8.はじめの第一歩2
「それにしても、君の能力は戦闘向きの能力だと思う。よかったら、試しに技をみせてくれないか?」
彼は、感心した様子で催促した。
「技って言える程のものかわからないけど、いいよ」
男は快諾すると、左手に乗った炎を右手に移し、その右手を川に向けた。
すると、右手に宿った炎は真っ直ぐと延びていき、川面の中程まで達した。それは、直ぐに収まって、再び右手にのみ炎がある状態になった。
「まるで火炎放射器だ」
彼はそう感想を言った。
「あとは、こんなことも出来るよ」
男はそう言って、今度は炎にぐるぐるととぐろを巻かせたり、両手に炎を持ってゴムみたいに伸ばしたりした。
しばらく、ファイヤーショーが続いた後、二人は腰を下ろして、能力を得た経緯について話し合った。
「それで、治験に行って帰ってきたら、どうも調子がおかしくて……。誤って熱湯に手を触れてしまったんだけど、熱くもなんともない。心地いい程だったよ。それで、他にもいろいろ試してみて、最後にガス火で手をあぶってみたら、さっき見せたみたいになった」
「治験か。なるほどねー。俺は街をぶらついてたら、見るからなおっさんに、最近出たばかりのやつがあるから、試してみないか?って言われて注射と薬品を安く買ったよ」
「へぇー。となると、僕達二人がこうなった原因は違うってことかな?」
「いや、そんな偶然があるかな?そもそも治験薬っていうのは、動物実験やら何やら終わって、新薬開発の最終段階みたいなものだからな。ヤバイ作用を及ぼすものが本来治験で使われることはないだろう。おそらく、君が投与された治験薬と俺が売人から買った薬物の中身は同じだと思う」
彼は、そう見解を述べた。
「しかし、誰かが治験薬をすり替えたっていうのか?いくらなんでも他の人に気付かれるんじゃ。副作用で眠気が出るだろうとは言われたけど、薬を打たれてすぐ寝てしまって、10時間ぐらい起きなかった。すごい不自然に思われるだろ」
男は疑問を唱えた。
「いや、治験を実施した全員がグルだったなら、可能じゃないか?」
彼はそう答えた。
「まじかよ!?そんなこと……」
「そもそも、こんな超能力を生み出す薬物を開発するような組織だ。大それたことの1つや2つ、やってのけるさ!」
「そう言われれば、その通りかもな。しかし、そうなると、そいつらの目的は何なんだろうか?次は僕らを解剖しかねないぞ」
炎を自在に操る男はそう言った。