第1話「カツラギ」
この作品に興味を持ってくださりありがとうございます。
本作品は、自分の頭の中の妄想を形にしたいと思い、書き始めました。小説はあまり書いたことがなく至らない部分が多いと思いますが、最後まで読んでくださるとありがたいです。
キングスタウン。腕に自信のある者たちが集う街。様々な冒険者たちが賑わう中、メイド服を着た、背の高い黒髪ロングの女性が周りの注目を浴びていた。
「こんな街にメイド?」
大きな剣を背中に背負った冒険者の男、サバトが疑問に思う。サバトは、戦士であり、大剣を振るうほどの筋肉を付けている。
「どうせどっかの貴族が、冒険者を見下しに来てるんでしょ」
仲間の魔法使いのサキが答える。サキは上級魔法が使えるほど優秀で、それでいてスタイル抜群。短い赤い髪がチャームポイント。
「俺、声かけてくる」
「あ! ちょっと! サバト!」
サバトは、街中を紙1枚を持ってうろうろしているメイドに近づき声をかけた。
「なにか、お探しですか?」
「すみません、冒険者ギルドを探しているのですが」
メイドが持っていた1枚の紙には、冒険者ギルドへの簡易的な地図が描かれていた。
サバトとメイドが話しているのをサキが聞き耳を立てて、不安そうに見ている。
「依頼ですか? 俺も冒険者なので、よければお話聞きますよ」
冒険者ギルドに用があるのは、依頼を受ける冒険者か依頼をする客かの二択だ。
「冒険者の方でしたか! しかし依頼というわけではなくて」
冒険者ギルドに依頼をしに来たわけではないようだ、見た感じ武器も装備しておらず、冒険者には見えない。やはりサキの言う通り、冒険者を馬鹿にしに来た貴族のメイドなのだろうか。
「私がお使えしているぼっちゃまが、冒険者になりたいとおっしゃって、それで冒険者ギルドを探していたのです」
「なるほど」
どうやら冒険者を見下しに来た貴族ではないらしい。
「よければ、俺が案内しますよ」
「ありがとうございます」
「それで、そのぼっちゃまは?」
「近くの武器屋に行っておられます。あちらです」
メイドに案内され、武器屋に向かう。後ろから慌てた様子でサキが追いかけてくる。
「ちょっと、おいてかないでよ!」
サキがサバト達と合流し、共に冒険者ギルドへ案内することになった。
武器屋に移動する道中、メイドにいろいろ話を聞いた。
「挨拶が遅れました。私はルナ・トニトルスと申します。ぼっちゃまと共に東の国、『和国』から来ました」
「和国って、随分と遠いところから来たのね」
サキは少しおどろいた様子だ。
「他の兵士とかは一緒じゃないんですか? そんな遠くから来たのなら、モンスターとか山賊とかたくさんいたでしょうに」
和国からこの街にたどり着くのにいくつもの洞窟や森を抜けなければならず、そこを住処にするモンスターや貴族を狙った山賊達が大勢いる。
しかし、ルナは得意げな顔をして答えた。
「ご安心を、ぼっちゃまをお守りできるよう戦闘訓練もしておりますので、これでも腕には自信があるのですよ」
ルナの話を聞きながら、武器屋に向かった。
─────
ルナがギルドをさがしてる間に、少年は武器をさがしていた。
「おー! これかっくいい!」
いろんな武器の中で、刀身が黒く刃が所々尖っている剣に見惚れていた。
「んー、これ、なんてかいてるんだろう?」
少年は、剣の下に書かれている、恐らく剣の名前であろう文字を首を傾げながら見つめている。
しばらくすると、店のドアがひらいた。
からんころん♪
「あ! ルナ!」
少年が、店の入り口のほうを向く。
「ぼっちゃま、お待たせしました」
ルナと、二人の冒険者が一緒にやってきた。
「うしろの人たちは?」
「こちらは、冒険者の方々で、名前は─」
ルナの言葉を遮り、目を輝かせてサバト達を見る。
「ぼうけんしゃ!」
黒髪の小さな男の子がサバト達の周りを興味津々にぐるぐると回る。サバトが思ってたより子供だ。
「え、かわいい」
サキは、その場でしゃがみ込み少年を見つめる。
「落ち着いてくださいぼっちゃま、冒険者に会えたのが嬉しいのはわかりますが、まずは自己紹介ですよ」
「あっと、そうだった」
ルナに言われて、立ち止まりサバトたちの前にたって、おじぎをする。
「おれは、かつらぎしょうた! 6さい! わこくからきました! よろしくおねがいします!」
