謁見 その1
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馬車に揺られて半日。
貿易が盛んなせいか道が整備されていた。
ロワール王国に入り、少し緊張してきた。今までそのようなことがなかったのに、なぜか身が引き締まる。
王都に入ると街の雰囲気が明るく、街並みは白と青で統一されていた。俺は馬車から降りて少し歩いてみた。
道幅が広く、窓には小さな植木鉢に花が植えられており一層華やかだ。ちょうど市場が出ているので、大勢の人々で賑わっていた。歩いていくと大きな広場に着いた。中央には噴水があり、その場を囲むように店が並んでいた。
噴水を中心に、放射線状に広い通りがある。そのため細い暗い路地がない。そのせいか、治安がよく人々は安心し、心に余裕があるように見受けられる。これもあの文官の指南なのかと思うと、流石だと頷いた。しばらくして俺は馬車に戻り、友人の公爵家に向かった。
今日はそちらに泊まり、明日登城することにしていた。
友人のアルフレッドは公爵家の嫡男。先代公爵は領主内の館に住んでいた。
彼は王立博物館に勤めて、仕事がら屋敷を空けていることが多々ある。そのため家令が切り盛りしていた。
最近まで隣国のロアン王国にいた。こちらも留守は家令がいるので心配ないが、先代公爵は、まだ結婚しない息子が心配らしい。どこも一緒である。
この国は教育にも力を入れているので、博物館も充実していた。
門を入り、馬車が公爵家に着くと、彼は玄関で出迎えていた。
「久しぶりだなぁ。疲れただろう。さあ入ってくれ」
そう言い促された。二人しかいない晩餐でワインが進み、楽しい時間を過ごした。
部屋に入りようやく落ちつき、ソファに腰掛けた。
先ほど侍女が持ってきたワインは、晩餐で飲んだものとはまた違い、さっぱりとした後味だった。ワインはこの国の名物の一つだ。
明日は登城だ。この留学の間だけでも例の頭痛の種を忘れよう。ワインを飲み干してベットに入る。
疲れていたのかすぐに深い眠りについた。
見えてきた城は、塔がない平で、クリーム色の外壁に三階立ての城だった。城の前には、城を囲むような大きな人口池がある。また城は一部新しく建てられたようで、外壁が少し新しいように見えた。
馬車から降りて案内され、国王陛下の謁見に向かうため大広間に向かった。
室内は白で統一され、薄いグレーの大理石の床には塵ひとつない。
壁に飾られる絵画、また美術品は全て一級品で、映えるよう配置されてある。
大広間に入ると、すでに国王陛下が上段にある正面の椅子に座っていた。
向かって横には王太子が座っていた。
国王陛下の斜め後ろには宰相。王太子の斜め後ろに近衛団長、その横には騎士団長が並んでいた。
段が下がり、両脇には文官、武官が整列していた。王太子側に整列した中には、王女たちもいた。
この国には王太子と王女二人がいる。
王太子は、白金のミディアムストレートの髪が輝き、薄い緑色の眼。
王女たちは、金色の髪に薄い緑色の眼をもつ。姉王女の髪はウエーブがかり華やで、妹王女はまだあどけない。髪をふたつに分けて三つ編みをして丸く束ねて髪飾りでとめてある。
国王陛下から滞在許可を頂き、宰相から説明がされたのち国王陛下が席を外した。
最近体調が悪く長い時間の公務ができないそうだ。そのため後は王太子が対応すると言った。
王太子が貴賓室にと促がした。すると妹王女がこちらにきてニコッと微笑み、淑女の礼をした。
可愛らしく、まだ十歳と聞く。どうやら俺はこの手には評判がいいらしい。
案内された貴賓室に入ると、広い部屋には本棚がずらりと一面にあった。落ち着きのあるクリーム色の壁紙には透かし柄が施されていた。向かい合いで、ロングソファに座ると王太子の後ろに近衛団長と騎士団長がたった。
「楽になさってください」
挨拶をして向かい合う俺に穏やかに王太子が言った。
ロワール王国、王太子クリストファー・ヒュー・ロワール。背の高く、服を着ていてもわかる、適度について見える筋肉、だれもを魅了する微笑み。俺と同じ歳のためか、友人として接していただければと言った。
今回の留学目的である図書館の蔵書の閲覧と経済政策などを学びたいことを伝えた。
クリストファー王太子が頷いた。
「では、エドワード王太子殿下、殿下の滞在中のことは彼に頼もう」と言って騎士団長に言った。
そうすると彼は私たちに向かい礼をしてから、部屋を出た。
ーそう言えば、先ほどの謁見に例の文官はいなかったな。
ー噂の文官。どんな奴なのだらろう。
しばらくするとドアをノックし、開く音が聞こえた。
「失礼します」
騎士団長の声が聞こえて部屋に入ってきた。
騎士団長の後ろに立つ人物の影があった。
するとクリストファー王太子がこちらに来てくれと二人に言った。
「うちの文官のルークファンデ・ルシフォールズです」
「はじめまして、エドワード・ルイ・イルヴァニア王太子殿下、ルークファンデ・ルシフォールズと申します
どうぞお見知りおきください」
そう言い前に立つ彼を見て、俺は思わず驚いた。