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謁見 その2



前に立っている男に俺は思わず驚いた。


彼は聞いていた以上の美丈夫だった。

中性的な面持ちで、肌は透き通るくらい白く、薄紫の眼をしていた。

輝く銀髪は絹のようで、長い細い髪を、後ろで一つにまとめている。

隙がないように見え、眼鏡の奥でこちらの心を見透かすようだ。


また女性のように細く長い指

ーこれが男!?


俺は驚きを隠せなかった。

彼は、黒色の上下に茶色のロングブーツ、文官だが着ている上着が騎士団長と似ている。

襟と袖には、銀の刺繍が施されてある。

左肩のところに上着を留める銀ボタンが小さく三つある。

それがまるでパールのように光っていた。


こちらに向かい礼をして王太子に促されて、俺の斜め前に座った。

すると侍女がトレーに乗せて、お茶を運び部屋に入ってきた。

侍女はローテーブルにティーカップを置き始めた。

ルークの前に置いた直後、彼女の頬がうっすら赤く染まったのがわかった。

仕事とはいえ、あんな美丈夫が間近にいれば頬を染めるだろ。

ルークはさも当たり前のように、彼女に向かい微笑んだ。

すると彼女の頬がぽっと更に赤く染まったのは言うまでもない。

彼には至極当然の対応らしいが、俺はこれはよろしくないと思った。


ーこいつ、わかってやっているだろう。

ーその微笑みは殺人だ。


すると彼は俺に向かってフッと微笑んだ。

思わず俺もドキッとしてしまった。


ーこいつほんとに男だよな。


ーまずいだろ。こんな微笑みを正面から見たら一撃で即死だぞ。

そう思っていると、王太子がルークに向かって言った。

「ルーク!おまえはそれをやるな。

その無駄にでるキラキラする微笑みはやめるんだ」


眉間に皺を寄せて王太子が言い切った。

後ろにいる近衛団長と騎士団長も眼を上に向けている。


「何かしましたか」

ルークはニヤリと悪びれもせず、口角を上げて言った。


「お前は誑しか!そのようなことは皆を困らせるのだ!」

王太子の眉間の皺が更に深くなり、低い声で言った。

それを聞いたルークがさらに微笑んだ。


ーなんて顔するんだ。女でなくても、間違いなく一撃でやられるぞ。

ー破壊力が半端ない、絶対勘違いするやつだ。

それを見ていた俺も、頭が痛くなってきた。


しかしながら、彼の所作はとても美しかった。紅茶を飲む手元は見惚れるほどだった。

しなやかな指先、薄い櫻色の唇。その仕草を横でちらちらと見てしまう。

俺は正直、正面に座っていなかったことにつくづく良かったと思った。


王太子、近衛団長、騎士団長は、さすがに彼に慣れているのか淡々と話合っていた。

しかし、彼のこの色気は尋常ではない。

王太子が、ルークに今回の滞在について説明し、すぐに王立図書館の入館許可書の手配をするよう、後日案内するよに言った。


「では明日の午後、王太子殿下をご案内できるように致します」

そして王太子が俺に向かって頭を下げた。

「殿下、誠に申し訳ない。彼はこれが普通なので、気にしないでください」


ー俺は思わず顔が引き攣った。

ーいやいや普通ではないだろう。気にしないでとは無理だ。


さらに王太子は、図書館の他も案内できるように騎士団長に指示した。また城から少し行くと湖があり、そこは珍しい色をした湖らしく、景色も素晴らしので時間があれば是非そちらも見てほしいと言った。


しばらく王太子たちと雑談をしていると、ドアにノックする音がして騎士が現れた。

宰相から文官を呼んでいると連絡があり、そこでルークが退席した。


俺はフッと思わず溜息をしてしまった。

王太子がそれに気がついた。

「本当に申し訳ない。あれでも今日は抑えた方でなので。本人の悪気はないでしょうが。

あれでも優れた文官なので、こちらも多めに見ているのです」

と申し訳ないように言った。


ー王太子殿下も苦労されていのか。

ー大変ですね。ご苦労様です。

ー撃沈されなくて良かった。


俺は心の中で思った。



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