ふたたび深くおじぎをする。
「ぼっちゃま、この国では葛城翔太ではなく、ショウタ・カツラギですよ」
「そうだった、ごめんなさい」
少年の名前を聞いたとたんサバト達が驚いた。
「カツラギ!? 今、カツラギって言ったのか!」
「カツラギグループって、魔導具生産の大企業よね」
冒険者達の冒険を快適にするのが魔導具。汚水を飲料水に変える魔水筒や火属性魔法が使えなくてもあたりを照らせる魔炎灯など、今では冒険者達の必需品となっている。
「ねぇねぇ、お兄さんたちのなまえは?」
「おっと、そうだな、俺はサバト・イグニス。戦士をやってる、んでこいつは─」
「お姉さんはねぇ、サキ・ナティアって言うのよろしくねショウタくん♪」
「サバトお兄さんとサキお姉さん、よろしくおねがいします」
ショウタはふたたびお辞儀をする。
「よくできましたね、ぼっちゃま」
ルナはしゃがみ込み、ショウタの頭をなでる。
「ぼっちゃま、この方々が冒険者ギルドへ案内してくださるそうですよ」
「ほんと!? やった!」
ショウタは嬉しそうな表情を浮かべて軽くジャンプをした。ふと、なにかを思い出したかのように店内に視線を向ける。
「そうだ! ねぇ、ルナ、おれあの剣がほしい!」
ショウタは、店内に置かれている、刀身が黒く刃が所々尖っている剣を指差した。
「まぁ、素敵です。ぼっちゃまにお似合いだと思いますよ、さっそく購入して参りますね」
ルナは剣を抱えて会計に向かった。
「そういや、ショウタくんは冒険者になりたいんだって?」
サバトがショウタに問いかける。
「うん! おれね、すこしまえにね、魔導具つくるのがいやになっちゃってね、家をとびだしたんだぁ、そのときにモンスターにおそわれて、ぼうけんしゃにたすけられたんだ、そのぼうけんしゃがかっこよくて、おれもあの人みたいになりたいなって」
ショウタは、冒険者になりたい思いをサバト達に話した。
「そっか、ショウタくんはかっこいい冒険者になるのが夢なんだね、応援してる」
サキがショウタの頭をなでる。ショウタは嬉しそうだ。
しばらくして、ルナが戻ってくる。
「お待たせしました、ぼっちゃま。さぁこちらが暗黒剣ですよ」
ショウタは、ルナから暗黒剣を受け取る。
「おー、かっくいいー! ありがとう!」
暗黒剣は、ショウタの身長よりも少し大きい。
「しかし、この剣を持ち歩くのは少々大変ですね、ペンダントに仕舞っておきましょうか」
「わかったー!」
ショウタは、首に下げていた丸いペンダントを取り出す。ペンダントの中心には青く輝く宝石が埋め込まれていて、その周りにはルーン文字が刻まれている。
ペンダントを手で握ると、青白い光が暗黒剣を包み、ペンダントの中へ吸い込まれていった。
「そのペンダント、すごいな、見たことのない魔導具だ」
サバトが興味津々にペンダントを見つめる。
「そのペンダントは、新作の魔導具だったりするのかな?」
サキがショウタに問いかける。
「ううん、これはおれがつくったんだよ、すごいでしょ!」
ショウタが自慢気に答える。
「まじかよ、すげぇな」
「さすが、カツラギグループの子」
サバトとサキが目を見開き、驚いている。
魔導具の制作には繊細な魔力コントロールが必要であり、通常10年以上もの訓練を必要とするため、ショウタの年齢で魔導具が作れることが普通では考えられない。
「このペンダントはねぇ、いろんなものをしまったり、とりだしたりできるんだよ」
ショウタがペンダントの説明を始める。
「魔力をきおくすることができてね、きおくした魔力じゃないと、うごかないんだー、だからあんぜんあんしん!」
「へー、セキュリティもしっかりしてるだねー、ショウタくんすごいねぇ」
サキが褒めると、ショウタは嬉しそうに人差し指で鼻の下をこする。
「このペンダントの技術は、旦那様も一目をおいています」
ルナが自分のペンダントを持ち、自慢気に話す。
「ルナさんも持ってるんですね、そのペンダント」
サバトがルナのペンダントを指差し、尋ねる。
「おれが、プレゼントしたんだよー」
ショウタが元気に答えると、ルナが頬を赤らめ少し照れたような表情になる。
ルナがはっとして当初の目的を思い出す。
「そろそろ冒険者ギルドに向かいましょうか」
