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幼馴染との距離の詰め方  作者: 広晴
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第14話 俺たちのクリスマス(前)


 クリスマスが迫る12月の初旬。

 期末テストの返却もすべて終わり、地獄の冬休みを回避した俺は、夕飯後、今日も日課になったジョギングに出た。

 今日は仕事が早く終わった父さんと一緒に走っている。

 いつもぐるぐる周回している公園に着いてからは互いのペースで走り、一息ついた際に珍しく父さんが自販機でジュースを奢ってくれた。


「彼方、期末テストお疲れ様。中間からだいぶ持ち直したって?」


「うん。クリスマスと年末年始はのんびりしたかったからね」


「そりゃ良かった。中間の時は母さんが怖い笑顔になってたから、できるだけ維持してくれよ」


「そうする。また休みに農夫 兼 修行僧になるのは勘弁して欲しいからね」


「はは、あの時はなぁ・・・。まあそれは置いといて、これ。日向には内緒な」


 父は味もそっけもない茶封筒を手渡してきた。

 中身を確認すると、お札が1枚入っていた。


「期末テストのごほうびと、正式に彼女ができたお祝いだよ。クリスマスの軍資金がいるだろ?」


「マジで助かる。ありがとう父さん」


「ああ・・・それとその、なんだ。もう、えっちは、したのか? ああ、いや! 返事はしなくていい! ただ、もしするんなら、ゴムは買っとけ。これは絶対だ。その金額も入ってると思え」


 真剣な顔で言ってくる父さんに、「彼女が意味わからんレベルで箱買いしてるから心配ゴム用デス!(てへぺろ)」とは言えねえ。


「ああ、うん、そのありがとう。絶対間違いの無いように、気を付けるよ」


「こういう時、傷つくのは常に女性だ。男は言ってしまえばやり逃げができる。できて、しまう。お前はそんな男になるなよ」


「分かった。肝に命じとく」


「うん。信用してるよ。でもゴムだって絶対じゃない。何かあったらまず僕たちに相談しなさい」


「分かった」


 うん、と父さんは頷いて缶コーヒーを飲み干して、伸びをした。



◆◆◆



 俺は悩んでいた。

 クリスマスプレゼントについてだ。

 小学生の時は、毎年、小さめのぬいぐるみを贈っていた。

 去年は小遣いを貯め、うちの家族全員からも募金を頂き、須藤家一同より、としてあのシャチ君を贈った。


 今年は今までとは違う。恋人なのだ。恋人、なのだ!

 プレゼント候補としてまず頭に浮かんだのはアクセサリ、指輪だ。

 だがそれは結婚の申し込みまで取っておくべきでは?

 では他のアクセサリか?

 こんな高度な問題は判断がつきかねる。

 いつもの愛の軍師は受験を控えて冬ごもり前のクマのように気が立っているので近寄りたくない。


「というわけで母上」


「何でもいいんじゃない?」


「雑!」


「実際、何でもいいのよ。惚れた男が真剣に選んだものならね。金額やセンスで男を判断するような安い女じゃないでしょうが、双葉ちゃんは」


「お、おう」


「せいぜいしっかり悩んで選んでやりなさい」


「分かった。サンキュ」


「ハーゲンダッツ」


「・・・何味?」


「ラムレーズン」


「・・・御意」


 結局、振出しか。まあ下手にカッコつけず、自信持って選べばいいか。



◆◆◆



 土曜日の今日は双葉が友達と約束があってフリーになった。

 部屋の中で悩んでいてもいいプレゼント案は出そうになかったので、ヒントを求めて街へ出た。いいのがあればそのまま買って帰ろう。


 街を一人でぶらつくのはいつぶりだろう。

 解放感は欠片も無いが、双葉とのクリスマスへの期待と、肌寒いような寂しさが少し。


(目当てはアクセサリ、次点でホビーショップでぬいぐるみかな)


 というわけでやってきましたアクセサリショップ。

 ガチの宝飾店は明らかに予算が無理だろうから、外から見て若い女性がたくさん入ってるっぽい店へ。

 入りにくい上に、居心地わるぅー!

 きょどるな、頑張れ俺、ハートを強くいこう。

 なんとなく店内を眺めていた俺に若い店員さんが話しかけてくれた。

 よし、頼ろう。


「いらっしゃいませー。贈り物ですか?」


「あ、はい。彼女にクリスマスプレゼントを考えてます」


「イメージとか何か決まってらっしゃいますか?」


「えーと、5000円以内で、普段使いできるシンプルなものを」


「指輪、ピアス、イヤリング、ブレスレット、ネックレスとかが普段使いしやすいですね」


 指輪はパス。ピアスは穴開けないとだからダメ。イヤリングはちょっとイメージと合わない。ブレスレットかネックレスだと・・・んん・・・なんとなくネックレスで!


「じゃあ、ネックレスでおすすめありますか?」


「ネックレスはこっちですねー。シンプルなもので予算に合うのは、この辺とかどうでしょうか」


「けっこう種類がありますね。・・・しばらく悩んでいいですか?」


「はい、もちろん。いっぱい悩んでくださいね」


 笑顔の素敵な店員さんのお陰でだいぶ候補が絞れてきた。

 チェーンは銀だな。

 ペンダントトップのデザインはハート、星、花・・・うーむ。

 お、これ可愛いな。

 値段、よし大丈夫。

 ワンポイントのところの色違いがあるのか・・・。

 双葉が身に着けてるイメージをしてみよう。

 ・・・。

 ・・・どれでも似合うな・・・。

 可愛すぎるだろ、俺の彼女。

 ・・・。


「あの、すみません、これお願いできますか?」


「はーい! 包装していいですか?」


「お願いします」


 プレゼントよし!

 これでクリスマスの準備は完了だな!


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