2話ー束の間の休暇と餘部英子の襲撃
約束の日。
世栄玲奈は店の前で待っていた。
すると、車に乗って菅原涼太と斗南華がやってきた。
斗南華は窓を開けて言う。「今日は電車じゃ無くて車で行くから乗りなよ?」
世栄玲奈はためらいながら、後部のドアを開けて後部座席に乗り込んだ。
斗南華は「ほら、そんな辛気な顔しない…。スマイルスマイル」と言うが、世栄玲奈の表情は変わらなかった。
しばらくすると、月水湖に着いた。
菅原涼太は世栄玲奈が菅原涼太の作るご飯の味が好きということで、お弁当を作ってきていた。
斗南華はすぐに水着に着替えたが、菅原涼太はバーベキューのセットなどを用意していた。
世栄玲奈はそれをぼちぼち手伝いながら、菅原涼太と話した。
世栄玲奈は「涼太さんは華の突拍子もない行動に驚いて、疲れた事はありませんか?」と訊く。
菅原涼太は「そこも含めて、華の良いところだと思っているから、疲れた事は無いかな?」と言う。
斗南華は湖から手を振って言う。「涼太も玲奈もこっちおいで~水が気持ちいいよ~」
世栄玲奈は「それは華の主観でしょ?」と言った。
すると、斗南華は湖から上がってきて私服を着た世栄玲奈を湖の方まで引っ張っていった。
世栄玲奈は言う。「涼太さん!!!見てないで助けて!!!!」
しかし、菅原涼太は「やってるなー」と言い我関せずな様子だった。
サンダルを履いた世栄玲奈の足首が水に浸かった。
そして、斗南華はおもいきり世栄玲奈に水を掛けた。
斗南華は「濡れた事だし…。もういっそ水着になってしまえば?」と言う。
世栄玲奈はムッとした様子で「僕は水着には着替えません…」と言う。
斗南華は「そう言いながら、下に水着を着てるのは知ってるわ…」と言って世栄玲奈の身包みを剥がそうとする。
菅原涼太は斗南華の元に行って、それを止める。
菅原涼太は言う。「華…。今のは流石にやり過ぎ…」
斗南華は「ごめん…玲奈…」と世栄玲奈に謝った。
世栄玲奈はかなり怒っていた。
世栄玲奈は言う。「許さないって言ったらどうする?」
斗南華は「本当にごめんなさい…。この通りですから…」と言った。
世栄玲奈は大きな溜め息を吐いて「仕方ありませんね…」と答えた。
そして、砂浜から離れたところで煙草に火を付けた。
しばらくして、感情が落ち着いて世栄玲奈は戻ってきた。
菅原涼太は言う。「そろそろお昼だから、おなかすいたよね?お弁当。食べよっか?」
世栄玲奈は「久々に涼太さんの作った料理が食べられるから、これを待っていた」と言った。
斗南華は「こういうときは素直なのね…」とちょっとムッとした様子だった。
お昼を済まして、菅原涼太と世栄玲奈は休憩と片付け。
斗南華は再び泳ぎに行った。
片付けしながら、世栄玲奈は言う。「華はあんなに入っていて、楽しいのだろうか…?」
菅原涼太は言う。「楽しいから入っているんじゃない?華は素直な子だから」と言った。
片付けも終わって、それなりに暇を持て余していた二人だった。
菅原涼太は言う。「玲奈さんも入ってみたら?玲奈さんがどれだけ泳げるか知らないけど…」
世栄玲奈は「僕は恥ずかしながら、すごくかなづちで…全く泳げないから…」と言った。
菅原涼太は「そっか、それなら無理に入れとは言わないよ」と言った。
世栄玲奈は斗南華が菅原涼太を選んだ理由がよく分った気がした。
しかし、不思議だった。
世栄玲奈はこっそりと過去を見た時に、菅原涼太は斗南華では無い女性と親しくしていた。
あの女性は誰なのか…。
世栄玲奈は言う。「涼太さんは幼馴染みとかいるのですか?」
菅原涼太は「居ないよ」と答えた。
世栄玲奈にはそれが嘘だと分かった。
世栄玲奈は幼馴染みの名前までは魔法で見ることが出来て居なかった。
