宇宙
お祭り騒ぎで賑わってる街の広場。エマはベンチに腰掛けてキョロキョロと辺りを見渡し、チーズバーガーをかじりながら立ち止まっていた。
10個積み上げた椅子の上で逆立ちする大道芸や、制服をきた学生によるブラスバンドがバンバンっと鳴り響く音、美味しいチーズやウインナーの屋台など大いに賑わっていたが、どうやら完全に道に迷ってしまったらしい。
エマは腕時計から何度も地図を確かめてはこのお祭り広場から抜けて外に出る道を探していたが、どこも同じような街並みと屋台が並ぶ光景に、途中どこを進んでいるのかわからなくなった。
おまけに極度の方向音痴なので、途中で人に道をきいてもすぐ迷ってわからなくなってしまう。
「まるでこの街は迷路ね。同じような家かり並んでて道は細いし、ちょっと歩くと全然違う場所にでる。おまけに小道や裏道までは地図にものってない」
エマはここにきて溜まってた疲れがどっとでたのか、賑わう人と音で頭がクラクラしてきた。仕方ないので、しばらくベンチで一休みすることにした。
◇
ククルたちは天文台に入り、早速片付けを開始した。真ん中には大きな天体望遠鏡がデーンと構え、その周りを囲むようによくわからない機材がたくさん転がっていた。おまけに埃だらけだ!
「先生、こんなたくさんの機材、どうやって下の科学室に運びましょう?」
マークは四角形の小型モニターを集めながら言った。
「実はここには隠し階段があって、下の階の科学室と繋がってるんじゃよ。」
ホッブス先生は望遠鏡前方にある床の取っても持ち上げると、下に続く階段が現れた。
「重いものもあるから、上からロープで吊るして下へ降ろすように運ぶといいだろう。まずは階段の近くに運ぶものを集めて、それから下の階へマーク君とククル君に行ってもらって、私とアナ君で上から下げよう。いいかね?」
3人は頷いた。
機材を集めてる途中、ククルは一枚の天体の写真に見惚れていた。無数に散らばる星の中心に真っ赤なモヤがかかっている。
「それは薔薇星雲。よく撮れてるじゃろ?」
ホッブス先生は少し自慢げに言った。
「とってもキレイですね。宇宙にはこんな場所があるんですね。なんか自分の住んでる所がとてもちっぽけに感じます。」
「ははは、宇宙はロマンの塊だからわしらの想像もつかないような世界はいくらでも転がってるよ。もしかしたら、わしらだって宇宙の別の星からやってきたのかもしれんしな。」
「えっ!?それどういうことですか?」
マークが話にくいついてきた。
「古い言い伝えでな、遠い昔、今の魔法使いと呼ばれてる人々が遠い星から地球にやってきて、わしら人間を動物から進化させてつくりあげたなんて話が古代民族の寓話にあったりするんじゃよ。まあ、あくまで寓話だから、物語を伝えていく過程できっと話が飛躍してるんじゃがな。」
ホッブス先生は一瞬真面目な顔をしたかと冗談ぽく言った。
「魔法使いが人間をつくるかあ、それはそれで生命の神秘。そんな話があるんですね」
マークは興味をそそられるように言った。
「先生、そもそも魔法使いって人種はどうして魔法を使えるんですかね?魔法を使える使えないの違いはどこにあるんですか?」
ククルはふいに疑問をぶつけた。
「いい質問だ、ククル君。それについては生命科学の分野で研究されておるが、未だ未解明のままなんじゃ。今までDNAに何らかの違いがあると考えられておったが、どうもそうではないらしいことが最近分かってきたくらいじゃ。魔法というものは科学では証明できないふしぎな力じゃ」
3人はホッブス先生の話のアレコレにすっかりぐぎづけになって手が止まっていた。
「いかんいかん、作業が止まってるぞ!さあ諸君、もうひと頑張りじゃ!」
ホッブス先生は我に返って号令をかけた。
3人も我に返り作業を再開した。時計をみると既に2時が過ぎようとしていた。早く終わらせないとお祭りに出遅れてしまう!ククルは細々したゴミを片付けながら動作機敏に動いた。