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隠さないとダメなこと?

「ありがとうございました」

「奈希のことよろしくね」

「またいつでも来てくれていいからな」

「じゃ、お母さんお父さん、またね!」

 俺たちは義両親に見送られ、義両親宅を後にした。

「電車の時間、間に合うか?」

「んー何とか間に合いそう」

「そうか。よかった」

「ちょっと遊びすぎちゃったね」

「そうだな」

「楽しかった」

「俺もだ」

 しばらくの沈黙。

 誰そ彼時の空を眺めながら思う。

「奈希と出会えてよかった」

「……急だね」

「思ったことは伝えた方が良いと思ってな」

「それなら私も。楓雅と出会えてよかったよ」

「ああ」

 世界は理不尽だ。

「俺たちって本当に兄妹なんだよな」

「兄妹だよ、私たちは」

 最近ふと思うことがある。

「兄妹じゃなかったらよかったのにな」

 好きになる相手が妹だなんて。

「でも、もし兄妹じゃなかったら出会っていなかったかもよ」

「そうだな」

「私は兄妹でよかったなって思うよ」

「どうしてだ?」

「じゃないと負のオーラが出てる楓雅と話す理由がなくなっちゃうんだもん」

「その話はやめてくれ」

「あはは、ごめんごめん」

「まあ、奈希の言う通りかもな」

「ほら、暗い顔しないで行くよ!」

 奈希に手を取られる。

「そんなに運命ことばっかり考えててもキリがないよ!今は私のことだけ考えてくれてればいいの!」

「はは、そうだな。キリがないな」

 奈希への好きもキリがない、というのは言わないでおこう。

「あと自分のことも大切にね」

「もちろんだ」

「私のことも大切にね」

「もちろん」

「~~~♪」

 手を繋いで、と言わんばかりに手を差し出してくる。

「じーーー」

「分かったから」

「♪」

 可愛い奴だ。


 ◇ ◇ ◇


「やっと着いた~!」

「疲れたな」

 もう時間も遅いということで奈希は俺の家に泊まるということになった。

「もうここから動けないー」

 ベッドに寝転がって動かない。もう十一時なのに風呂にすら入っていない。

「奈希ー、お前が風呂入ってくれないと俺が入れないんだ」

「んー」

「ほら早く」

「ひゃー!襲われるー!やだー!」

「はいはい、お風呂行きますよー」

 駄々をこねる奈希を無理やり持ち上げる。

「あ、え?ちょっと、なんでお姫様抱っこなの!?」

「軽いな」

「『軽いな』じゃなくて!」

「はい、風呂入れ」

 腕から奈希を放すと、ポカンとした表情を浮かべている。

「……結構力あるんだね」

「いや、奈希が軽いから」

「え、私ぜんぜん軽くないよ?」

「いや軽い」

「ふーん、そっか」

「じゃ、俺はリビングいるから」

「一緒に入る?」

「遠慮しとく」

「ちぇー」

 さすがに一緒に風呂は……と思うが、本音はめっちゃ一緒に入りたい。

「本音は言えねえよなぁ……」

 自分の本心と葛藤しながらリビングで過ごしていると奈希がリビングへ戻ってきた。

「あれ、早いな」

「そうー?」

「女子はもっと風呂は長いものかと」

「楓雅が待ってるからすぐ上がっただけだよ」

「なんかごめん」

「あはは、いいよ別に」

 俺はここでふと思ったことを口にする。

「てかその髪の毛、乾かすのどれくらい大変なんだ?」

「そりゃあもう、大変どころじゃないよ」

 腰辺りまで伸びたサラサラで艶のある黒髪、思わず見惚れてしまう。

「綺麗だな」

「き、急に褒めないでよ……!照れちゃうでしょ……」

「ごめん」

「謝らなくてもいいんだけど、その……急にそういうこと言うのはナシ!」

「わ、分かった」

「じゃ、はい」

 そう言ってドライヤーを差し出してくる。

「乾かせと?」

 黙って首を縦に振る。

「分かった」

 ドライヤーの電源を入れると奈希の髪がなびく。

「……」

 やっていることがまるで恋人のようだ。いや、恋人ではあるんだけど。

 そうしてお互い無言でドライヤーの風の音を聞く。

 十分ほどしてようやく髪が乾いたとみた俺はドライヤーの電源を切った。

「ありがとー」

「一人で乾かすの大変だな」

「だから言ったでしょ?大変どころじゃないって」

「よく理解できた」

「じゃあ乾かしてくれたから、ご褒美のぎゅーしてあげる」

 俺が返事をする暇も与えずに胸に飛び込んでくる。

「……抱きつきたかっただけだろ」

「せーかい」

「……」

「……そろそろ風呂入りたいんだけど」

「あ、そうだった」

「そう言うんなら放してくれ」

「しょうがないなぁ」

「じゃあさっさと入ってくるわ」

「お早めにね。寝るの待ってるから」

「おう」

「じゃあ私、寝室行っとくね」

「了解」

 着替えをもって俺は浴室へ向かった。

 十五分ほどで風呂から上がり髪の毛を乾かして、奈希の元へ向かう。

「奈希ー」

「はやくはやくー」

 寝室へ行くと既に奈希はベッドに寝転がっていた。

「ベッド狭いけど一緒に寝るのか?」

「当たり前でしょ。ほら、はやく」

 どうやら一緒に寝るのはもはや当たり前らしい。ちょっと前じゃ考えられなかったな。

「はーやーくー」

「分かった分かった」

 奈希に急かされ俺もベッドに横になる。

「はぁ~幸せ~~~」

 横になるやいなや奈希に後ろから抱きつかれる。

「いい匂いする~」

「そんないいもんか、俺の匂いは」

「もう、最高」

 もしかしたら奈希には変態の素質があるのかもしれない。時々それを感じる時がある。時々じゃないかもしれない、多々かもしれない。

「じゃあおやすみ、奈希」

「うん、おやすみ楓雅」

 俺は目を閉じる。

 ……そうしてしばらく経った後、俺はまだ寝付けないでいるのだが、

「楓雅、起きてる? ……大丈夫そうかな」

 大丈夫そうってなにがだ?嫌な予感がする。

「ちょっとだけだから……良いよね」

 ちょっとだけだから……?

 奈希の吐息が俺の耳に当たる。

「……っちゅ」

 俺の唇から奈希の柔らかい感触が伝わってくる。

 しばらくしてその感触が俺の唇から離れた。

「バレてないよね……」

 何とか寝ているふりをできたみたいだけど、さすがに驚いたし緊張した。

「おやすみ、楓雅」

 奈希が布団を再度かけてくれた。そういうところは本当に優しくて好きだと再度思う。けど今回のこれは……

「奈希」

「ひゃぁっ!?」

「わざわざ隠れてしなくても、言ってくれればいいからな」

「あ、う、うん……」

 俺はそう言うと、さっきの緊張のせいかすぐに眠りに落ちた。

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