湖から上がってきた、斗南華は言う。「涼太。またくだらない事で嘘をついたわね…」
斗南華は言う。「私と結婚する前に東花海に求婚されてたでしょ?」
菅原涼太は「その事は、もう忘れたいから…今は君。華と居られる事だけが幸せだから…」と言った。
世栄玲奈は「東花海はまだあなたに未練があるみたいですよ?」と言った。
菅原涼太は不機嫌になって「東花海の未練?たしかに僕は東花海を振った。だけど、今が一番幸せなんだから邪魔しないでくれ」と吐き捨てるように言った。
菅原涼太がここまで感情を出すのは珍しかった。
世栄玲奈は思った。
何か罪悪感を抱いているのかもしれない…。
東花海に対して…。
しかし、その事を確認するすべは無かった。
3人は車に乗って旅館に向かった。
斗南華が選んだという、そこそこ高そうな旅館だった。
世栄玲奈は3人で夕飯を食べた後に部屋にこもって、持ってきたラジオを聞いた。
出掛けた先で聞く異郷のラジオ放送は新鮮だった。
ひょんな事から、チューニングを魔法界の暗号ラジオへと切り替える。
ノイズは結構乗るが、一つのチューニングが割と鮮明に聞こえた。
そのラジオは世栄家の功績と罪みたいな内容でラジオ放送をしていた。
世栄玲奈はラジオのチューニングを一般界の平文ラジオへと切り替えた。
そして、溜め息を吐いた。
世栄玲奈はラジオ付けたまま眠りについた。
旅行に来ているという緊張感からか、いつもより目が早く覚めた。
朝ご飯の時間まで、まだ2時間近くあった。
斗南華と菅原涼太はまだ眠っている様子だった。
世栄玲奈は寂しかった。
嫌な夢を見たのだった。
世栄玲奈は喫煙所へと向かって、煙草に火を付けた。
朝の早い時間という事もあって、誰も来ないうちに一本を吸い終わってしまった。
世栄玲奈は自分の部屋へと戻った。
朝食の時間が近かったので、用意をして大広間へと向かった。
斗南華達は既に座っていた。
菅原涼太は「玲奈さん。こっちこっち」と世栄玲奈を呼ぶ。
世栄玲奈は斗南華の隣にが空いていたので、そこに座った。
朝食が順番に運ばれてくる。
世栄玲奈は食べたこと無い和食な朝食だった。
初めて食べる一般界の和食タイプな朝食。
世栄玲奈は新鮮さを感じた。
菅原涼太は「やっぱり海辺はご飯が美味しいな?」と言った。
斗南華は「山だって、色々美味しいモノがあるけどね?」と答えた。
斗南華は「チェックアウトは何時だっけ?」と菅原涼太に聞く。
菅原涼太は時計を見て、「11時までにだから、まだ今7時半だし…。まだまだ大丈夫だと思うけど…」と言った。
食べ終えた3人はそれぞれ部屋に戻って荷物などをまとめて帰る準備をした。
世栄玲奈はお土産を買っていないこと気づいたが、気にしないことにした。
3人はチェックアウトを済ませて、菅原涼太の運転する車に乗った。
菅原涼太は言う。「店の前で降ろせば良いかな?」
世栄玲奈は「そうして」と答えた。
暫くして、世栄玲奈のお店の前に着いた。
世栄玲奈は「ありがとう…」と一礼して車を降りた。
そして、お店の鍵を開けてお店に入っていった。
電話に入っていた留守電を確認するが、特に重要なモノは入ってなかった。
世栄玲奈はお店を開けてお客を待った。
しかし、一向に今日は誰も来なかった。
閉店の時間になり、お店のシャッターを閉めて家へと帰ろうとした。
怪しい影があったので、普段は乗らない地下鉄に乗って帰ろうとする。
世栄玲奈は斗南華にショートメールを送る。
怪しい女性が僕の後を付けてきている。と
地下鉄を降りた後で、斗南華と待ち合わせすることにした。
世栄玲奈は待っている斗南華を見つけた。
世栄玲奈は「良かった、華が居てくれて…」と言った。
斗南華は「怪しい女性は?」と尋ねる。
世栄玲奈は「もうすぐ上がってくるはず…」と言った。
