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7話ー不穏なアノル海と悪魔の子

世栄玲奈はお店をいつも通りの時間に開けた。

今日は朝からお客さんが来た。

世栄玲奈は「いらっしゃい」と言った。

しかし、その風貌を見て驚いた世栄玲奈は思わず「英子!?」と叫ぶ。

その女性は言う「なぜ、私の名前が分かったのですか…」と驚いていた。

しかし、餘部英子(世栄英子)はあの事件の時に死んだはずだった。


その英子という女性は言う。「魔法ラジオを直して欲しいのですが…」

世栄玲奈は「魔法石の故障だと、1万リベル以上は確実に掛かるけどいいかな?」と言う。

英子は「問題ありません…」と答えた。

「じゃあ、修理依頼契約書にサインしてね?」と言って紙を渡した。

英子は「現物を見なくて良いのですか?」と言う。

世栄玲奈は「一応、見せてもらおうかな?」と言って英子が持ってきた、ラジオを見る。

一般的なタイプの円柱状の人工ルビーはめ込んだ魔法ラジオだった。


英子はサインをした紙を世栄玲奈に渡す。

世栄玲奈は原本の側の持って、控えを英子に渡した。

名前は下村英子だった。



その頃、魔法界。

魔法の使えない人が多く住む地域に一つの塩湖がありました。

その塩湖の名はアノル海。


魔法界での産業発展のために、灌漑農業のために。

アノル海に繋がるほぼ全ての河川の水を使用して、農地を築くことを計画したのでした。

そこから、魔法界では魔法の使えない人を一般界へと強引に送り込もうとして行くのでした…。


次第にアノル海は干上がって、漁業も地下水も枯れて。

そして、湖岸にこびりついた塩によって喘息を患う人が増えて…。

その影響でアノル海沿岸地域にいた魔法を使えない人たちは、一般界を目指す羽目になるのでした。





下村英子から依頼された魔法ラジオは、魔法石では無く同調回路側の故障だった。

新品の同調回路と変えて、受信が出来ることを確認して世栄玲奈は電話を掛けた。

「はい、もしもし」と下村英子は答える。

世栄玲奈は「ラジオ修理工の世栄と申しますが、下村さんのお電話で間違いないですか?」と言う。

下村英子は「下村です、ラジオもう直ったのですか?」と声が明るくなった。

世栄玲奈は「直りました。暇な時に取りに来て下さい」と言った。

下村英子は「分かりました。今日の夕方に取りに行きます」と答えた。


下村英子は宣言通りに夕方に取りに来た。


世栄玲奈は「同調回路の故障だったので、3千リベルです」と言った。

下村英子は千リベル紙幣を三枚出した。

世栄玲奈は「では、ちょうどいただきます」と言ってレジスターに現金をしまった。

下村英子はラジオを大切そうに抱えて「ありがとうございました」と言って深々と頭を下げた。


慌てて斗南華が世栄玲奈のラジオ修理工房に駆け込んできた。

世栄玲奈は言う。「ラジオの修理?」

斗南華は慌てた様子で「悪魔の子が向こうで生まれた」と言った。

世栄玲奈は聞き直した「悪魔の子?それは本当か!???」

斗南華もかつては魔法界では魔法能力の強さから、悪魔の子と呼ばれていたのだった。

斗南華は「本当よ。私ではもうあの子に敵わないわ…」と言い悲しそうに遠くを見つめた。

世栄玲奈は「これで足かせの無くなった魔法界は本格的にこっちのコミュニティにちょっかいを掛けてくる可能性がありそうね…」と言った。

斗南華は「そうはならないように、私も努力はするわ…」と言った。

世栄玲奈は「そういえば、その悪魔の子の年齢はいくつなの?」と聞いた。

斗南華は「15歳だわ…。だからあと3年…」と答えた。

世栄玲奈は「その子の名前は?」と聞く。

斗南華は「川島なつみって名前で女の子らしい」と答えた。

世栄玲奈は「図南家や斗南家の出身じゃ無いと言うことは、こっちに送り込まれる可能性は高そうだ…」と言った。

斗南華は「縁起でも無いこと言わないで…」と言ってコーヒーをすすった。

世栄玲奈は「華、店番ちょっとしてて?」と言う。

斗南華は「なんでよ」としたくない様子だった。

世栄玲奈は「落ち着かないから外で煙草を吸ってくるから」と言ってそのまま外に出た。

斗南華が「なんで!私はいいって言ってない」とかほざいているのが聞こえたが聞こえないフリをした。


煙草を吸い終えて、店番に戻る。

世栄玲奈は店番を代わりにしてくれていた斗南華に言う。「ありがとう」

斗南華は「本当にもう…」と言いながらカウンターから出てきた。

そして世栄玲奈がカウンターに入る。


まもなく閉店の時間だった。

斗南華は帰り支度をして、世栄玲奈も帰る支度をした。

閉店時間。

世栄玲奈はシャッター閉めて、斗南華と一緒に裏口から出た。

裏口の戸に鍵を掛ける世栄玲奈。

斗南華は「今日は駅まで一緒に歩いて帰らない?」と言う。

世栄玲奈は「いいけど、なんかあった?」と聞く。

斗南華は「いいからいいから一緒に行こ?」と歩き出す。

世栄玲奈はそれに続くようについて行った。

斗南華は駅とは逆方向の歓楽街へと進んでいく。

世栄玲奈は「駅とは逆方向なんですが…」と言う。

斗南華は「いいからいいから…」と言って、どんどん奥へと行く。

その通路の突き当たりに、喫茶店があった。

その喫茶店は誰も人が入っていない。

斗南華は「マスター。アイスコーヒー一つ」と頼んだ。

世栄玲奈も「じゃあ、僕はホットコーヒーで」とホットコーヒーを頼んだ。

斗南華は言う。「このお店は純喫茶なんだけど、周りはお金に目が眩んでお酒を出すようになった元喫茶店の居酒屋ばかりになったの…。だけど、そのおかげでここは穴場の喫茶店になった訳なんだけど…」と言った。

