11話ー世栄玲奈の花嫁修業(?)
斗南華がお店に来た。
世栄玲奈は「どうした?なんか用か?」と答える。
斗南華は言う。「あれから伴侶とか見つかった?」
世栄玲奈は斗南華の目を見ないようにした。
斗南華は「それで見つかったの?」と聞いてきた。
世栄玲奈はキレ気味に「見つかるわけなかうろが!!!!ボケナス!!!」と言う。
斗南華は「はいはい、そう言わないの。私の知り合いがやっている花嫁修行の学校があるけど、行ってみない?」と言う。
世栄玲奈は「僕はそんな柄じゃないし、行かないよ…」と答えた。
斗南華は「このまま、一生相手が見つからず、ずっとラジオと向き合っていくつもりなの?」と言った。
世栄玲奈は「それもいいかもしれないね」と何故かそんな人生も良いと思えてしまった。
斗南華は「そんな、さみしそうな人生に肯定的にならないで、入学の手筈は整えてあるから、つべこべ言わずに行くのよ?」
世栄玲奈は「えぇ…。そんなおせっかいな…」と乗り気じゃないことを示した。
斗南華は「玲奈、その口調だと絶対モテないから…。その口調だけは直した方が良いわ」と言った。
世栄玲奈は何も言い返せなかった。
斗南華は「まぁ、花嫁修業の学校は行く行かないは任せるけど、まぁ、口調くらいは一般界になじんで長いんだし、女性口調にした方がモテるとは思うわ」と言った。
世栄玲奈は「うーん…」とは言ったものの、自分が女性口調を使うところが想像できなかった。
世栄玲奈は「そんなに僕の口調って変?」と聞いてみた。
斗南華は「正直に言うと、少し変かな?」と言った。
世栄玲奈は「そっかぁ…」と答えたが正直ショックだった。
斗南華は「そんな、落ち込まないでよ…」と言うが、そんな言葉は世栄玲奈には届いていない様子だった。
世栄玲奈は花嫁修業の学校に行ってみることにした。
世栄玲奈は普段ラジオや電子機器を修理する仕事をしていたから手先は器用だった。
そういうこともあって、料理はあっという間に上手になった。
しかし、口調をモテるように女性口調にするのだけは違和感がどうしても拭えなかった。
そうやって、一ヶ月が経った。
世栄玲奈は無事に卒業は出来た。
ただ、口調を直すつもりはなかった。
斗南華が世栄玲奈のラジオ修理工房に来た。
世栄玲奈は立ち上がって「いらっしゃい」と言う。
斗南華は「卒業、おめでとう」と言う。
世栄玲奈は「ありがとうございます。それで手紙は読みましたか?」と訊く。
斗南華は言う。「読んだよ。口調は直したくないんだね」
世栄玲奈は「僕は僕であるから、ありのままを受け入れてくれる人を探すことにするよ」と言った。
斗南華は「なかなかに茨の道だと思うけど、まぁ、頑張りな?」と言った。
世栄玲奈は「今日は用事があって来たんじゃなかった?ここに」
斗南華は忘れていたようで「そうそう、この魔法ラジオを直して欲しくて持ってきたのよ」と言う。
斗南華が持ってきたのは、ちょっと古めの魔法ラジオだった。
世栄玲奈は「これは古めのタイプだから、ルビー型かもしれないね。この型の魔法ラジオは型番変更なしで円柱型に切り替わったから開けるまでは分からないし、修理に時間が掛かるかもしれないけど、確実に直します」と言った。
斗南華は「ルビー型だったときはいくら掛かる?」と訊ねる。
世栄玲奈は「まぁ、1万リベルでいいよ。長期在庫だし」と答えた。
世栄玲奈はとりあえず、工房の裏に行って煙草を吸ってから工房に戻って斗南華から預かったラジオ裏面のネジを外した。
これは古いモデルだったらしく、円柱型ではなくルビー型魔法石が入っていた。
世栄玲奈は「こっちかぁ…」と呟いてから規格品のルビー型魔法原石を填めて、魔力を込めてから受信が出来るかを確認した。