しかし、怪しい女性はいつまで経っても上がってこなかった。
斗南華は「私と合流したことで、ヤバいと思って逃げたわね…」と言った。
世栄玲奈は「とりあえず、もう帰っても大丈夫かな?」と斗南華に尋ねる。
斗南華は「とりあえずは大丈夫そうね…。だけど最短で帰るのは控えるように…」と言った。
世栄玲奈は深夜も空いているたばこ屋へ寄って帰ることにした。
たばこ屋の店主は言う。「玲奈ちゃん。この時間に来るなんて珍しいね?2回目だっけ?」
世栄玲奈は言う。「いろいろあって…。あ、いつものを下さい」
たばこ屋の店主は「はい、これいつもの。深夜の一人歩きは気をつけるんだよ」と言った。
世栄玲奈はお釣り無いように現金を渡した。
世栄玲奈は煙草の予備はあったのでとりあえず、胸ポケットにしまってそのまま家へと帰った。
世栄玲奈は家に帰ってから、煙草に火を付けた。
そして、物思いにふけながら1本を吸い終わり、灰皿で火を消してからそのまま寝た。
次の日、寝坊することなく起きてお店を開けた。
開けて5分くらいした頃だった。
餘部英子が店に入ってきた。
世栄玲奈の表情がこわばった。
すると、斗南華もお店に入ってきて言う。
「昨日から玲奈の後を付けていたのはあなたね…」
餘部英子は「私だって、世栄の人間を討ちたくてしてるわけじゃ無いけど、本国から世栄玲奈の暗殺指令が出ている以上は諜報担当としては、従うしかないわ…」と言ってポケットから拳銃を取りだした。
斗南華は世栄玲奈に言う。「下がってて」
斗南華は魔法陣を展開して、銃弾を受け止めた。
餘部英子は拳銃を持ったまま、斗南華に近づいていく。
斗南華は言う。「これ以上、近づくと魔法でぶっ飛ばすわよ!!」と警告をする。
それでも近づいた餘部英子は左目を失った。
餘部英子は言う。「目を狙うのは反則だ!!」と言って、攻撃魔法術式を展開して斗南華へ攻撃魔法を飛ばす。
それを避ける斗南華。
世栄玲奈は店の備品が壊れないように対魔法用保護結界を施してから、斗南華に加勢する。
世栄玲奈は餘部英子へ影から攻撃魔法を飛ばすが、餘部英子はそれを避ける。
斗南華は苛烈に攻撃魔法を飛ばすが、餘部英子は身のこなしが軽い。
世栄玲奈は回避に精一杯で再び攻撃魔法を飛ばすほどの余裕がない。
斗南華は魔法陣の展開をやめて、銃弾を全部床に落とした。
餘部英子は言う。「魔法陣の維持は体力を使うから、その方が利口ですわ」
斗南華は丸腰で餘部英子に近づいていった。
餘部英子は攻撃魔法を飛ばす。
しかし、斗南華それを避ける。
斗南華は「魔法火力なら私に分があるの?覚えてなかった?」と言って至近距離から餘部英子へ攻撃魔法を食らわす。
餘部英子は避けきれないし、防御魔法を展開する余裕もない。
その所為でまともに斗南華の攻撃魔法を受けてしまった。
全身傷だらけで満身創痍となった餘部英子へ斗南華は言う。「言い残したことはないですか?」
餘部英子は何も言わなかった。
斗南華は日本刀で餘部英子の心臓を一突きにしようとした。
世栄玲奈は叫ぶ「待って!!!」
斗南華は「せっかく良いところなのに?何か問題でもあるかしら?」と言う。
世栄玲奈は「華が英子を生かした理由は何?」と言う。
斗南華は「魔法で殺すと書類の処理がめんどくさいから、物理で仕留めたいだけ。ただそれだけですわ?」と答える。
世栄玲奈は「僕には同族は殺せないし、僕は同族が殺されるところは見たくない」と言う。
斗南華は「それなら結界を張ってから、やるから見えないんだけどなんか不満ある?」と言った。
世栄玲奈は斗南華に近づいて、日本刀を持つ手が餘部英子に刺さらないようにする。
斗南華は「なんのつもり!!?」と叫ぶ。
世栄玲奈は「餘部英子は僕が看病します!!」と言った。