表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
13/20

暗雲1


10


王太子殿下が恒例の視察のため城を空けた。恒例行事だ。

王室には、王都から離れたところに他数所有する領地があり、管理をしている領主たちの労いもあった。

それに伴い近衛団長ならびに、数十人の騎士たち護衛もいない。



城内は思いのほか静寂だった。



木々の葉は、薄い緑色から青々とした緑色に変わり始めて、庭園の枝葉がさらに育つ。

庭園を歩いていると風が爽やかで心地よく、緑の壁を通り抜けた脇に木陰があった。

俺は木陰に座り、持っていた本を開いた。

本当なら四阿で読もうと思っていたが、この木の下は居心地がよかったので行くのをやめた。

図書館とは別で最高の場所だった。


さらさらとそよ風が肌に辺り、俺はその心地良さでうとうとして、いつの間にか目を閉じていた。



俺は幼いころの夢を見ていた。

隠れて市井に遊びに行き、あの赤い眼をした少女と出会い、楽しそうに遊んでいる夢だ。

笑っている彼女はとても可愛いかった。


(手を伸ばして彼女の手をとって・・・・)

幸せだ。夢で会えるなら。


そんな幸せな夢を見ていた俺に。

遠くから何やら聞こえてきた。


「ーーーーーーーーーー殿下」

「ーーーーー殿下、ーーーーー殿下」


(うるさい、手を伸ばして彼女と手を・・・・)

もう少し手を伸ばせば。


「殿下、殿下」


俺を呼んでいる。

頭はまだ夢の中で、俺は薄っすらと目を開けると、前にはあの少女がいて心配そうに俺を呼んでいた。

俺は思わず呼んでいる彼女の腕を掴み、両手で力一杯引き寄せて彼女を抱きしめた。

抱きしめたその感覚は、とても柔らかくてずっと抱きしめていたかった。


(柔らかい)

(柔らかい?)


その時はっと俺の頭は覚醒した。そしてすぐに現実に引き戻された。

殿()()、離していだだけませんでしょうか」


聞き覚えのある声が俺の胸の方から聞こえた。


「殿下、殿下は男色家でしょうか」

冷ややかな怒りにみちた声が聞こえてきた。

恐る恐る抱きしめていた方に目を向けた。


そう、俺が抱きしめていたのはルークだった。

現状に気づき、すぐに抱きしめていたルークを手から離した。


「ーーーす、すまん、夢で、夢を見てその、何ていうか・・・・」

ルークが立ち上がり溜息をついた。

「こんなところで、まして昼寝など」

彼は半ば呆れ顔をしていた。

そうぼやくルークの後ろには妹王女が俺を見ていた。


「殿下、お疲れなのでしょうから、こんなところではなく、お部屋にお戻りになられたほうがよろしいかと」

「あぁ、本当にすまない、木陰でさらに心地良くて寝てしまった」

ルークの後ろでじっと俺を見いた妹王女が、俺の方にきた。

すると俺の横に来てこそこそと耳打ちをした。


(殿下はルークが好きなのよね)


いきなり()()を落とされた。

心臓が飛びでる心境だった。


妹王女がふふっと笑いルークの方に駆け寄った。

「四阿にいきましょう」そう言って歩きだした。


子供だと思っていた妹王女だが侮れない。

女とは・・・恐るべし。


ーーーーーふうう。しかしいくら夢でもこれはまずかった。


俺は自分の手をじっと眺めた。

夢だよな。


でも柔らかくて、、、抱き心地がよかった、、、


ーーー男なのにな。


なぜかずっと抱きしめていたかった。

その感触が残り忘れられず、俺はすぐにその場を離れることができなかった。




そして事件がおきた。





読んで頂きありがとうございます。

ブクマありがとうございます。

もう少し続きます。お楽しみ出来れば幸いです。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