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3話ー看病と命令違反-拘束

餘部英子は目を覚ました。

これまでの記憶はあまりなかった。

世栄玲奈がお茶を餘部英子に持ってきた。

世栄玲奈は「あ?気づいた?すごい怪我だったけど、僕が回復魔法を掛けたおかげで割と早い回復だね?」と言った。

餘部英子は言う。「あの時なんで私を助けたの?」

世栄玲奈は「やっぱり昔は仲が良かったし、あの頃のようにとは言わないけど、対立をしない関係に戻りたくてね…」

餘部英子は言う。「あなた。変わってるね…。自分を殺そうとした相手を助けるなんて…」

世栄玲奈は「林檎を持ってくるから。逃げちゃダメだからね?」と言って階段を降りていった。

餘部英子は懐中時計で時間を見た。

時間は午後3時くらいだった。

餘部英子は玲奈に従って待つことにした。

玲奈は林檎と包丁を持って、部屋に戻ってきた。

そして、包丁で林檎を切り分けて皮むきを始めた。

餘部英子は「こうやってゆっくり話すのは久しぶりね…」としみじみと感じている様子だった。

世栄玲奈は林檎の芯を切り取って餘部英子へ差し出した。

世栄玲奈は「一緒に一般界に来て暮らしてみない?」と餘部英子に提案してみた。

餘部英子は「私には、まだそこまでの覚悟は無いわ…。家が潰れた頃の混乱期ならこっちに来ることも出来たかもしれないけど…」と言って玲奈の提案には乗らない事をそれとなしに示した。

世栄玲奈は「そっか…。そうだよね…。英子は向こうで安定しているもんね…」と言った。

そして、世栄玲奈は包丁を持って下の階へと降りていった。

綺麗に切り分けられた林檎が餘部英子の前には残っていた。

餘部英子は「安定かぁ…」と呟いてから、林檎を一つ手に取って食べた。

餘部英子は実際、全くもって魔法界での生活は安定していなかった。

今も因縁の王家に雇われて諜報に出ないと行けないほど、お金は無かった。

その結果、因縁の王家に世栄を名乗り続ける玲奈を殺せと言われてしまったのであった。

餘部英子は「対立しない関係…」と呟いて涙が出てきた。

餘部英子は斗南華に左目をやられたが、世栄玲奈が回復魔法で治してくれたようだった。

世栄玲奈が階段を上って部屋に近づく音がした。

餘部英子は泣き顔を見られたくないと思って、布団に隠れた。

玲奈は「英子いるー?」と聞くが返事は無かった。

世栄玲奈はすすり泣くような声を聞いて察して、そっと扉を閉めて部屋を後にした。


斗南華に任していた店番を変わるために店のある一階へ向かった。

斗南華は戻ってきた世栄玲奈を見て「お客さんが来て専門的なこと言われてわけわかめだから、とりあえず担当が来るまでって言って待って貰っている」と言った。

世栄玲奈はそのお客に「大変お待たせして申し訳ありません」と謝ってから、依頼品を見せて貰った。

魔法石を使った魔法ラジオだった。

世栄玲奈は言う。「あなたは一般界の人ですか?」

そのお客の男性は「そうですね…。これは祖母から譲って貰ったモノですが、最近調子が悪くて…」と言った。

世栄玲奈は「どのように調子が悪いのですか?」と聞いた。

お客の男性は「最近、暗号ラジオの受信が出来ない事が結構あって…、娯楽に支障をきたすんですよね…」と言った。

世栄玲奈は言う。「魔法石の故障だと、1万リベル以上は確実にかかってしまいますが、直されますか?」

お客の男性は「もし、そうだったら連絡をもらえませんか?ちょっと考えたいので…」と言った。

世栄玲奈は「一回、開けると魔法石の安定性は担保は出来ないので…。なので、壊れて完全に受信が出来なくなっても当方は責任を負わないって契約書にもサインを頂けるなら、魔法石の故障だったときに途中の連絡が出来ますが…」と言った。

