明らかになる過去2
14
部屋の空気が静まり返った。
「妹は王女としては危険なため、公爵家の者として城に来させました。
当時、現公爵は子供がいませんでしたので、公爵家縁者として身を隠したのです。
しばらくすると公爵に子供が生まれました。多分それで妹も公爵家が継承されると思ったのでしょう。
公爵家から城に生活を戻しました。私が城は危険なため、自分付きの文官として側に置き、そして王宮に部屋を与えました。
そうすれば誰にもわからないと思ったのです」
「つまりそれが彼だと」
俺は驚きを隠せなかった。
王太子が頷いた。
「そうです。私の妹です」
俺は納得がいかなかった。
「では、なぜあちら側なんだ。宰相を拘束し牢獄に入れたぞ。
それに俺は聞いた。王太子がいない時、仲間と計画を実行すると」
そういう俺に王太子は首を振った。
「いいえ殿下。違います。それはわざとあちら側に行ったのです。情報を知るために。
全ては私たちの計画です。そしてこの計画を立てたのは彼、ルークです」
王太子は深く息を吸った。
「これが今回の全貌です。そして近々こちらから罠をしかけます。
これが最後だと思います。そのため殿下には早々に帰国してほしいのです。
すでに国王陛下からお話があったと思います」
「連絡はあった。それでか。急に戻れといったのは」
なぜが心の中がモヤモヤとしていた。
俺の知らないところで、こんなことが起こっていて、危険だから帰国しろと。
俺だけ呑気に帰国できるか。
「その計画はいつなんだ。ルークはどうなる」
「流石に今回の策は中止を考えていました。
しかし、これ以上長引くと、近々私の王位継承があります。だから全ての膿を出し切ると。
ですから国王陛下と相談したのです。エドワード王太子殿下には急ぎ帰国願たい。
何かあれば国際問題になります」
あの時出会った少女が、王太子の妹だった。
彼女が彼で、この危険な策を考えた。
公爵に尋ねた。
「ルークは偽名だな。王女の名前は?」
先程まで黙っていた公爵が口を開いた。
「公爵家でルークと名付けました。ルシフォールズは妻の姓を使いました」
公爵に続いて王太子が付け加えた。
「妹の名前はアリシア・ルイーサ・ロワールです」
公爵家から俺は城に戻り、王太子と別れた。
城に戻る馬車の間、俺はずっと考えた。
国からは、早急に戻るようにいわれている。そして王太子も帰国を望んでいる。
しかし、俺はルークの本当の考えを知りたかった。
馬車の中で騎士団長もずっと黙っていた。
どうすれば彼を守ることができるのか。
それから一週間がたった。
公爵家から戻ってもまだ何も起こらず、王太子も行方不明のままだった。
この国はどうなってしまうのだろう。
心を落ち着かせるため図書館に来ていた。
外部者の俺など何も出来ないが、この状況に対し歯痒かった。
その後、父上からの連絡はなかった。
そんなことを考えていたら、珍しい客が俺の方に歩いてきた。
妹王女だった。
ただ、いつもの笑顔がない。
(そうだろう。国王が伏せって、兄が行方不明、姉は病弱、独り寂しくなって当然だろう。本当は王太子は生きているとはとてもいえない)
妹王女が寂しげに話かけてきた。
「殿下は、もうすぐ滞在が終わりますね」
「ええ、そうですね」
俺は彼女を励まそうとしたが、かける言葉が出て来なかった。
何か話さなければと思いつつ長い沈黙が過ぎた。
すると妹王女がポツリといった。
「私、ひとりぼっちになっちゃうわ」
彼女の眼にはうっすら光ものが溢れているのが見えた。
「大丈夫、クリストファー王太子殿下は必ずお戻りになる」
今の俺には、そんな無責任な言葉しか掛けて上げられなかった。
そして事件が急展開した。
国王陛下の専属医師の一人が捕まった。
彼は王室専属医師のひとりで、この計画がうまくいったら、多額の金と地位の確約されていた。
彼は賭博で多額の借金があり、そこに目をつけられこの事件を犯した。
彼は国王陛下の食事に毒を入れていた。しかし、毒見役には何事もなかった。
食事を運んでから食べる前に、彼はわざと脈を見るといい、彼自身が問診後に運ばれたトレイをテーブルに置いていた。そして運ぶ前にそっと食事に毒を入れていたのだった。
侍従ではなく、彼自身が運ぶためわからなかった。彼は国王陛下が食事をするのを見てから退席をしていた。
以前から体調不良を王太子に話をしていたので調べていた。
毒だと判明し、ルーク達がすぐに国王陛下に解毒剤を服用させていた。
彼が毎回脈を取り食事を運ばないので、誰が犯人かがわからなかった。
そのため現場を抑えるためずっと奥に潜んでいた。
そしてようやく今回現場を取り押さえることが出来たのだった。
捕まった王室専属医師は、言い逃れできず少しずつ話始めた。
その主犯格がレニヴァンス筆頭公爵だった。
彼は王族の血筋ではなかったが、野心があり自分に相反する者の弱みを握り、金をばらまき買収をしていたのだった。
牢獄に入れられた宰相はあらかじめ狙われると知り、ルークが先手をとり、身の安全を確保するため行なった。
そして王太子も彼らによって襲撃された。
彼らを欺くため、王太子を行方不明とした芝居を打ったのだった。
その日の深夜、王太子が城に戻った。
城に赴いていたレニヴァンス筆頭公爵を捕らえたが、まだ公爵の罪を公にはせずにいた。
知っているのはごく数人。
そして王太子が罠を仕掛けるため、俺に計画を打ち明けた。
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