マスターはホットコーヒーとアイスコーヒーを運んできた。

斗南華はアイスコーヒーを。

世栄玲奈はホットコーヒーをすすった。


斗南華は砂糖を入れたのに対して、世栄玲奈はブラックのまま飲んでいる。

斗南華は言う。「苦くない?ここのコーヒーはおいしいけど、結構苦いでしょ?」

世栄玲奈は「ちょうど良い苦さですね?」と言う。

斗南華は「舌が大人なのね…」と溜め息を吐いた。

二人はコーヒーを飲み終えた。

世栄玲奈は煙草に火を付けようと、灰皿を探すが見当たらない。

机には「禁煙」の文字。

斗南華は言う。「さては?煙草が吸いたくなったな?」

世栄玲奈は嘘を吐く理由もないので「えぇ…」と答えた。

斗南華は言う。「お会計お願いします」

マスターが伝票を持ってきた。

斗南華はチケット2枚をマスターに渡した。

マスターは言う。「いつも、ありがとうね」

斗南華は「こちらこそ」と言って世栄玲奈と一緒にお店を出た。

世栄玲奈はお店の外で煙草に火を付けて、携帯灰皿に灰を落として1本を吸い終えた。

斗南華は何も言わずに待っていてくれた。

吸い終えたタイミングで斗南華は「じゃあ、行こっか」と言って、世栄玲奈と一緒に駅に向かった。


次の日、世栄玲奈はいつもの時間にお店を開けた。


世栄玲奈は暇なのでカウンターで、ぐでーとしていた。

朝からお客が来ることは珍しかった。

世栄玲奈は「今日も暇だ…」と呟いた。


お昼頃、斗南華が店にやってきた。

世栄玲奈は姿勢を正し「どうしたんですか斗南中将」と言う。

斗南華は「私の軍での階級を覚えたからって、そうやって呼ばないで…」と明らかに嫌だという反応をした。

世栄玲奈は言う。「今日はどういったご用件で?」

斗南華は「今の仕事を辞めるために、ここで半田付けの練習をさせてよ」と言う。

世栄玲奈は「まぁ、今はジャンクヤードにジャンクな部品しか無いし、練習するだけなら構わない」と言って斗南華をジャンクヤードへと案内した。

そして、世栄玲奈は自分が使っているのと同型の半田ごて(予備)を渡して練習させることにした。

世栄玲奈はカウンターで店番に戻った。


しばらくして、ジャンクヤードから斗南華の声が聞こえた。

世栄玲奈はただ事じゃないと思い、店の奥のジャンクヤードに行く。

斗南華は「全然はんだが溶けない…」と泣いていた。

世栄玲奈は半田ごての正しい持ち方を教えて言う。「そこを持っていたら、やけどします。なので、持ち手のプラっぽいところを持って下さい」

斗南華は「玲奈だって、最初の頃は持つ場所間違えてやけどしていたのにー」と泣き出す。

世栄玲奈は顔を赤くして「まだ覚えてたんですか?だったら今のはわざと…」と言って、そのままカウンターの方へと逃げた。

後ろから斗南華の泣き言が聞こえたが、世栄玲奈は聞こえないフリをした。


世栄玲奈はお店を開けるが今日に限って、お客が全然来ない。

仕方ないので、斗南華がいるジャンクヤードな部品置き場に斗南華の様子を見に行った。

斗南華は真剣にテスターを持って基板とにらめっこしていたので、世栄玲奈は話し掛けずに店番に戻った。


しばらくして、お店に若い男性が来た。

格好的に軍人では無い。

その男性は「あのーここってノートPCも直して貰えますか?」と言う。

世栄玲奈は「直らない場合もありますが、一応、対応は出来ますよ?」と言う。

その男性はACアダプターとノートPCを出して「充電されなくなってしまって…」と言う。

