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王立図書館 その2


お茶を飲んでから、俺はさっき走ってきた姉妹王女たちについて話した。

「そう言えば先ほど王女たちがこちらを通りましたよ。

 王女たちはとても活発ですね」

すると王太子の顔が一瞬歪んだように見えた。がすぐに戻った。

「たぶん、それは私の婚約者です」


ーえ?

「姉王女、妹は小さい頃から体が弱く,部屋を出たことがないのです。

 謁見はもちろん、どこにも外出したことはありません」


ーそうか、可哀想に。先ほどの義姉様(ねえさま)は王太子の婚約者だったのか。

その後、王太子が図書館を後にした。俺はもう少しここに残り机に向かった。



疲れているのに寝付けなかった。

ベッドから出て、テーブルにある水差しをグラスに注ぎ飲んだ。

そしてソファに腰を下ろし、この間の友人のところで飲んだワインを思い出した。


この国は、ワインが特産物で、隣国に輸出し多くの利益を得ている。

国を四分割し、各地域で名産にしている。

さらに枝分かれをして、領主の土地に合う葡萄で生産しているため、種類が豊富だ。

また一部を加工品として付加価値をつけて輸出や市井でも販売する。

土壌に合う葡萄を植えるのでそれぞれの味が違う。

ワインの他にも小麦の種類が豊富だ。それがあの文官の政策の一つらしい。

多種多様に土壌に合う農産物を探し作付けする。

それを国民が協力し合い、生産、加工、供給して、一部を輸出する。

需要と供給が上手く出来、国は利益を得られる。

また、得られた利益を形を変え還元しているらしい。天災などを考え備蓄などもしている。

国民にもそれを促し、国家機関にも制定されている。利益の一部は、医療や子供の教育に流れる。


ーさすがだ。

自国にもと、思いながらベランダにでた。体に触れる風が心地よかった。


しばらくして、遠くから蹄の音が聞こえてきた。

こんな夜中にと、今いる三階から下を見た。

すると騎乗する人影が見えてきた。


ーこんな真夜中に誰だ。

馬上する人の姿が現れた。月明かりで照らされた髪が流れる。


ールーク?


彼は白いシャツに黒のズボンで、黒のロングブーツと随分軽装だった。

月明かりで髪が照らされ、さらに輝く。


ー本当に綺麗だ。こんな男がいるのか。


するとどこからとなく黒い影が現れ、馬上のルークに近づき、膝をついて頭を下げた。

ものの数分で居なくなってしまった。しかし、残った彼はずっとその場を動かなかった。


それから何事もなかったように、馬から降り厩舎の方に向かった。

それを見送った俺は部屋に戻った。


ーなんだろう。

しかし、俺はベッドに入ったとたん深い眠りについた。



王太子主催のお茶会がの日が来た。

城の庭園には、ガラスばりのサルーンと離れて四阿があった。

このお茶会が()()ために主催されている。

俺の婚約者を見つけるためのものだ。


ーせっかく留学の間だけでも()()()()から解放されると思っていたのに。

ーくっっっっ。

ー父上は何を考えているのだ。


ー王太子には本当に申し訳ない。

穏やかな時間が流れ、令嬢たちと歓談した。

内心、もしかしたら彼女がと、淡い期待をしたが泡と消えた。

護衛の近衛団長や騎士団長もいた。


俺は気晴らしとして、庭園を見て回ろうとその場を後にした。

庭園には、さまざまな花が咲いて、甘い香りが漂う。

綺麗に剪定された植木が、緑の壁のように長く植えられたあった。

緑の壁を抜けると四阿が見えてきた。

すると四阿の方から楽しそうな声が聞こえてきた。


妹王女の楽しそうな声だった。

彼女は嬉しそうに背の高い人と踊っていた。王女はまだ成人していないので、夜会は出席できない。

嬉しそうに踊る王女の相手はルークだった。

彼も楽しそうに相手をしていた。


ーあんな顔もするのか。

彼は夜会やお茶会などに出るのが嫌いらしく、出る場合は騎士団たちと警護をしている。


立ち止まり見ていた俺に二人が気づき、手を止めた。

「殿下」

ルークが俺がいるのに驚いた。

俺は嬉しそうに踊っていた王女に申し訳なくなった。

「すまない、王女殿下。せっかく楽しく踊っていたのに」

そう言うと妹王女は淑女の礼をして笑って言った。

「いいえ、殿下」


するとルークが王女の手を俺に差し出した。

「殿下、よろしければ、是非王女殿下と踊っていただけませんでしょうか」

俺はすぐに「喜んで」と手をとった。

ルークがさがると妹王女に合わせて踊りだした。音楽はなかったが聞こえるかのように踊った。


踊り終えると、俺に向かって礼をして、ルークの方に駆け寄った。

「どう?上手に踊れたかしら?」

「ええ、とてもお上手になられましたね。殿下」

ルークが彼女に微笑んだ。

嬉しそうにルークの肩に手を伸ばして、妹王女が微笑んだ。

それを見た俺は、思わず見惚れてしまった。パッと花が咲いたような彼の甘い顔だった。


ーなんて甘い顔をするんだ。

俺は思わず自分の顔が赤くなったのがわかった。

すると妹王女がそれに気づいたのか

「殿下、どうしたの?」

そう言って俺の顔を覗き込んだ。


赤くなった自分の顔を隠して

「いや、王女殿下なんでもないです」


それを言うだけが精一杯だった。





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