第四話 命をかけた超過酷試験
城に集まったのは総勢五百十四人。
入口で「四百五十一」と番号が書いてある紙をもらった。
私たちの番号は連番だった。
そわそわしていると、見るからに厳しそうな試験官が現れた。
「けしからん! 貴様! 神聖なる城に、猫なんぞ連れて!」
普通に怒られた。
「僕は猫じゃない! 風の精霊、シルフィだ! お前こそ、神聖なる大地に小汚い顔して生まれやがって!」
「ぐっ……! 風の精霊だと……! まさか、今年の受験生に精霊持ちがいるとは……」
ばつが悪そうにする試験官。
物知りなナターシャがこっそり耳打ちをした。
「この世界に精霊は四人しかいないんですよ……? その一人を持つアナは、特別なのですよ」
いつの間にか、すごい精霊を携えていたようだ。
試験官は正面に立ち、大声を放つ。
「貴様ら! 私はハイマン! 試験について説明する! 今年は三次試験まであり、不合格になったものは即刻帰郷してもらう!」
一つ目の試験は「みかがみのうつし世」というものだ。
これは、ただ鏡の前に立てばいいだけらしい。
大広間の真ん中に置かれた大きな姿見に、一人ずつ立っていく。
鏡に映る自分の表情で、その人が恐怖しているのか、はたまた闘志に燃えているのかが分かるそうだ。
順番が来て、私も鏡の前に立った。
「なんなんだ、お前は……!」
鏡には、前世の弓を引く私の姿が映っていた。
転生する直前の大会の様子だ。真剣な眼差しで弓を引いている。
確かこの時は、シュークリームについて考えていた。
鏡は本物だったようだ。知らぬ存ぜぬで、元の位置に戻った。
全員が終わるまで、私たちはシルフィと一緒に遊んでいた。
合格発表が行われる。
受験者の番号が書いてある紙が壁に張り出された――。
「あった」
ドキドキ感を楽しみながら番号を見つけたかったが、たまたま目に飛び込んできて、すぐに見つけてしまった。
歓喜の声、悲痛の叫び。会場内は混沌としていた。
足元のシルフィが見上げながら言う。
「アナ……。これはさ、一筋縄ではいかないかもしれないよ……」
「確かにそうね。ここに張り出されている番号は、五十程しかないものね……」
ふと、私の前を叫ぶ男性が横切った。
「危ない――!」
呼び止める声もむなしく、男性は数十メートルある会場から飛び降りた……。
会場が一気に引き締まる。
私は情だけの軽い気持ちでここにいるが、言われていた通りチャンスは一度しかない。そして、ここにいるほとんどの人が、人生をかけて来ているのだ。
「ちょっと、気合い入れようかな……」
五百人中、残ったのはたったの五十人だった。
マリーナ、ナディア、ナターシャの三人も受かったようで、ホッとした。
二つ目の試験はすぐに始まった。
知恵の試練「薬剤調合」だ。
見たこともない横並びの文字が並べられているレシピが一人一枚配られる。
「リクカト、ドベルダブ、サユコド……なにこれ、シルフィ分かる?」
「あぁ、どれも野草の名前だね! 僕ほどの風の使い手になると、そんなの簡単さ!」
「ありがとう、頼りになるわね」
そして、二人一組になるよう指示され、私は先程耳打ちをして精霊持ちについて教えてくれたナターシャと組んだ。
「そこに書いてあるのはどれも野草の名前だ! それを摘んで、薬を作れ!」
会場内にホッとする声が広がる。
しかし次の瞬間、容赦のない一言が飛んできた。
「作った薬を二人で交換し、飲み合え! 近隣の薬草には、死に至るようなものもある。騎士たるもの、それくらいは見極められるだろう!」
どういう意味か一瞬分からなかった。一人の受験生が手を挙げて質問する。
「それって、調合に失敗すれば死ぬかもしれないということですよね……?」
「それ以外に何がある! 無駄な質問をするな! 明日の正午までに準備するように! 騎士たるものぼさっとするな! 散れ!」
私たちは試験官の精神状態を疑いつつも、その場から離れた――。
あいつ、控えめにいってヤバいやつだ。
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