作っているんだとショウタを尊敬し始めていた。
「よし!あとはしあげに魔力でかこうするだけだね」
魔力の通り道を無属性の魔力で包み込むことで、様々な魔力性質への耐性を付与でき、どんな魔力性質を持った人でも魔導具を使用することができる。
「よっしゃ!仕上げの魔力加工はまだできないだろうから、俺に任せな」
ショウタは、魔力加工もできるが、自分の正体がバレないようできないフリをした。
「う、うん!おねがいします!」
店主が、魔水筒を受け取ると魔力加工を施し、ショウタに手渡す。
「うん、いいできだ!記念にそいつは持っていくといい」
「ありがとう!ルナに見せてくるー」
ショウタは、完成した魔水筒を抱えてルナのもとに駆け足で向かう。
店の前には、ルナとギルドから戻ってきたサバト達が待っていた。
「見て見てー、じゃーん!魔水筒!」
ショウタは、ルナ達に自分で作った魔水筒を両手で掲げて、自慢気な表情で見せる。
「さすがです!ぼっちゃま!」
「ショウタくんが作ったの?すごい!よくできてるよ!」
ルナとサキが、ショウタの頭を撫でながら褒める。
「うん、よくできてる、せっかくだし次のクエストに持っていくか」
サバトが、魔水筒をじっくりと観察してショウタの魔導具制作の腕の良さを実感する。
「クエストいけるの!?」
ショウタが、サバトの言葉に反応する。
「ああ、さっき簡単な採取クエストを受けてきたんだ、開始は明日だ」
「やった!楽しみ!なにをとりにいくの?」
「ここから東にあるオアシスで、薬草と水の調達だな、この辺りでは水が少ないから水を調達するクエストが多いんだ」
「薬草と水だね、うん、わかった!」
ショウタは、やる気に満ちた表情をしている。
「今日は、たくさん移動したし、ショウタくんもがんばって魔導具作って疲れたと思うから、宿に泊まって休憩しよっか」
サキが、ショウタに目線を合わせて提案をする。
「うん!」
ショウタは頷くと、明日のクエストを楽しみにわくわくしながらサバト達と一緒に宿へと向かった。
宿に到着するとサバトは受付へと向かい、ショウタ達は、待合所のソファに座ってサバトを待つことにした。
「すごく高そうな宿ですけど、大丈夫なんですか?」
ルナが心配そうにサキに問いかける。
「平気、平気!私達は、いろんなクエストを受けて、結構稼いでるからね!私達を指名するクエストなんかもあるくらいこのあたりでは有名なんだから!」
「いろんなクエストにいってるってことは、いろんなところをぼうけんしてきたってことだよね!すごい!やっぱり、ぼうけんしゃってすごいね!」
ショウタが目を輝かせてサキを見つめる。サキは照れ臭そうにありがとうとショウタの頭をなでる。
待合所でサバトを待っていると、二人組の女性の会話が聞こえてきた。
「ねぇ、あの噂知ってる?アカツキ事件にカツラギグループが関わってるっていう」
「あぁ、知ってる最近話題になってるよね、まぁ私は信じてないけど、あんなのただの噂だって」
「そうかなぁ、そうだといいんだけど」
女性の会話を聞いたショウタが、サキに訊ねる。
「ねぇ、サキお姉ちゃん、アカツキ事件?ってなに?」
「あー、えっとね、簡単に言うと、ショウタくんがまだ生まれる前かな、ある魔導具が暴走してね、その影響でモンスターか凶暴化、街一つを壊滅させた事件のことだよ」
「え!?魔導具がぼうそうしたの!?」
「うん、それからその事件以降、魔導具を使っちゃダメ!って言われてたんだけど、カツラギグループが新しい制作のやり方を発表してね、そのおかげでまた、魔導具が使えるようになったんだ」
サキがショウタにも分かりやすく説明をしてくれた。
「それで、カツラギグループの噂って…」
ルナが、先程の女性たちの会話で疑問に思ったことをサキに質問をする。
「それはね、カツラギグループが自分達の商品を売るために、事件を起こしたんじゃないかっていう噂、まぁ私もサバトも信じてないんだけどね」
「そんな噂があるのですね」
ショウタ達が話していると、受け付けを済ませたサバトが戻ってくる。
「わるい、待たせた」
「けっこう時間かかったね」
サキが、立ち上がりサバトに聞く。
「いや、なんか最近、モンスター達の動きが活発になってるみたいで、クエストに行く時は注意してほしいって言われたんだ」
「そっか、ま、私達がいるし大丈夫でしょ」
「そうだな、取り敢えず明日に備えて、今日は休もう」
サバト達は、モンスターが活発化した話を聞いて、少し不安な気持ちを抱えていた。しかし、ショウタは初めてのクエストということもあり期待に胸を膨らませていた。
ここまで読んでくださりありがとうございます。
今回は、ショウタの魔導具制作の腕前を披露しておこうと思って書き進めました。
次の話からやっとクエストが始まります。たぶん。なのでぜひ、楽しみに待っていただけると嬉しいです。
以上猫耳88でした。