10/11
静謐な夜に
君は棺の中でたゆたっている
穏やかな眠りだ
とこしえの平和を祈ろう
おもいに縛られているのは
残された者たちばかりなのだから
君は水の奥で目を閉じて微笑んでいる
昨日の台風はなにかを
連れ去っていったのだろうか
今日は秋晴れに澄み渡っている
ただ君が残した者の頬だけは乾いていない
君は空の上で静かにかたらっている
あのときなにを話したのか
覚えていないが、こころよく
会話したことを思い出す。だが、
君を残した者は変わらずかたり合っている
僕は椅子に座って
誰のためでもない
誰のためにもならない
空虚で空疎な仕事を
なぜか繰り返している
夜の優しい暗闇は、電灯に殺された。
自死した若き官僚に捧ぐ。