私を貴方の好きにしていいから、この子だけは助けてあげて!
俺の目の前で、若い女が俺にこう言った。
“私を貴方の好きにしていいから、この子だけは助けてあげて!”
彼女が助けようとしているその子は、“彼女の娘だ。”
俺は取り立て屋で、彼女の旦那が作った借金を取り立てに来ていた。
今! 俺の目の前に居るこの女の旦那が、多額な借金を残して忽然と
消えたらしい。
俺は金さえ返してくれれば、この女をどうにかする気もないし、
幼いこの女の娘にも手を出すつもりもなかった。
・・・ただ、金になりそうな物はすべて売りさばき、その売った金を
返済に回していたのだが、4畳半のぼろアパートの部屋には既に何も
残っていなかった。
ガランとした部屋に、“この女と幼い娘の2人が居るだけ。”
狭い部屋なのに、家具もなんもないとやたらと広く俺には見えた。
『お願いです! 私の事はどうしてもらってもいいから、この子にだけは
手を出さないで!』
『奥さん? 俺はね、ただ金を返してもらえればいいだけだから、
なんか売れそうな物はないのか?』
『・・・もう、ないんです、』
『親はどうなんだよ! お金借りたらどうなんだ?』
『もう、私の両親は他界していますし、お金なんてありません、』
『そうなってくると? 俺も手段選べなくなっちゃうんだよな~
“体売って稼ぐしかないんじゃないの?”』
『・・・・・・』
『それは嫌だよね! じゃあ、頭フル回転に働かせて考えてよ。』
『お願いです、私達親子を助けてください!』
『“ごめんね、俺に情ってモンはないんだ! 金さえ返してくれたら、
俺だってこんな事言わなくて済むのにね。”』
『“・・・じゃあ、私の臓器を売るのはどうですか?”』
『“臓器を売るか? そういうやり方もあるよな! 分かった、今から
俺と一緒に来てよ! 闇医者にアンタを紹介するからさ。”』
『・・・あぁ、は、はい、』
『“最後に娘になんか言ってやったらどうなの? もうこの家に帰って
来れないかもしれないよ。”』
『わ、分かりました、あのね? ママ! 少しだけ遠くに行く事になったの!
でも必ずココに戻って来るから! ママを信じて待っててくれる?
『・・・ううん、でもこのオジサンと一緒に行くの?』
『そうよ!』
『どうしてわたしも一緒に行けないの?』
『本当にごめんね、ママが不甲斐ないからこんな事になっちゃって、
でももう大丈夫だから、何にも心配しなくていいのよ。』
『うん。』
『じゃあ、行くか!』
『えぇ、』
・・・俺はあの女の言った通り、闇医者に頼み! 取り出せる臓器を全て
取ってもらう事にした。
ただ、“俺が頼んだのは闇医者だ! 医師免許なんか持ってない奴だから、
女は、出血多量で死んでしまった。”
でもさ? あの女は旦那の作った借金を全部返してくれたんだ。
俺は情はないけど、あの女の娘を想う心意気みたいなモノに心動かされた
んだよな、いい母親じゃないか。
だから、俺はあの女の娘を引き取り、自分の子として引き取る事にしたんだ。
血は繋がってはないけど、俺にも守るモノができたって事だ!
だから俺は、この仕事を足を洗い真っ当な仕事をしようと決めたんだ。
“あの子の為にも、いい父親になろうと考えてね。”
まあ、いつか? あの子にもすべてを話す時が来るが。
それまでは俺がこの子を責任を持って育てないとなとなって思っている。
慣れない父親だが、あの子の為にも俺は長生きしないとなってね。
最後まで読んでいただいてありがとうございます。