お客の男性は「じゃあ、他をあたります…」と言ってお店から出て行った。

世栄玲奈は溜め息を吐いてから言う。「ここ以外でまともに魔法ラジオが直せるお店って他にあるのだろうか…」

斗南華は「あるにはあるんじゃない?」と答えた。

世栄玲奈は「僕以外で魔法石にまともに魔法を込められる人を一般界では見たこと無いね」と言ってお店の奥へと行った。

世栄玲奈は店頭デモ用のラジオを直すために半田ごてを手にした。

同調回路の故障だったので、それを中古の動作部品と変えて動作するようにした。

世栄玲奈は閉店の時間になったので、斗南華にお店の掃除などを任して、自分は餘部英子が寝ている部屋へと向かった。

斗南華は「なんで、あいつに為に私が掃除をしなきゃなんないのよ…」とぼやいた。

すると世栄玲奈が慌てて降りてきた。

世栄玲奈は言う。「餘部英子がいない!!!!」

斗南華は「逃げたんじゃ無い?」と言う。

世栄玲奈は「まだ怪我は完治してないわ…」と言う。

斗南華は「完治したら、また狙ってくるんじゃ無い?」と言う。

世栄玲奈は「そんなことは無いと…。信じたいけど…」と言った。

世栄玲奈はお店を飛び出して、餘部英子を探しに出て行った。

溜め息を吐いて「お店の番をしなきゃダメですね…鍵はあの子しか持っていないし…」と言って斗南華は夫の菅原涼太に電話をした。


世栄玲奈は気づかれないように探索魔法を使って、餘部英子を探した。

すると、意外に近くに居ることが分かった。

それは地下鉄の駅の入り口の付近だった。

そこで力尽きて座っている餘部英子を見て、声を掛ける。

「ここに居たんだ…」と世栄玲奈は安心したようだった。

餘部英子は言う。「これ以上、私に構ってもあなたに良いこと無いでしょ…」

世栄玲奈は「困っている人は放っておけないからさ…。だから、戻りましょ…」と言う。

餘部英子は「私に構わずにもう行って!!!」と叫ぶ。

世栄玲奈は「おなか。すいているよね?戻って何かを食べない?」

餘部英子は「空いているけど…。だけど、あなたは構わずにここを離れて…」と言った。

世栄玲奈には意味が全くわからない。

その時だった、建物の上階が爆発で吹き飛んだ。

世栄玲奈は手で頭を守った。

爆発によるガラスなどの落下が収まった頃に世栄玲奈は頭を上げた。

パトカーや救急車がかなりの台数が駆けつけていた。

周りはまるで地獄絵図だった。

世栄玲奈は辺りを見回して、餘部英子を探した。

餘部英子は巨大なガラスの下敷きだった。

世栄玲奈は救急隊に「ここにも人が居ます!!!」と言う。

しかし、救急隊はガラスを避けたが餘部英子を運ぼうとはしなかった。

世栄玲奈は救急隊の一人と呼び止めて、「なんで、ここにも居るのに助けてくれないんですが?まだ息はあるのに…」

救急隊の一人は言う。「一度に助けられる人数は決まっているんだ…。ルールと言うよりは資源の制約の方だね…。だから、助かる見込みの高い人から助けていく必要があるんだ…だから、決して悪く思わないでくれ…」

