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1話ー始まりの工房

前作の「あの悲劇を忘れた市民達」を見て頂けると、

この作品の世界観が分かりやすいと思います。

前作を見た上での閲覧をオススメします。

魔法界の子供は魔法石の作れない子供の間。

一般界から漏れてくる平文ラジオを聞く。

やがて成熟し、魔法石が作れるようになると平文ラジオは聞かなくなる。

その代わりに暗号化された魔法通信ラジオを聞くようになる。

何故、魔法石が作れるようになると、平文ラジオを聞かなくなるのか?

情報が雑多で聞くに足らないのだろう。

魔法界の大人からそう言われるのもあるだろう。


そのことを知った一般界は魔法界の子供が小さいうちに一般界のプロパガンダに触れさせる為に国境地帯にアンテナを作って、一般界のプロパガンダを優しい言葉で流した。

時には魔法界で使われる、一般的な言い回しを混ぜながら…。

これが効果てきめんだったのか、10ヶ月後には魔法界側に妨害電波塔が出来た。


これはそんな時代にラジオや電子機器の修理を手掛けた一人の女性の物語である。


世栄玲奈は暇を嘆いていた。

店に二人の人は居るが、どちらも客では無かった。

世栄玲奈は「イチャイチャ見せつけるなら、他でやってくれない?迷惑」と言う。

斗南華は「別にイチャイチャしてるつもりは無いけど…。ね?涼太?」と言い菅原涼太の方を見る。

菅原涼太は「あぁ、特にイチャイチャはしてないな」と答えた。


店も閉店間際の時間だった。

一人の淑女が店に入ってきた。

世栄玲奈は「どうされましたか?」と言う。

その淑女は「叔母から貰ったラジオが壊れてしまって…直して欲しいのですが…」と言った。

世栄玲奈は「どんなラジオですか?」と聞く。

その淑女はカバンから小さいポケットラジオを取り出した。

よく見ると、魔法界の暗号化された魔法通信ラジオも聴けるポケットラジオだ。

世栄玲奈は「魔法石の故障だと、1万リベルくらい掛かってしまいますがいいですか?」と訊ねる。

その淑女は「とりあえず、直していただければ…」と答えた。

世栄玲奈はペンをだして、「ここに記入してください」と修理依頼用紙を淑女へと渡した。

そして、ラジオと修理依頼用紙の原本を受け取った。


世栄玲奈はラジオを分解して基板を直で見た。

魔法石には異常が無さそうだった。

ラジオを仮組みして聞いてみる。

やっぱりというか、暗号化された魔法通信ラジオは聴けずに、平文で放送される一般界のラジオのみ聞こえた。

世栄玲奈は「これは魔法石との同調回路が壊れてるな…」と呟いてガサゴソと魔法石の不良で1万リベル掛かると言ったら、修理しなくて良いし、返さなくても良いと言われた部品取りのラジオから同調回路を抜き出して、依頼品に移植したら魔法界の魔法通信の暗号ラジオを受信するようになった。

これで直ったラジオ。

時間が遅いので、明日電話をして取りに来てもらうことにしようと世栄玲奈は考えた。


朝早く起きて、世栄玲奈は店を開ける。

すると、いつも通り斗南華が喫茶店の代わりと言わんばかりに、入ってきては世栄玲奈に話し掛ける。

斗南華は「一般界での生活はもう慣れた?」と世栄玲奈に訊ねる。

世栄玲奈は「まだまだかなぁ…」と答えた。

斗南華は「私が見るにだいぶ馴染んできたと思うけどね…」と言う。

昼を過ぎると斗南華は「ラジオ局に行って、原稿を出してくるね」と言い店を出た。

世栄玲奈はラジオが直ったことを依頼主に電話を掛けた。

依頼主は明るい声で「今日の夕方に取りいきます」と言った。

世栄玲奈は半田ごてを使い基板の修理をする。

これは知り合いの斗南華の依頼品だった。

起動しなかったノートPCが起動するようになった。

しばらくして、店の戸が開いた。

昨日、ラジオ修理の依頼をした淑女だった。

その淑女は控えを出して、「直ったと電話があったので来ました」と言う。

世栄玲奈は「こちらが依頼された品ですね。魔法石との同調回路が壊れていたので、同調回路を交換しました。交換したことにより魔法界の暗号ラジオが正常に聞こえるようになりました」と言って、ラジオを起動して魔法界の暗号ラジオが聞こえることを確認してもらった。

