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プロメテウスの福音  作者: 怯間 無男
第1章
9/52

9.はじめの第一歩3

「確証はないが……」


 そう前置きを置いて、彼は話した。


「この力を俺達に与えた連中は、俺達がこの力をどう使って、それがこの社会にどんな影響を及ぼすのかを知りたいんだ。きっとそうだ。つまり、これは一種の実験で、俺達はモルモットと言うわけだ」


「そうか。だとすれば、あんまり良い気分はしないな」


 そう男が言った。


「何を言ってる!人間を超越した能力を得た俺達の秘める可能性は無限大だ!奴等は俺達が何をしようと止める(すべ)を持たないだろう。いや、何人(なんぴと)もだ!この社会も、世界も!」


 そう言って彼は両手を広げ、空を仰ぎ見た。

 つもりだった。しかし、その目に映ったのは、人工物の鉄橋だった。


「不自由だったよな」


 彼はそう呟いた。


「さて、今日は御開きにしようか」


 そう言うと、彼は高架下から出ようとした。


「なぁ、よかったら、連絡先を交換しないか?今後もお互い相談とかできたら良いと思うんだが」


 男が提案した。


「あぁ、いや、その必要はない」


 次の瞬間、男の体に風穴が空いた。それは、まるで胸に見えない太い杭を打ち込まれたようだった。


「あんた……俺より年上なんだろうが、けっこう子供っぽいよなぁ。何て言うか、夢を持ってるんじゃないか、この社会に」


 目の前の男を見て、少年は呆れ顔で言った。


「俺は到底あんたみたいなのと組む気にはなれない。もっと、確固たる意志を持ったやつでないと」


 彼は淡々と冷酷に言葉を続けた。


「もう俺の方から言うことはない。あんたはどうだ?うん、無さそうだな。心配ない、この世はもうすぐ、あんたが抱いている夢よりもっと大きな夢が見れる世の中になる」


 少年が目の前にした男は、胸を貫いた何かに吊るされたように力なくぶら下がっていた。吹き出した血は地面に水溜まりを作り、淀みとなっていた。その男の顔には既に生気がなく、絶望の表情で固められていた。男がその場に崩れ落ちた。吊るしていた何かが消えたようだった。


 少年は意識を集中し、目の前のなにもない空間に火をイメージした。すると、瞬く間に炎が上がった。イメージを止めると、その途端に炎も消えた。


 よし、火を起こすことが出来るようになったぞ。それにしても、俺の能力はイメージをしている間しか力を維持できない。他の能力者も同じかと思ったが、どうやらそうでもないらしい。

 お前のお陰で、得難いものを得た。そして、お前の能力によって俺の可能性を伸ばすことができた。


 それに、火を起こして維持するのにもイメージが必要だが、その火を何かに着火してやれば、そのまま火は持続するんじゃないか?


 少年はそう思い立つと、目の前の男の遺体とその周りに意識を集中した。その場所にイメージしたとおりの大きな炎が上がった。少し時間を置いて、少年はイメージを止めた。

 すると、炎は消えることなく、持続していた。それを確認すると、少年は考えた。


 これは使える。僅かなイメージでも、大きな戦果を期待できる。そして、彼は満足した。


 くるりと向きを変え、煙を上げ燃え上がる炎が照らす薄暗い高架下から、明るい日の光のもとへと足を踏み出した。その光の暖かさを感じとりながら、少年は目を輝かせていた。



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