しかしノイズが混じって受信が聞こえにくい。
なので同調回路を交換して、伝票を1万3千リベルで切った。
世栄玲奈は斗南華に電話を掛けた。
世栄玲奈はラジオが直って事を伝えた。
斗南華は「そういえば、いくらくらいになった?」と訊いてきたので、
世栄玲奈は「同調回路とルビー型魔法石の故障なので、1万3千リベルです」と答えた。
斗南華は「分かった、明日取りに行くわ」と言って電話は切れた。
工房の窓から外を見ると、曇天だった。
世栄玲奈は「今夜は雷雨かもしれないなぁ」と呟いた。
お店を閉める時間になった。
外は雨が降っているので、世栄玲奈は傘を広げて駅まで歩いた。
途中で気になる喫茶店があったが、気乗りしなかったのでそのまま家に帰った。
次の日、朝から晴れていた。
いつもより早く起きた世栄玲奈は、昨日の夜から気になっていた喫茶店に向かう。
お店は開いていたので、そのままカウンターに座ってコーヒーを頼んだ。
コーヒーはそこそこ美味しかった。
お代を払って、世栄玲奈は喫茶店を後にした。
そして、そのままお店に向かってお店のシャッターを開けた。
いつも定位置に座ってお客さんを待った。
お昼頃、斗南華が来た。
世栄玲奈は「いらっしゃい、用意してあるから」と言って裏から直したラジオを持ってきた。
斗南華は1万リベル紙幣1枚と1千リベルを3枚を渡してきた。
世栄玲奈は修理明細書を入れたラジオと箱を斗南華に渡した。
斗南華は言う。「ありがとう、またなんかあったら頼むね?」
世栄玲奈は「またのご来店、お待ちしております」と言った。
休憩時間、ポケット探って煙草の箱を見つけた。
しかし、煙草は空だった。
「買いに行きますか…」と言った。
世栄玲奈はまだ営業時間中のお店を完全に施錠して、しばしお待ちくださいの紙を看板に貼って、煙草を買いに出掛けた。
いつもは切れる前には買っていたので、珍しい失態だった。
世栄玲奈は行きつけの煙草屋へと着いた。
世栄玲奈はいつもの店員に「いつもお願いしていい?」と言う。
いつもの店員は「はい、これね?700リベルだよ」と言っていつもの煙草を手渡した。
世栄玲奈は500リベル硬貨1枚と100リベル硬貨を3枚をいつもの店員に渡した。
店員は言う。「世栄さんがこの時間に来るの珍しいですね…」
世栄玲奈は「僕にしては珍しく完全に切らしてしまったんですよ。また帰りも寄りますので、では」と言ってお店に駆け足で戻った。
世栄玲奈は店の鍵を開けた。
幸い、誰か来た様子は無かった。
そして、しばしお待ちくださいの紙を看板から剥がした。
閉店時間になった。
世栄玲奈はお店のドアを施錠して、お店から出た。
裏手で煙草を吸って一服してから、いつもの煙草屋へ向かう。
いつもの煙草屋へと再びたどり着いた。
いつもの店員さんは言う。「あれ?もう全部吸っちゃいました?」
世栄玲奈は「流石に僕でも、この期間で全部は吸わないな」と苦笑いしながら答える。
世栄玲奈は1000リベル紙幣と500リベル硬貨を一つ出して「いつもの二つ」と言う。
店員さんは「これだね?100リベルのおつり、予備を買う感じ?」と言う。
世栄玲奈は「そうだね。切らしたのがショックだったから予備を…」と正直に答えた。
いつも店員さんは「そうだったんだ。人間、誰にもこういう失敗はいつでもあるから気にしない方が良いよ、でも玲奈さん完璧主義ぽいし、根詰めない程度にね?」と言ってくれた。
世栄玲奈は家に帰って、お風呂に入ってから寝た。
次の朝、いつも通りの時間にお店へと向かった。
喫茶店によってコーヒーを飲んで、その後にお店を開けた。
ちゃんといつも通りの開店だった。
今日も相変わらず暇だった。