「そうですね、では案内しますよ」
「やったー! 楽しみー!」
「ショウタくんは、はぐれないようにお姉さんとお手手つなごうねぇ」
サバトが一番先頭を歩きその後ろをルナとサキがショウタの手を握りながら付いていく。
冒険者ギルド。モンスター討伐や素材集め、長距離移動の護衛など、様々な依頼を冒険者がこなして、報酬を受け取るための場所。
「到着しました。こちらが冒険者ギルドです」
「うぉー! でっけー!」
ショウタが目を輝かせてギルド全体を見回す。
「この街のギルドは、他の街よりも冒険者が多い分広いからね」
サキがギルドを見上げながら話す。
「さっそく、中に入りましょうか」
サバトが扉を開けて、中に入りショウタ達があとに続く。
冒険者ギルドの中に入ると、ショウタがとある掲示板に気がついた。
「あれ、なに? ランク? ってかいてる」
「あれはね、冒険者のランクを表してるの、SからDまであって、Sランクが一番強い冒険者なんだよ」
サキが丁寧に説明をする。
「そうなんだぁ、お姉さんたちは? なにランクなの?」
「私はAランクで、サバトはBランクだよ」
「お姉さん、お兄さんよりつよいんだ! すごい! かっくいい!」
「ふふ、ありがとう」
それから、ショウタ達はギルドの受け付けに案内される。
「ここが受け付けになります。ここで依頼をしたり受けたりします」
サバトが軽く説明をする。
「こんにちは、本日はご依頼ですか?」
受付嬢がルナに問いかける。
「いえ、依頼をしに来たわけではなく、本日は冒険者登録のお願いをしに来ました」
ルナが答える。するとショウタが受け付けに駆け寄り、受け付けカウンターを見上げて話す。
「おれ! おれ、ぼうけんしゃになる!」
受付嬢がすこし困った顔をしたあと、優しくショウタに説明する。
「ごめんね、ボク、冒険者は命が掛かった危険なお仕事なの、だから大人にならないと冒険者になれないの、ごめんね」
「そうなんだぁ…」
ショウタは悲しそうにうつむき、その様子を見ていたサバト達は不思議そうな表情を浮かべた。
「ちなみに、年齢とお名前を聞いてもいいかな」
「うん、えっと、ショウタ・カツラギ、6さい」
ショウタが答えると受付嬢や周りの冒険者たちが驚きの表情を見せて、ショウタに注目する。
「カツラギグループのご子息様!?」
受付嬢はかなり驚いた様子。
周りがざわつき始めた。
「カツラギだってよ」
「まじかよ」
「あの魔導具制作で有名なところよね」
「なんで、こんなところに?」
「てか、カツラギグループってこの間─」
「ちょっと、聞こえるでしょ」
まわりの声に、ショウタは不安そうな表情を浮かべる。そんな姿を見たルナがショウタを落ち着かせるため提案をする。
「ぼっちゃま、一旦外に出ましょうか」
ショウタは小さくうなずき、ルナの手を取りギルドの外に出た。その後ろからサバト達もついてくる。
少し離れた場所に、サバト達が普段使っている休憩場所があるらしく、サバトに案内されて、街の西の方へと移動した。
──────
「すいません、まさかあそこまで騒ぎになるとは」
サバトが窓のカーテンを閉めながらルナに謝る。
「いえ、お気になさらず、私の不注意もありますので」
ルナとサキは、ショウタを真ん中にソファに座り、ショウタを落ち着かせている。
「でも、ちょっとびっくりした。あの騒ぎもそうだけど、冒険者の登録に年齢制限ができてたなんて」
「そうだな、俺達が子供の頃は、年齢制限なく冒険者になれたのにな」
どうやら、昔と今では冒険者の制度に違いがあるようだ。
「今は、ぼっちゃまが心配です。今日のところは休みましょう」
「そうね、ショウタくんは奥の私の部屋を使って、私は家が近くだから、そっちで寝るね」
「ありがとうございます」
ルナは、疲弊したショウタを抱きかかえ奥の部屋へ向かった。
「俺はここで、二人の様子を見ておくよ」
「うん、また明日ね」
サキは、ショウタ達をサバトに任せて帰宅した。
「さて、どうするかな、なんか考えないと」
サバトはソファに座り頭を抱える。
ここまで読んでくださり、ありがとうございます。
少しでも、おもしろいと思ってくださったら幸いです。第2話も書いていきますので、よろしくお願いします。
以上、猫耳88でした。