世栄玲奈は「そんなの納得できません!!!」と言うが、それ以上取り合ってもらえなかった。

世栄玲奈はとぼとぼとお店まで帰っていた。

斗南華が怒った様子で「鍵も掛けずに出て行ったから私が店番をしてたわ。本当に困るんだけど…」と言うが、それも頭に入っては来なかった。

世栄玲奈は斗南華に「ごめん…」と言った。

斗南華はそのまま帰って行った。

世栄玲奈もお店の戸締まりをして、そのまま家へと帰った。

世栄玲奈はお気に入りの腕時計で時間を確認した。

時計に小さなへこみがあることに気づいて「はぁ…」と大きく溜め息を吐いた。


その頃、餘部英子は「玲奈が無事で良かった」と呟いて…。

そのまま息を引き取った。


次の日、新聞に大きく出てたのは「魔法界のテロ組織。我が国の軍事企業の事務所に爆弾を仕掛ける」との文字だった。

斗南華は溜め息を吐いた。

斗南華は「こういうことをするから魔法界出身者が肩身が狭くなるのに…」と言って喫茶店を後にした。

斗南華は知っていた。

あそこにあったのは軍事企業では無い事を。

あの爆発が世栄玲奈を狙ったモノである事を。

そして、あの爆発の際に餘部英子は命令に背いて魔法で世栄玲奈を守ったことを。


世栄玲奈の店に斗南華はいつも通り行く。

しかし、お店が閉まっていた。

斗南華は世栄玲奈に電話を掛けるが出ない。

仕方ないので斗南華は世栄玲奈の家に行く。

世栄玲奈の家は不用心に鍵が開けっぱなしだった。

斗南華は「玲奈ー?いるー?」と言うが反応が無い。

ベットなどを確認するが隠れている様子も無かった。

斗南華は嫌な予感がしたので、一般界の秘密警察に連絡をして世栄玲奈の行き先を追ってもらうことにした。

斗南華はあの時に仲良くなった将校の到着を待った。

世栄玲奈のマンションに将校の林雅史が到着した。

そして、監視カメラの映像を入手して調べる。

魔法が使える相手である可能性を考慮して、魔法の使える斗南華が映像に誰かが隠れていないか見ることにした。

世栄玲奈の部屋のドアが無人で開いた瞬間を見て、斗南華は映像を魔法で透かし見る。

すると、魔法界出身の諜報担当者が3人隠れていた。

斗南華は林雅史に言う。「厄介なことになったわ。これじゃ監視カメラには映らないわ…。これじゃ既に世栄玲奈の身柄は魔法界かもしれないわ…」

しかし、林雅史は「魔法がほぼ無限に使える斗南さんには分からないかもしれませんが、これだけ魔法を使っているとなると…どっかで魔力を装填するための休憩をしている可能性がありますよ?それに賭けてみてはどうでしょう?」

斗南華は「たしかに、強力な魔法が使える人材。だいたいチャージ期間があった気がします。ありがとうございます!!」と言ってマンションの管理人室を飛び出そうとするのを、林雅史が止める。

林雅史は「当てもなく探しても見つかりませんよ?これ。人が近くに来ないであろう廃墟などの一覧表だ。持っていけ」と言って建物の旧名と住所の書かれた資料を斗南華に渡した。

斗南華は「ありがとうございます!!!」と言ってその建物を片っ端からあたることにした。

しかし、時間は有限だ。

斗南華は世栄玲奈に念を送った。

「一般界に居るなら、助けに行くので教えて下さい」と。

反応は無かったが、斗南華はまず魔法界との国境近くの廃墟を何となくであたってみることにした。

列車で1時間の所をほうきで飛んで、最短で行くので30分で付いた。

理由としては、魔法が使える相手がいるなら、魔力反応を監視しているだろうから、このパワーでは敵わないだろうで逃げ出してくれることを期待していた。

しかし、その廃墟には世栄玲奈はおろか魔法界の諜報員すら居なかった。

魔法界の国境付近にある、廃墟を中心に当たって行っていたが、進捗が無かった。

その時だった、電話が鳴った。

菅原涼太からだった。

とりあえず、立ち止まって電話することにした。

菅原涼太は言う。「世栄玲奈は見つかった?」

斗南華は「全く見つからないわ…」と言った。

菅原涼太は「僕の実家の近くに廃墟があるの知ってる?」

斗南華は「あの気味が悪いホテルの廃墟ね?それがどうしたの?」と尋ねた。

菅原涼太は「東花海が久々に電話してきて、ホテルの廃墟に夜な夜な人が出たり入ったりする、何か胸騒ぎがする。と言ったのよね。関係はないかもしれないけど…世栄玲奈も魔法が使えるなら、間接的にこうやって魔法が使えない僕らに連絡をしてても不思議は無いんじゃない?」と言った。

斗南華は「涼太さんの実家って魔法界の国境から遠くない?」と言う。

菅原涼太は「遠いからこそ、選んだのかもしれないよ?だから、行ってみる価値はあると思うんだ」と言う。

斗南華は「涼太がそこまで言うなら…」と言って電話を切ってほうきを使って、魔法探索されないギリギリまでほうきで飛んだ。


斗南華は地面に降りた。

「ここなら、ギリギリ探索範囲外ね」と言った。

そして、そこから電車に乗って魔法の気配を消して廃墟の最寄り駅で降りた。

最寄りと言っても、廃墟まで徒歩30分はかかる。

ほうきを使いたくなるのを押さえて歩いた。


その頃、厳重な監視下に置かれている世栄玲奈は強力な魔法は使えなかった。

そのため、弱い魔法で廃墟の外に影を作って東花海が通るのを待ったのだった。

東花海が夜にこの近くを散歩するのを知っていた。

東花海は敏感だから、気づいて菅原涼太に連絡をすると思ったのだった。

しかし待てど暮らせど、東花海は通らない。

そして、東花海の気配を感じた日だった。

監視役はずっと世栄玲奈を見ていた。

僕は願った。

どうか、魔法を使わずにここの監視役の一人でも二人でも建物の外でうろついてくれと…。

その時だった、僕をずっと見ている監視役に二人の男性が声を掛ける。

「俺たち煙草吸ってきていいですか?」

監視役の男性は「まぁ、構わん。ただし、一般人に見られないようにしろよ?」と言った。

僕は心の中で期待をしながらも、溜息を吐いた。

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