表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
21/36

男の悩み

 七月二十三日 土曜日 大崎楓雅


「詩葉、たびたびすまん。俺はどうしたらいい」

 結局、好意を打ち明けるタイミングがなく、詩葉にまた相談に乗ってもらっている。

「どうしたらいいって言われてもなあ……」

「あ、そういや昨日、奈希と服を買いに行くって言ったと思うんだけど、帰りにな、すごいことが起きてしまった」

「す、すごいこととは……?」

「奈希に、『ぎゅーの手』って急に言われて、手を広げてきたんだけどよ」

 あれは……相当に可愛かったな……もう一度見たい。

「それでそれで?」

「ぎゅーしちまった……」

「ぎゅー……だと」

「……ピュアすぎて尊死とうとしする」

「尊死ってなんだ?」

「いや、こっちの話。要するに奈希ちゃんにハグしてって言われて、してしまったと?」

「その通りでございます」

「もう付き合っちゃえばいいいのに」

 俺もそうしたいよ……!

「そんな簡単に言うなよ!それができないから困っているんだ」

「うーん、そうだよね。小説の世界なら勇気を出して告白!そして晴れて結ばれるってオチだけど、そうもいかないよねえ」

 詩葉って隙あらば本の世界の話を持ってくるよな。

「あと、一つ思ったんだけど言っていいか?」

「ん?どうしたの?」

「詩葉、お前最近ちょっと性格変わったか?」

「うーん、多分元々の性格は今の方だよ。心打ち明けたって感じ?」

「そういえば人見知りって言ってたな。けどそんな変わるもんか?」

「え、そんなに変わってるかな?」

「変わってるな。なんというか、めっちゃフランクになったな」

「でも、そっちの方が話しやすいよね?」

「ま、まあそうだけど」

「じゃあ、問題なしだね。ほら話の続きしよ」

 無理やり話題を変えられた気がするが、まあいいか。

「告白するべきだよな……」

「早くしたほうがいいね」

「だよなぁ」

 できれば困っていないんだけどな。

「月曜日、決行するよ」

「急だな」

「会う頻度減っちゃうでしょ?ならもうやるしかないよ」

「そうだな。やるしかないな」

「そうだよ!やるしかないんだよ!」

 やるしかない。そうだやるしかないんだ。



「では、作戦会議を始める!」

「よろしくお願いします!」

「まずは当日のシチュエーションから!」

「はい!」

「私が帰って二人きりになった時にいい感じの場所に連れ出す!」

「なるほど!」

「次はそこまでの流れだな!」

「はい!」

「まずは島に戻るまでは純粋に遊びを楽しむ!帰りのフェリーで少し思わせぶりな行動をしておくこと!」

「思わせぶりな行動と言うと……?」

「例えば、手を繋ごうとするとかだな」

 そう言えば少し前、奈希に手を繋がれたな。それを俺からやるってことだな。

「……厳しいが、やるしかないっ!」

「いい志だ!」

「あとは何をすればいいですか先生!」

「あとは、気合いと根性だけだ!」

「あ、根性論なのね」

「あ、うん。ごめん。色々言おうと思ったけどそんなに言うことなかった」

 ないんかい。

「とりあえず自分の気持ちをまっすぐに伝えたら大丈夫だよ」

「大丈夫かな」

 もしも失敗したら……考えたくもないな。

「そんなに心配することはないよ。だって絶対、奈希ちゃんも楓雅くんのこと好きだし」

「改めてそう言われると恥ずかしいな」

「楓雅くん、ピュアだね。すぐ顔赤くするし」

「……俺、奈希といる時に顔赤くなってたりしてないか?」

「うーん、しょっちゅう真っ赤っかになってるよ。奈希ちゃんも多分気づいてるよ」

「まあ、いっつもそれでからかわれてるからな」

 流石に恥ずかしいな……多分、俺が思っている以上に俺はすぐに顔が赤くなるんだろうな。

「あはは…………取られちゃうな…」

「うん?何がだ」

「いや、なんでもない。応援してるよ」

「ありがとう。頑張るよ」

「とりあえず気持ちを落ち着けるために本の感想でも言い合おうか」

「おう。そうしよう」

 最近は詩葉と小説の感想を言い合うのが日課になってきた。相談も何回も乗ってもらっているし、必然とそうなった。


 一時間後


「んー満足満足〜!」

「熱弁しすぎたな、お互い」

 一緒に語り合える奴がいるとやっぱりいいな。つくづくそう思う。

「だね〜。でも、あんまり私と一緒にいると奈希ちゃん嫉妬しちゃうから程々にしとこうね」

「やっぱり女子ってのは嫉妬する生き物なのか?」

「うーん、奈希ちゃんみたいな普段明るい子が案外嫉妬しやすかったりするんだよ」

 今までも何回か嫉妬してそうな素ぶりはしてたしな。確かにそう言われればそうなのかもしれない。

「私だってするんだよ」

「詩葉は今まででその、そういう感じの人はいたのか?」

「私?うーん、高校入ってから一度だけ」

「やっぱりその人が他の人と話してたら嫉妬したり?」

「そりゃあするよ。でも私、自分からそんなグイグイ行けるタイプじゃないから、叶わなそう……」

「その言い方だと現在進行形…」

「あ!いやもう今は別に……多分」

 これは聞かないほうが良かったかもしれない。申し訳のないことをした。

「まあ、いつも相談乗ってもらってるし、なんかあったら言えよ」

「うん……」

「じゃあ今日はそろそろお開きにするか」

「そうだね。もう外も真っ暗だし」

「今日はありがとうな」

「こちらこそ」

 詩葉に手を振って、俺は帰路についた。



 詩葉には申し訳のないことをした。誰だって聞かれたくないことはあるだろうに深掘りしてしまった。

「やってしまったな……」

 月曜日謝ろう。

 この調子じゃ奈希に告白なんてできたものじゃないぞ。

「告白する時のセリフでも考えるか……」


「好きだ!付き合ってくれ!」


「うーん、これは直球すぎて俺が言えないな」

 これが簡単に言えたら苦労していないしな。


「初めて会った時から君が好きだった……その瞳に俺は惚れたんだ……」


「……」

「キモすぎ」

 自分で言ってて恥ずかしいわ、こんなの。キモすぎだろ。

「やっぱ、直球が一番だよなあ」



 色々考えているうちに俺は眠りに落ちていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