その淑女は「お代は…」と言う。

世栄玲奈は「簡単な修理だったので、1000リベルで大丈夫です」と言った。

その淑女は財布から、1000リベルを取りだした。

世栄玲奈は直ったラジオを渡して言う。

「ありがとうございました。またのご来店をお待ちしております」


世栄玲奈は時間になったので、店の戸締まりをした。


世栄玲奈は寝坊した。

幸い誰も店には来てなかった。

世栄玲奈はホッとした。

お店を開けてからしばらくして、斗南華が来た。

斗南華は言う。「そういえば、この前に預けたノートPCは直った?」

世栄玲奈は「直ったよ」と言って、起動するノートPCを見せた。

斗南華は「ありがとう、じゃあお代は3万リベルを払えば良い?」と言う。

世栄玲奈は「僕、たいしたことはしてないから、1万リベルでいいけど」と言った。

斗南華は「この店の今後の繁盛も願って3万リベルを置いていくわ。残りの2万リベルは有効に使うんだよ」と言った。

世栄玲奈は「ありがとう…」と言って、レジに斗南華が払った3万リベルをしまった。

斗南華は「そういえば、接客はなれた?」と聞く。

世栄玲奈は「まぁ、僕も最初は戸惑ったりもしたけど、最近は慣れたかな?」と答えた。

斗南華は「それなら良かった」と言って、直ったノートPCを持って店を後にした。


しばらくして、お店にお客が来る。

明らかに軍人のような風貌の男性だった。

世栄玲奈は「なんか用ですか…」と言う。

その軍人風な人は「ここは電子機器の修理をしていますか?」と訊ねる。

世栄玲奈は「えぇ、してますよ」と答えた。

その軍人風な人は「魔法界の暗号ラジオの聴ける受信機が壊れてしまった。なんとか直せないか?」と訊ねる。

世栄玲奈は「魔法石の故障だと、1万リベルくらい掛かりますが問題ないですか?」と言う。

その男性は「仕事で必要なんだ。他の店にも行ったがうちでは直せないと断られた…」と言う。

世栄玲奈は「他の店で直せないって事はたぶん魔法石の故障、もしくは魔法石関連の回路の故障ですね…」と言う。

その男性はは言う。「直るのか?」

世栄玲奈は「バラしてみないと分らないですね…」と答えた。

世栄玲奈は「とりあえず、預かっておくので…直ったらまた連絡します。なので、修理の依頼契約書にサインと電話番号を貰って良いですか?」と言い書くように促した。

男性はすらすらと、サインと電話番号を書いた。


世栄玲奈「林正って言うんですね」と言う。

その男性は「そんなに珍しいか?」と言う。

世栄玲奈は「フルネームが2文字な人、初めて見たかもしれません」と言った。

その男性は興味なさそうに「あーそういうこと」と言って店を後にした。


世栄玲奈は早速、依頼で預かったラジオを分解する。

魔法石が中に在ったと思わしき部分が空洞になっていた。

世栄玲奈は思う。「前の修理業者が抜いたな…。あれは見た目だけだと、正常稼働品と魔力の抜けた非稼働品は一般界の人間には見分けがつかない」

世栄玲奈はラジオ用に切り出された棒状のルビーに魔法を込める作業をする。

そして、魔法の込めたルビー。

すなわち魔法石をラジオに填め込んで、動作を確認するが綺麗に受信しない。

そして、同調回路を調べる。

同調回路も壊れていたようなので、新品の部品がしまってある棚から同調回路を持ってきて、壊れていた同調回路と交換した。


次の朝、早起きして店を開ける。


「魔法暗号ラジオの修理が出来ると聞いて来ました…」と一人の女性が来た。

世栄玲奈は思う。

この顔、見覚えがあるな?

世栄玲奈は言う。「世栄の人ですか?」

その女性は「むっとした様子で、私は餘部英子ですが?」と言った。

世栄玲奈は魔法界から持ってきた命名規則辞書を引いたが餘部は無い。

世栄玲奈は「世栄家が無くなってからの、新しい家ですよね?」と言う。

命名規則辞書を見た餘部英子の顔は引きつっていた。

餘部英子は言う。「こんなのどこから持ってきた?」

世栄玲奈は「亡命前に持ってきましたが?」と言う。

餘部英子は眼鏡を外してカウンターに置いた。

世栄玲奈「やっぱり世栄英子じゃないか…。今は迫害を逃れるために餘部を名乗っているのね…。眼鏡一つで印象が結構変わるのね…」

餘部英子は「魔法界の暗号ラジオが壊れてしまって…、直せない?」と言う。

世栄玲奈は「わざわざ僕に頼まなくても、本国から送って貰えば?」と言う。

餘部英子は「また、今度来るわ…」と言った。

世栄玲奈は溜め息を吐いた。

一般界で生きる身として、魔法界の諜報に協力はしたくない。

だから、親戚といえども魔法界で生きる人に直したラジオを渡したくないのであった。

とりあえず、この事は考えないこととして直ったラジオを林正に渡すために受話器を取って電話を掛ける。

林正は今日中に来てくれるらしい。


お昼頃だろうか?

