如月奈希の日記
六月九日 金曜日
今日は転校後、初の登校日。
母の言う、血のつながった兄の大崎楓雅くんと会えるか心配だったけれど、偶然同じクラスで、それに席も前後だった。最初話しかけた時は結構怖い雰囲気だったけど、明るく振る舞ったらそれなりに話してくれた。あとちょっとだけ嘘を吐いちゃった。
普段は一人でいるみたいで少し気の毒に思った。多分、自分から人と関わろうとしてないからだよね。私がなんとかしてあげないと。今まで家族と過ごせなかった分、私が幸せを分けてあげる。そして一緒に幸せを積み上げる。私の使命。
明日会う約束をなんとかしたから、明日はもっと仲良くなって色々話を聞こう。
六月十日 土曜日
今日は楓雅と結構仲良くなれた。それにしてもコーヒーしかない自動販売機なんて初めて見た。田舎だったら意外とあるものなのかな。
展望台からの景色は本当に綺麗だった。悩みを全て忘れ去れるぐらいに綺麗な眺めだった。なんというか、落ち着く場所だった。
楓雅に今日のことを聞いたら「楽しい」って言ってくれたからちょっと嬉しかった。ちょっとは力になれたかな。でも、これからもっと楽しいって思わせてあげないと。家族と今まで居られなかった分、私が全力でその失った部分を埋める。それが私の使命だ。この使命は忘れないように心に留めておく。
明日からも頑張ろう。
六月十一日 日曜日
今日は楓雅と一緒に島中を回って遊んだ。楽しかった。
楓雅が制服以外に私服を持っていないのには流石の私でもびっくりした。でも、私がばっちり楓雅に似合う服を選んであげたから何問題なし!服屋さんに行く途中で、勢いで手を掴んだら、恥ずかしがられた。そりゃそうか、女子には慣れていないだろうしね。
服を買った後は公園に行って、そこで一緒にご飯を食べた。私の手作り弁当も喜んでもらえたみたいでよかった♪
その後は砂浜に行ってお城を作った。砂遊びなんて何年もしてなかったから子供に戻ったような気分だった。
最後に楓雅に無理を言って展望台に行った。そこで楓雅と夜景をバックにツーショットを撮った。思い出はやっぱり残しておかないとね♪
明日はもっと仲良くなれたらいいな。
六月十二日 月曜日
今日は気付いたことがある。それは楓雅が思っていた以上に頭がいいってこと。色々とノートを勝手に見させてもらったけど、どの問題も完璧に答えていた。全教科できるオールラウンダーだった。
そして今、帰り道に楓雅にちょっと強く言ってしまってすごく気まずい。「楓雅じゃないとダメなの」はちょっとやばい発言だったかな……いつも通り元気に接したら多分、楓雅もいつも通り接してくれるよね。
うん、きっとそうだ。楓雅だもん。
六月十三日 火曜日
ああ、どうしよう。
今日、私は気がづいてはいけない感情に気がついたのかもしれない。
いや、気がつきたくなかったのかもしれない。
どうしよう。どうしよう。どうしよう。
こんな感情、持ったらダメなのに。
明日からどう接すれば……
考えていてもしょうがない。
この感情は忘れて、いつも通りに接しよう。そうしよう。
六月十六日 金曜日
あの日以来、私は楓雅にずっと同じ感情を抱いてしまっている。忘れるなんて無理なんだ。
やっぱり私は楓雅を好きになってしまったみたいだ。
そして、私はその現実から逃げるようにあの展望台へ行った。学校をサボって。学校をサボるなんて初めてだ。
やっぱりあの場所は落ち着く。何もかもを忘れて時間を過ごせる。
でも、なぜだろう。今も自然と涙が溢れてくる。本当になぜなんだろう。
六月十八日 日曜日
今日は楓雅と二人きりで遊んだ。
家族として接するようになる前に、男女として思い出を残しておきたいと思ったから遊びに誘った。楽しかった。ずっとこの時間が続けばいいのに、なんて思ってしまった。
私は楓雅と家族として過ごすためにこの島に転校してきたのに。
本当に馬鹿だなあ、私ってやつは。すぐに打ち明ければよかったものを先延ばしにしてしまった結果がこれだ。タイミングを逃す前に言わないと。
明日、言おう。そうだ、悩む必要はない。私は楓雅の妹なんだよー!って軽く言うだけ。
その一言が言えれば、全て解決するんだ。
六月十九日 月曜日
今日は新しい友達ができた。
やっぱり私が妹であることは打ち明けられなかった。じゃあ、友達を作って楓雅に対する想いを少しでも減らせばいいと思った。それで詩葉ちゃんに話しかけた。動機は最悪だけど、詩葉ちゃんはとてもいい子で、友達になれてよかった。
詩葉ちゃんと関わってたら、少しは楓雅への想いが薄れるかな、だといいな。
最近、この日記を書くのも辛くなってきた。過去の自分が書いた字を見ると、今の私は何をしているんだって後悔してしまう。
もう書くのやめようかな……
辛くなるくらいならやめたほうがいいに決まってる。そうだよね。楓雅。楓雅ならそう言う。
明日からはもう書かない。




