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プロメテウスの福音  作者: 怯間 無男
第1章
2/52

2.福音

 井代いしろ 治弥なおやは死にたかった。


 専門学校を卒業して新卒で入社した会社は3年足らずで辞めてしまった。とある中小の化学メーカーに品質管理要員として配属されたのだが、思うように結果が出せなかった。

 そのあげく、来月からは別の部署に配属だと知らされ、やってられるかと辞めてしまったのだった。


 職場では、悪口も散々叩かれていた。昼休み、休憩所で食事しているときも聞こえるか聞こえないかの距離で言われたこともあった。


 それは、別部署の同年代の社員で、その上司にも聞こえていたのではないかと思ったが、その上司はなにも言わなかった。

 それどころか、その上司にも幾度となく陰口を叩かれていた。どうやら、企業というのは利益さえ出していれば、社員が悪事を働こうと気にしないらしかった。


 今思い返してみれば、悪を放置するというのは、社会であっても、学校であっても同じことであった。


 腐ってやがる。やっていいことと悪いことの区別もつかないやつらが、自分は何も悪いことはしていないという顔をしてこの国を闊歩していやがる。

 かといって、自分にこの国を変えるだけの力はない。地位、金、才能。そのすべてが自分には足りない。

 善人が幸せになる。そういう世界であるべきだ。社会であるべきだ。罪を犯したものは裁かれるべきだ。その理念は間違っていない筈だ。


 力さえ、そう、力さえあればこの国を正しい方向に突き動かして行くことだって出来る。しかし、自分にはその力がない。その結論に辿り着いたのは何度目だろうか。

 そして、その現実を噛み締めていくうちに、完全に自分の生きる意味を見失っていた。心は既に死んでいるようだった。


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