表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
<R15>15歳未満の方は移動してください。
この作品には 〔ボーイズラブ要素〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

俺が出会った犬は女の子の姿になり俺が前世で愛した男だと言う

作者: 来留美

俺は恋愛小説を書こうとした。

でも、何も思いつかない。

何故だ?

そんなの当たり前だ。

恋愛って何だよ。

俺はそれが分からない。

それなのに恋愛小説を書こうとしている。

俺はバカなのか?

そうだバカだから仕方ない。

それじゃあ恋愛小説を書こうか。


手は全く動かない。

散歩をしようと思った。

近くの公園のベンチに座った。

天気がいい。

こんな日に何か出会いがあれば…………。


「ワン」


犬?

リードがついている?


「お前は飼い主から逃げて来たのか?」


俺は犬を抱き上げた。

犬は嬉しそうに俺の胸に顔をつけた。

可愛い。

この犬が女の子になればなぁ。

そんなことが起こる訳がない。

俺がそう思った瞬間、犬が人間になった。


「やっと会えた」


犬の彼女はそう言った。


「はあ?」

「お前は前世で俺と恋人だった」

「俺? 私じゃないのかよ?」

「俺の前世は男だ。そしてお前の前世も男だ」

「いや、待てよ。俺は男に興味はないが」

「お前はまだ記憶が戻ってないだけだ」

「えっと、人違いでは?」

「お前のその首の痣は間違いない」

「この生まれた時からある痣が何か関係あるのか?」

「その痣はお前の子孫に代々受け継がれるんだよ」

「こんな痣なんて他にもいるだろう?」

「その形は雫の形だろう?」

「それはお前の家の家紋だ」

「家紋? そんなの聞いたことないけど」

「そんな話はもういい。やっと会えたんだ」


そして彼女? 彼? は俺の顔に顔を近づける。


「おい、待てよ」

「早くキスをさせろ」

「嫌、無理だから」

「前世では当たり前にしてたが?」

「俺はお前のことを好きなんて思っていない」

「俺は我慢できないんだよ」

「俺は無理だから」


女の姿だからなのか俺の力の方が勝る。


「力が弱い。女は軟弱だな」

「俺は助かってるよ。お前に何もされないからな」

「くっそ。こんな近くにキラがいるのに」

「キラ?」

「お前の前世の名前だ」

「お前の名前は?」

「俺はレイだ」


その名前を聞いた時に何か心がざわついた感じがした。


「何でレイは犬から女の子になったんだよ」

「分からん。お前を見つけた時は嬉しくて仕方なかった」

「何でレイは覚えてるのに俺はキラの記憶はないんだ?」

「分からん」

「何も分からないのかよ」

「俺はお前に会ってもう一度抱き締めることができて嬉しい」


レイは俺を抱き締めながら言う。

レイの体は俺より小さい。

レイの身長は俺より低い。

レイの髪は俺より長い。

レイは女で俺は男だ。

それが前世では全てが同じだと?

信じられない。

俺は男が好きなのか?


するとレイの体が犬に戻り出した。

しっぽができて、耳ができていく。


「キラ、また明日この場所、この時間に会おう」


レイはそう言って犬に戻った。


「すみません。レイがご迷惑おかけしました」


飼い主の女の人が走って来て言った。


「レイって言うんですか?」

「はい。女の子です」

「そういうことか」

「何がですか?」

「いいえ。毎日この時間にここで散歩をしてるんですか?」

「そうなんです」

「また明日、レイに会いに来てもいいですか?」

「いいですよ。レイが飼い主以外に懐くのは初めてなんです」

「俺はレイに好かれてますから」

「そうですね」


そう言って彼女はレイと一緒に散歩の続きをしながら帰って行った。


俺はこのことを小説にしようと思った。

こんなこと絶対、小説にしないともったいない。

俺の手は止まらない。

書きたい気持ちが溢れて止まらない。


次の日、昨日と同じ時間に公園に行く。

レイは女の子の姿になってベンチで待っていた。


「キラ、遅いぞ」


レイは喋らなければ可愛い女の子だ。

拗ねている顔も可愛い。


「ごめん」

「謝って済むと思うなよ」

「レイは可愛いな」

「キラ、それは俺に言ってるのか? それともこの体に言ってるのか?」

「どっちもかな?」

「それなら嬉しくない。前のキラは男の俺の全部を好きって、可愛いって言ってくれたのに」

「俺はキラじゃない。でもキラの記憶を知りたくなった」

「でも、どうすればいいのか分からないんだ」

「どこか思い出の場所とかないのか?」

「う~ん。そうだ、あそこだ」

「どこ?」

「俺達の待ち合わせ場所だ」

「昔の話だからもうないかもしれないぞ」

「必ずあるはず。だってそこは神社だからな」

「神社が待ち合わせ場所って大丈夫か?」

「他に場所はなかったんだ。俺達の関係はバレてはいけなかったから」

「それなら行くか?」

「それは明日だ」

「何で?」

「犬に戻り出したからだ」

「えっ、早くないか?」

「キラ、俺を抱き締めて欲しい。お前の温もりをくれ」

「ああ」


そして俺はレイを抱き締める。


「ありがとう。また明日な」


そしてレイは犬に戻った。

そして飼い主である彼女がレイを連れて行く。


次の日は急いで待ち合わせ場所の公園へ行った。

レイはまだ来ていない。

いつまで経っても来ない。

その日レイは来なかった。


そして次の日、公園のベンチに行くとレイはいた。


「レイ」

「キラ」

「昨日はどうしたんだ?」

「飼い主が散歩に出なかったんだ」

「そうだったんだ。さあ、行こうか待ち合わせの場所へ」

「そうだな」


そして近くの神社へ行く。


「何も変わってないな」

「そうなのか?」

「あの大きな木の後ろで待ち合わせをしてたんだ」

「本当に隠れて会ってたんだな」

「俺が先に来てここで待ってた」


そう言ってレイは木の後ろに行った。

俺はレイを追いかける。

木の後ろでレイは座り込んでいる。


「レイ?」


俺がレイを呼ぶとレイは俺を見上げた。

その時、俺の中の何かがレイを抱き締めたがっているようだった。

そして俺はレイを抱き締めていた。


「キラ?」

「分からないけど、俺の中でレイを抱き締めたいって言ってくるんだ」

「キラ。俺のキラ」


そしてレイは俺にキスをした。

その時だった。

レイの女の子の体が男になった。

俺にはもう分かっている。

昔の姿のレイだって。


「レイ。思い出したよ。全部」

「キラ。会いたかった」

「レイ。俺も会いたかった」

「この世界で俺達は幸せになれるのか?」

「ああ。この世界の恋愛は自由だ」

「もうキラを諦めなくていいんだよな?」

「ああ。ずっと一緒だ」


そして俺達はまたキスをした。


俺達の物語は俺の書いた小説でいろんな人に知れ渡った。

まぁフィクションとしてだが。

それでいい。

本の話は完結したが、俺達はこれからなんだ。

まだまだ終わらない。


「レイ、前世の分まで幸せになるぞ」

「うん。キラ大好きだ」

「レイ、俺も大好きだ」

読んで頂きありがとうございます。

楽しんで読んで頂ければ幸いです。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