出会い
街の広場のベンチで休んでいたエマは、気づくとそのままそこでひと眠りしてしまっていた。
「いけない!無防備に完全に意識失ってた!」
すっと立ち上がり、我に帰ると辺りを見渡した。さっきよりさらに人が増えている。どうやら街の住人だけでなく周辺から観光客も来ているようだ。
エマは再び地図を広げ、広場を出て祭を抜けるルートを歩きはじめた。そしてちょうど噴水がある場所へたどり着いた。
ちょうどその時、目の前を緑のローブを着た堂々とした身なりの女がお付きのものを従え通りかかった。耳にはユニコーンの紋章のイヤリングを付けていた。
「あれはトルマニアのエリート魔法使いだ…」
ユニコーンはトルマニアのエリート魔法使いを養成する超名門校のトレードマーク。魔法使いの界隈では知らない人はいないくらい権威ある名門校だ。
エマは驚いてゴクリと息をのんだ。まさか、こんな所にまで奴らが来てるなんて、いったいこんなど田舎に何の用!?…エマは冷や汗をかき、急いですぐにその場を去ろうとしたところ、前を見ていなかったせいで人にぶつかってしまった。
「いったぁ…」エマは尻もちをついて倒れた。
「すみません!大丈夫ですか!?」
目の前には自分と同じくらいの少女が立っていた。少女はエマに申し訳なさそうに謝り、手を差し伸べた。
「すみません、前を見てなくて…イタタタ…」
エマは腰をさすり、少女の手を握った
「どこか怪我ないですか?」
「大丈夫。ありがとう」
エマは少女をまじまじと見た。茶色の髪のおさげに瞳は緑色。身なりはいかにも田舎の少女という感じのぼさっとしたワンピースを着ている。きっとここに住んでる住人に違いない。
「よかったぁ。骨折でもしてたらどうしようかと思った」少女はほっと胸を撫で下ろした。
「大丈夫。こちらこそ急にぶつかってごめんなさい。
ところで、ついでで悪いんだけど、今私道に迷ってて、あなたこの辺に詳しい?」
「私この辺に住んでるから、だいたい分かると思うけど」
エマは腕時計からMAPを取り出し投影させた。
「このお祭りを抜けて、ここへ行きたいんだけど、分かるかしら?どうやらここの細道や裏道はMAPにのってなくて、さっきから同じところぐるぐる回ってるの…」
少女は投影されたMAPを初めてみたのか驚いていた。
「すごーい!何これ、こんな地図初めてみたわ!そしてだいぶ町外れの場所ね、ここからだと1時間以上歩くと思う。バスもでてるけど途中までしか止まらないから、ここから辺からは歩きで行くしかないかな」
少女はMAPを指差して言った。
「あなた道が分かるのね!もしよければ案内してもらえないかしら、もちろんお礼はするわ。少しばかりだけど、だからお願い!」
エマはここぞとばかりに必死にお願いした。
「案内してあげたいんだけど、実は友達とこのお祭りに来てて、途中ではぐれてしまったの。だから私もこれから友達を探さないといけなくて…」少女は少し困ったような顔をして言った。
「分かったわ、じゃあそのお友達を探してあげるから、会えたら案内してくれる?このお祭り広場を出るとこまででいいからお願い!!私ここへ来るのは初めてで本当に分からないことだらけなの。あなたのお友達の特徴を教えてくれればすぐに見つけ出せるわ」
少女はエマの発言に少し驚いていた。
「探すっていっても、いったいどうやって会ったこともない人を探すの!?」
「いいから、特徴を教えて」
少女はアナとマークの特徴をエマに伝えた。すると、エマは2人の特徴をぶつぶつ言うと、MAPに2人の名前が現れた。
「2人ともこの近くにいるわね」
「!?何これ!あなたはいったい…」少女は驚いてMAPに釘付けになった。
「私はエマ、アムールの国から来た魔法使いの見習いよ、あなたは?」
「魔法使い!!」少女は感動したように言った。
「私はククル。まさか本物の魔法使いさんに会えるなんて、嬉しい!」
「そんな大袈裟な笑、よろしくね、ククル。じゃあ私はここの噴水で待ってるからまずは2人に会いに行ってきて」
「分かったわ!ありがとう魔法使いさん」
ククルはMAPをもう一度確認して2人のもとへ走って行った。