世栄玲奈は言う。「預かり修理になるけど、いいかな?」と言う。

その男性は「構いません」と言った。

世栄玲奈はPC用の修理依頼契約書を出して「よく読んでからサインして」と言った。

男性はよく読んでから、それにサインをした。

世栄玲奈は「直ったら電話しますね」と言った。

そして、世栄玲奈はお店の作業台でネジ回しを持ってネジを緩めてノートPCの裏蓋を開けた。

電源の回路のあたりにテスターなどを当てる。

そして、インターネットに公開されている同型機種の回路図を見ながらテスターを当てて、電源の回路で故障している箇所を探し出そうとする。

ネットでよく壊れるって書いてあったコンデンサをテスターで触ってみる。

テスターの表示的に案の定ダメになっていていそうな挙動だった。

予備パーツ置き場から、同じ容量で耐圧の同じな新品コンデンサを探した。

ちょうど良いことにそれはあった。

それを小さいチャックつきの袋に入れて、まずはフラックスを塗って壊れたコンデンサを半田ごてで剥がした。

そして、新しいコンデンサをはんだで付けてからフラックスを洗浄した。

ノートPCが充電がされるかどうかを試した。

ちゃんと充電がされたので、一件落着だった。

時間が遅かったが、一応PCなので依頼主へと電話をしてみた。

世栄玲奈は「電子機器などの修理をしていている世栄と申しますが、鮎田さん携帯でよろしいでしょうか?」と言う。

鮎田海翔は「鮎田です、PCが直ったんですか?」と言う。

世栄玲奈は「そうですね、直りました。都合が良いときに取りに来て下さい」と言う。

鮎田海翔は言う。「いくら払えば良いですか?」

世栄玲奈は修理明細書を見て答える。「3000リベルですね」

鮎田海翔は「近いうちに取りに行きます」と言った。

世栄玲奈は「分かりました、お待ちしております」と言って電話を切った。



鮎田海翔は次の日の朝一で取りに来た。

世栄玲奈がお店のシャッターを上げているときに、ちょうど来た。

鮎田海翔は財布から3000リベルを出した。

世栄玲奈は依頼品のノートPCを持ってきて、症状が改善したことを見せた。

鮎田海翔はノートPCとACアダプターを鞄にしまって、「ありがとうございます」と言った。

世栄玲奈は「またのご来店をお待ちしております」と言った。


昼頃、斗南華が来た。

世栄玲奈は姿勢を正し敬礼し言う。「斗南中将!お待ちしておりました」

斗南華は「まだそれやるの…」と言った。

今回は嫌というより、呆れた様子だった。

斗南華はラジオを持ってきて「この辺の古いラジオ。直らないかしら?」と言う。

世栄玲奈は「僕に直せないラジオはないので」と言った。

世栄玲奈はラジオのネジを手慣れた手つきで外して、蓋を開けた。

世栄玲奈は「液漏れだから、電池ボックスの交換で直りそう、あとは魔法石と同調回路が生きて居るかどうか」と言った。

他のラジオも手慣れた手つきで開けていき。

「これはたぶん、同調回路か魔法石が原因で受信が出来ないんだと思うけど…、電池ボックスは見た目は問題ないし」と言った。

斗南華は言う。「じゃあ、頼むわ」

世栄玲奈は「一度にこんな台数だと、結構お金が掛かっちゃうけど良いかね?」と言う。

斗南華は「問題ないわ」と言って、お店から出て行った。

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