明らかになる過去1
13
テーブルに置かれたティーセットのカップを優雅に取り、注がれた紅茶を飲む王太子に向かっていった。
「王太子殿下、今城内が大変なことになっています」
「えぇ、知っています。そのため公爵に頼み、殿下たちをこちらまでお越し頂いたのですから」
「どうして?」
カップをテーブルに置き、真剣な眼差しをこちらに向けた。
「今回の件は敵を欺くためです。私が襲われたのは事実ですが、すでに輩は捕まえてあります」
前々から城の中で諜報員が調べていたが、なかなか証拠が見つけられなかった。
そのため罠を仕掛ける準備をして様子を見定めていた。
だが、その時に俺の留学の話があり、計画の延期をしようと思ったそうだ。
が、すでに動き出してしまっていたので俺が帰国してと思っていた矢先、向こう側が行動して不可能になった。
「それにあちら側にはあいつがいる」
俺がそう話すと王太子は頷いた。
「殿下は彼があちら側にいるのが不思議なのでしょうね」
俺は信じられなかた。
「あぁ、こちらに滞在している間、ルークと話をした。この国のことをよく考えているし優秀だ。王太子の側近なのに。裏切るなんて」
そういう俺に対して王太子は黙って聞いた。
すると公爵が俺に尋ねた。
「殿下はルークと親しいのですか」
「親しいというのはどうかと思うが、俺はルークがそういう者ではないと信じでいる。
以前彼と政策などの話はすばらしかった。それに彼は約束を守るためこの国にいるいっていた。約束が守れたらこの国から離れると。だからその時、もし離れるなら俺の国に来いと言ったのだ。俺は彼と話をしていてとても楽しかった」
(しかし、どうやら俺の勘違いだった)
そう話すと公爵は俺を見た。
「これから話すことはここだけにしていただけますでしょうか」そういい王太子に眼で合図をした。
発端は十一年前。
現国王、王妃、王子は外交で城を空けた。隣国の慶事のためだった。通常は行くことがないが今回はなぜが同行した。城に幼い妹王女を残したので、公爵に城へ滞在してもらった。そして賊が入り火事が起こった。賊は自分たちが犯したことが書かれた手紙を盗むため城に忍び込んだ。そして火を放った。
その火事で公爵とその息子が王女を助けようとしたが、賊に公爵は討たれ、息子も助けた際の火事で亡くなった。
助け出された王女も肩と背中に大怪我をしたが、幸い命を取り留めた。
その賊がどうも今回の敵ということだった。
「するとその公爵は?あなたは?」
「それは兄です。ここに入る前の廊下に飾られてある四人の肖像画がそうです。左後ろが兄で、その前にいるのが息子です。私は公爵家の三男でした」
現公爵は嫡子が亡くなったので、この公爵家をその後継いだ。
俺は少し疑問に思った。ではあの少年の横で座っている少女は娘ではないのか。
「俺は昔、彼女に会った。市井で会ったのだが、公爵の娘だと思った。
実はもう一度会いたく、ずっと探していたんだ」
「いえ、兄には娘はおりません」
「では、彼女は?」
公爵は黙り込んでしまった。そして王太子に顔を向けた。
「公爵、もういい。私が話す。殿下が彼女を探していたのは知っています。
以前、殿下の国王陛下からそのような手紙を頂きました。
しかし、私たちは、彼女を公には出せなかったのです」
「どういうことだ?」
「あれは、画の少女は私の妹です」
「妹⁉︎」
妹王女なのか?しかし、彼女は体が弱く一度も表にでたことがなかったと。
「妹は公爵たちに懐いていました。当時公爵が隣国に行くので妹も一緒に行かせたのです。多分あなた会ったのはその時でしょう。そして帰国したその日にあの事件が起こったのです。妹だけ助かました。目が覚めた時、ショックで話せなくなったのです」
黙って聞いている俺たちにさらに話続けた。
「彼女にとってそれは恐ろしい記憶だったのでしょう。そのためその前後の記憶がありませんでした。その時その記憶を自ら封印したのかもしれません。怪我も良くなり私たちは妹に事件のことを話しました。公爵たちが亡くなったと。
しばらくすると妹が城を出ると申し出たのです」
話はこうだった。
彼女は自分のせいで公爵たちが亡くなったのだと。そのため自分は公爵家に行くと、しかし王女なのだからそう簡単にはいかない。すると大人になって多分満足に王族の役目を果たすことができないこと、怪我の影響で役に立つことは無いと。渋々国王が許し、公爵家で生活することとなった。
公爵家の次男は医学を学んでいた。そのため彼が留学することになり、王女も一緒に近隣諸国に行ってしまいました。王女としてではなく、公爵家の者として。
彼が留学から戻っても一緒に戻らず、一人王女は隣国に残った。
しばらくして国に不幸が襲った。例の疫病だ。
多くの者が亡くなり、医者たちも途方にくれていたとき、ある国で画期的な薬があることがわかった。
いち早く知った王女が公爵に連絡して、留学先からその国に行き交渉して、薬を届け民を救った。
そしてしばらくして帰国した。
「話はわかった。
しかし、帰国したのになぜ表に出せないのだ。彼女のお陰で薬も届いたのだろ。病気で伏せっているとは」
「えぇ、確かに王女として戻ることはできます。しかし出来なかったのです。
その賊がまだ捕まらなくて、彼女はその賊の顔を見ているのです」
「つまり、その賊が近くにいるというこか」
そう言った俺に王太子が深く頷いた。
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