海辺の町
海辺の小さな町「Vevery」。
13歳の少女ククル・アンジェリスは、焦茶色のくるっとしたくせっ毛をおさげにし、目の奥にある瞳は深緑。まだどことなく幼さの残る顔をしている。
海沿いの小高い丘の上にあるオレンジ屋根の家に住んでいて、朝起きてすぐに窓を開けると、プンと潮の香りがし、海は朝日を浴びてキラキラと輝き、カモメが気持ちよさそうに飛んでいる。
丘の上から見る海辺の朝の景色はいつみても清々しくて気持ちいい。
ククルは1階のキッチンへ降りると、トーストしたバターロール2つとオレンジジュース1杯を自分で用意する。それが毎朝の朝食だ。
身支度を整えると、いつもギリギリで学校へ向かう。
ククルは家を出ると、自転車で丘をビューンっと風を切って朝の坂道を下る。ほんのり潮の香りのする気持ちのよい朝の空気を吸って一日がはじまる。
今日は登校最終日。
明日から夏休みに入るので、いつにもまして心がウキウキしている。
そしてウキウキに拍車をかけるお楽しみがもう一つ。
この町の夏祭り「ヴェリー祭」が7月の最終日2日間にかけて行われる。
その昔、身勝手な人間たちは海の神の怒りをかって町ごと海にのみこまれてしまうという大災害が起こった。人々は神の怒りを鎮めるため、毎年この時期になると祭りを開き、海の神へ踊りを捧げ感謝の意を表明するというのがこのお祭りの由来だ。
街の噴水広場には、ハンバーガー、ローストチキン、色とりどりのケーキ、わたあめ、ワインにビール、雑貨などたくさんのマーケットが並び、大道芸たちはここぞとばかりに、あちらこちらでパフォーマンスを披露する。そして、夕方には町の住人たちが一同に集まり、伝統的なダンスを夜まで踊り続けるというイベントがあり、町全体がお祭りムードに包まれていた。
ククルは学校が終わった後、クラスの友達のアナ、マークと3人でお祭りに行くのを楽しみにしていた。
ククルが学校につくなり、アナが駆け寄ってきた。
ククル「おはよう!」
アナ「おはよう、ねえきいて!さっきね、ホッブス先生が放課後手伝って欲しいことがあるから、授業が終わったらすぐに屋上の天文台まできてくれっていってきたの。」
ククル「手伝ってほしいこと?天文台で何かあるの??」
アナ「それが、明日有名な先生が天文台を見学にくるから片付けを手伝ってほしいみたい。」
ククル「えー!あの天文台、今やほとんど物置と化してるのに、なんでそんなところに見学に来るんだろう、それに学校終わったらすぐお祭りに行くのに…なんてタイミング悪いんだろ…」
アナ「ほんと、年に数えるほどしか活動してない天文クラブの活動がよりによって物置天文台の片付けだなんて、入るクラブ間違えたかもね…。」
ククル「まあ部員は私たち2人と受験で忙しい先輩1人の3人しかいないから、先生も他に頼む人がいなくて困ってたんでしょう、仕方ないね。」
アナ「しかも、男手を連れてきてほしいと言うから、さっきマークにも声かけて無理矢理手伝ってもらうようお願いしてきた。とにかく、さっさと片付けてお祭り行こう!!」
ククル「さっすが!行動はやい!さっさと片付け終わらせてお祭りいくぞぉ!!」