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王立図書館

6


次の日の午後、ルークが王室図書館を案内する準備ができたと迎えにきた。

城内にある図書館は、王族だけが入れる場所もあるため、入室許可書とは別に、特別許可書を必要とされ、これは王族だけが得られる。


俺が隣国王太子なので特別許可書もすんなり得られた。

案内された図書館はとても素晴らしく、まるでマーブルキャンディーのような色が広がり、貴重な本や文献が並んでいる。

壁一面、天井近くまで本棚があった。

天窓は、大きなステンドグラスが嵌められて、柔らかな日差しが差し込む。


ーさすが隣国一だ。


さらに蔵書量が多いので、広い部屋の中央には、縦に背を合わせて本棚があり、またその横には長机が並ぶ。

本は、種類項目年代順に並んでいて探しやすかった。さらに奥にもう一つ部屋があった。

そこが王族だけが入れる特別室。

ドアの前に騎士が立ち、扉は施錠されて鍵が必要とされる。開けてもらい中に入ると、貴重な本がずらり陳列され、本はすべてチェーンがついてあった。

これが王室内図書館特別室だった。


ルークの後ろを歩きながら俺は説明を受けた。

ふと彼の背中は、男としてはとても華奢に感じた。

彼は二十歳。

背は、俺より随分低かったが肩幅もあり、黒い上着で束ねたある銀髪が輝く。

そしてなぜがとてもいい匂いがする。


ーホワイトラベンダー?

ー珍しい香りだ。


そのためか彼の話が頭に入ってこない。

一通りの説明が終わり、俺は独り図書館に籠った。

流石に貴重な物ばかりで扱いに気をつかうが、自国にはない物ばかりでとても興奮した。


この一週間、詰め込んだため少し疲れた。

椅子の背に体をよりかけ、目を瞑る。

今回は、滞在期間が短いため、慌ただしいがとても充実した日々を過ごしている。


今日は朝から図書館にいた。

すると静かな室内を遠くから小走りに走ってくる足音が聞こえてきた。

王室内図書館は、入館できる者が限られているので問題はないが、誰だろうと思っていると声が聞こえてきた。


「はやく、はやく、()()、はやく。ここが近道なの。早くっ」

ーこの声は妹王女の声だ。

ーすると相手は姉王女か。


すると後から追いかける足音が聞こえてきた。

本棚の隙間から、ドレスが見えて、髪が流れる。

顔は見えなかったが、二人が通り過ぎるて、過ぎ去った方に向かうと王女の香りが残っていた。


俺が机に戻ると、王太子が様子を見にやってきた。

「殿下、進みはどうですか?」

にこやかに微笑んでこちらに歩いてきた。

「素晴らしい物ばかりで、とてもはかどります」

「それは何よりです。しかし、このところ詰め込みすぎでしょう。

 奥に部屋があるのですが、お茶でもいかがですか」

俺は頷いた。ちょうど一息したかった。


俺たちは、奥にある部屋に移動した。

そこは少し狭い部屋だった。応接セットがあり、隠し部屋のような感じだ。

「この部屋は私が籠る隠れ部屋です」

笑って王太子が言った。


騎士が持ってきたお茶を飲みながら寛いだ。

「短い時間ですから、ゆっくりとはいかないので」

「そうですね。しかし、お体には気を付けて下さい。たまには気晴らしも必要ですよ。

 城の近くに珍しい湖があるのです。

 水面が虹色に見えるので虹色湖と言われて、今度目の保養にお連れします」

ーへぇ、そんな湖があるのか。

俺は少し考えたが、せっかくなので頷いた。

「そうですね。是非お願いします」


「それと明日、私が主催するお茶会があるで、出席をお願いいたします」

ーえっ。

思わずぽかんとした顔をして、王太子を見た。

すると王太子が笑って、

「くくっ、いえ、すみません。

国王陛下から、殿下のお相手を見つけたいと書簡を頂いておりまして、夜会よりはいいかと。

そのため小規模のお茶会を主催したのです」


ーげっ。

ーいやいや、父上、ここまで来てそれはないだろう。

顔が少し歪んでしまった。

前にした王太子がさらに笑って

「お気持ちはわかります。大丈夫ですよ。お茶会と言っても小規模ですし、厳選してあります」

そう言ってお茶を飲んだ。

なぜか、その微笑みが少しだけルークに似ていた。

「まぁ、こればかりは逃げられませんから、わかっているのですがね。それに」

「それに?」

真顔で王太子が俺を見た。

「昔、忘れられないことがあって」

思わず言ってしまった。

王太子は黙っていたが

「そういう思い出は美しいですから」

ふと何故か寂しそうな顔をした。




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