林正は来た。

世栄玲奈は「えぇっと修理内訳ですが、魔法石の修復と同調回路の修復なので1万3千リベルですね」と言った。

そして世栄玲奈は魔法界の暗号ラジオが聞こえることを林正に確認して貰った。

林正は1万3千リベルをトレーに置いた。

世栄玲奈は「1万3千リベル。ちょうど頂戴します」と言って伝票を出した。

林正はそれを受け取り、「ありがとうお姉ちゃん」と言って店を後にする。

世栄玲奈は「またの来店をお待ちしております」と言ってドアを閉めた。


餘部英子はまた世栄玲奈の店に来た。

「ねえ、魔法ラジオを直してよ」と言う。

世栄玲奈は「僕はこの国に助けて貰った。だから、死ぬまでこの国に忠誠を尽くす。だから、魔法界の人間のラジオは直せない」と餘部英子に対してはっきりと言った。

餘部英子は言う。「あんた生意気ねぇ…」

餘部英子は魔法を使おうとする。

世栄玲奈はそれを防ぐための魔法を発動した。

その時だった、斗南華が店に入ってきた。

餘部英子は舌打ちをして出て行く。

斗南華とドンパチなったら、負けると思ったのだろう…。

世栄玲奈は言う。「珍しくナイスタイミングですね。助けてくれてありがとう」

斗南華は世栄玲奈の頭をグリグリしながら「珍しくって何よ?」と言う。

世栄玲奈は「痛い!痛い!僕だって色々思うことはあるさ!」と言った。

斗南華はグリグリをやめて言う。「今は餘部英子が諜報担当か…。魔法使う瞬間を動画に収めて、秘密警察に突き出してやろうかしら?」

世栄玲奈は「僕でも思わないような、怖いことをさらっと言うんですね」と言い苦笑いした。

斗南華は言う。「これくらいの肝っ玉は据わってないと、生きていけないよ?」

世栄玲奈は「僕には無理ですね…」と言った。

斗南華は「無理だと思うから、無理なんですよ。思ったら叶うよ?魔法界でそう教わらなかった?」と言う。

世栄玲奈は「魔法界ではそう教わったけど、出世レースに参加しようとして没落した僕には分らないや…思っても本当に叶うかどうかなんて…」と溜め息を吐いた。

斗南華は「そういえば、またノートPCの修理依頼して良い?」と言って起動しないというノートPCは渡してきた。

世栄玲奈は言う。「そう期待しないでくれよ。僕だって直せないことだってあるからね?あと、僕は基本ラジオを修理する職人だから…。ノートPCは専門外なんだけど…」

斗南華は「じゃあ、とりあえず頼んだわね?」

世栄玲奈「ちょっと、僕の話聞いてる?あと、そんな高頻度で家電が壊れるって危険なガスの近くで使ってでもいるの?」と言うが、斗南華は行ってしまった。


とりあえず、世栄玲奈はノートPCの裏蓋のネジを全部緩めて、それで裏蓋を開ける。


派手に破裂したコンデンサがあったのでそれを交換した。

それでとりあえずは起動するようになった。

斗南華はいずれ取りに来ることが分っているので、特に電話などは掛けなかった。

世栄玲奈は「コンデンサが爆発って…」と呟いた…。


次の日、斗南華は珍しく朝一でノートPCを取りに来た。

世栄玲奈は「派手にコンデンサが一つ爆発していました。どうしたらこうなるんですか?」と言った。

斗南華は「これ知り合いのだから、あんまり使用状況とかわからないのよね…」と答えた。

斗南華は続けて「修理費はいくらかしら?」と言う。

世栄玲奈は「2万リベルくらいでいいよ」と言う。

斗南華は「くらいって何よ」と苦笑いしながら言った。

斗南華は「1万リベル多めの3万リベルを渡すから、有効に使うんだよ」と言って1万リベル紙幣を3枚、世栄玲奈に渡した。

世栄玲奈は「ありがとうございます」と言った。

斗南華は直ったノートPCを持って店を後にした。


次の日も斗南華はお店に来た。

世栄玲奈は言う。「仕事を頼まないなら、帰れば?ここは喫茶店じゃないからね?」

斗南華は「たまには休んで息抜きをしたら?」と言う。

世栄玲奈は「僕はこの仕事は嫌いじゃ無いから、休みを取る必要は無いです」と言う。

斗南華は引き下がらずに「車で1時間ほど行った所に月水湖っていう景勝地があって、麓は砂浜が綺麗で泳げるらしいから?行ってみない?」と言う。

世栄玲奈はしばらく考え込んでから言う。「そんな茶番に、僕が付き合ってなんか良いことある?」

斗南華は「一緒に来てくれたら、涼太がお昼ご飯を作るって?言ってたような言ってなかったような…」

世栄玲奈は「僕は博打には乗らないので行きません」と言う。

斗南華は「えー?玲奈ちゃんノリ悪いなぁ…。一般界での命の恩人である私がせっかく誘っているんだから?ねえ?行こ?」

世栄玲奈は「仕方ありません…」と大きな溜め息を吐いた。

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