なぞの少女
昼下がりの青く澄み切った青空と海。
船の甲板の先端には青い癖っ毛が外側にくるんと髪がはねた少女エマ・モーガンが1人立っていた。
目の前にはヴェヴェリーの港町が姿を現した。
オレンジ色の屋根が海の青さに映える自然豊かな美しい街並みが見えてきた。
「うわー、あれがヴェヴェリー!やっと着いた!」
エマは海に身体を乗り出し、街並みの姿に目を凝らした。
時計をみると13:25。
「到着が予定より2時間も遅れてる、しかも2日に1本しか船が出なきなんて、超ど田舎にきちゃった!」
エマは腕時計をタップするとヒュッと地図が現れ、行き先のルートを確認した。
「私迷わずに行けるかなあ…」
ボーボーっ‼︎
船の警笛が轟いた。定期運行船が港に到着しようとしていた。
エマは列に並んで船を後にすると、生まれて初めてこの町に降りたった。
港から少し歩いていると、近くでブラスバンドの行進曲のような演奏が聴こえてきた。
「あれっなんかイベントでもやってるのかな!?せっかくだから、この町の偵察も兼ねてちょっとだけ寄り道してみるか。」エマは音楽の方へ引き込まれるように歩いて行った。
◇
その頃、ククルは午前中の授業を終え、ホッブス先生の天文台へアナとマークと向かっていた。学校の屋上へ続く螺旋階段を上ると、小さな天文台が現れた。
「この学校にも天文台があったなんて全然知らなかった。」黒髪にトレードマークの丸い黒縁メガネで天文台を見入るようにマークが言った。
「私たちもまだ1回しか中に入ったことないんだけどね、星空観測は2代前の熱心な先輩たちはやってたみたいだけど、うちらの年はそんな熱心に興味持つ人いないからね。上に1人先輩が残ってるけど、受験勉強で全然活動できないから、我らはすっかり幽霊部員ってわけ。」アナは天文台には全く興味がなさそうに言った。
「じゃあなんで天文クラブなんて入ったわけ?確かに全員何かのクラブには入らなきゃいけない規則があるけど、他にもいろいろあるじゃん?」
「私がアナを誘ったの。天文というよりホッブス先生に興味があって。ほら、先生いろんな噂があるじゃない?魔法が使えるとかなんとかって。」
「あー、きいたことはあるけど、誰もホッブス先生が魔法を使うところなんてみたことないよね、僕は魔法をちょっと研究してるみたいなこときいたくらいだよ。あの先生魔法使えんのかな?」
「せっかくだから、お手伝いのお礼として確かめてみようか!この町には魔法使いはいないはずだけど、もしかして紛れ込んでるって可能性もあるかもしれないじゃない。私、この町を一度も出たことないから、一度でいいから魔法使いに会ってみたいんだ。」
「面白そうね、私も魔法使いに会ったことないから会ってみたい!」アナも話にのってきた。
そして、3人が魔法使い話で盛り上がってるところに、白髪混じりの栗毛色で銀色のふちのメガネをかけたホッブス先生がやってきた。